芸術科学会論文誌
Online ISSN : 1347-2267
ISSN-L : 1347-2267
20 巻, 5 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
一般論文
  • 矢島 春香, 越智 景子, 大淵 康成
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 20 巻 5 号 p. 219-230
    発行日: 2021/12/30
    公開日: 2023/05/03
    ジャーナル フリー
    本研究では,サラウンド音響を視覚情報と組み合わせた環境に着目し,両者に時間的な不一致がある場合の影響について調査を行うことで,高臨場感コンテンツの実用性向上を目指す.左右方向の知覚実験では,映像と音声を時間的にずらした状態で提示し,ずれの程度に対する違和感の調査を行った.その結果,音が少し遅れている方が違和感は少ないという結果が得られた.また,音源までの視覚上の距離を変えると,最適な遅れが変わることがわかった.前後方向の知覚実験では,聞き慣れている音に比べて,聞き慣れていない音の前後定位の精度が低いことが確認された.また,視覚による定位が聴覚による定位を妨げることや,視聴覚の同期が定位精度劣化をもたらすことがわかった.これらの知見をもとに,高臨場感のコンテンツを作成するための指針を示すことができた.
  • 石井 綾郁, 福島 真花, 田中 波輝, 的場 やすし, 池松 香, 椎尾 一郎
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 20 巻 5 号 p. 231-244
    発行日: 2021/12/30
    公開日: 2023/05/03
    ジャーナル フリー
    電気分解により発生する気泡を画素として用いる情報表示手法が筆者らにより提案されている[1].この研究の提案手法は,日常的な情報表示装置として利用されることが想定されていた.一方で,泡は消えやすく儚い性質を持っており,インタラクティブなアートやエンターテインメント作品のための素材としても有望であると考えられる.しかし,従来の電気分解気泡表示は応答速度が低く,低画素のバイナリ表示であるため,表現の可能性が制限されていた.本研究ではこの課題を解決し,アート作品への応用を模索する2点の気泡表示デバイスを開発する.1点目は,流れる水面にティッカー状の泡表示を行う"UTAKATA"である.水路の底面に電極を直線状に配置し電気分解を行うことで,泡によるメッセージを水路の下流に向かって流しながら動的に表示する.2点目は,水盤に対面したユーザの顔を水面に泡で表示する鏡のようなディスプレイ"Bubble Mirror"である.これは,32×32個の電極を用いて,8段階のグレースケールの泡による顔画像を水面に表示する.本稿ではこれらのデバイスの実装と表示性能の評価について報告する.
  • 天野 幹子, 佐藤 周平, 伊藤 貴之
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 20 巻 5 号 p. 245-253
    発行日: 2021/12/30
    公開日: 2023/05/03
    ジャーナル フリー
    電子付録
    本論文では,映像制作に欠かせないビジュアルエフェクツの表現の中でも,氷や霜がオブジェクトに張り付いて広がる様子を表現する一手法を提案する.本手法の主要な要素技術は外形入力と初期値最適化である.本手法では平面のオブジェクト上においてユーザが入力した「広がりの範囲」と「始点」に沿ってシミュレーションを実行する.ここで最急降下法を導入してシミュレーションの初期値を最適化することで,ユーザの所望の速度での広がりを実現する.これにより,始点から指定した範囲内にユーザの所望の速度で氷・霜が樹枝状に広がるアニメーションを制作できる.
  • 伊藤 聡子, ターウォンマット ラック, パリヤワン プージャナー
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 20 巻 5 号 p. 254-263
    発行日: 2021/12/30
    公開日: 2023/05/03
    ジャーナル フリー
    本論文ではMinecraftを用いてのアルツハイマー型認知症(AD)を早期発見するためのシステムを提案し,先行研究より開発されたSea Hero Questと比較することでその有用性を評価した.近年,認知症は世界的に社会問題とされている.早ければ未成年の頃より発症すると言われている若年性アルツハイマー症も同様で,これら認知症は早期発見が重要視されている.また,空間ナビゲーションはADを早期発見するために重要な項目とされており,これはゲームにおける移動距離として考えることができる.今回比較対象とした既存のゲームは既にリリースが停止しており,独自ゲームのため普及可能性が低いという問題点がある.そこで,本論文ではMinecraftを用いてこの問題点を解決することができる新たなシステムを構築し,両ゲームのプレイ履歴相関分析およびユーザ評価を行うことで,提案システムにおけるAD早期発見の有用性を確認することができた.
  • Fumiya Sawai, Yuki Morimoto
    原稿種別: research-article
    2021 年 20 巻 5 号 p. 264-268
    発行日: 2021/12/30
    公開日: 2023/05/03
    ジャーナル フリー
    Sports broadcasts can be made more entertaining by adding visual effects. Currently, such effect animations are added manually in a real-time or post process. Or many cases require depth information. Here, we automatically add visual effects to sports videos by extracting optical flow and automatically adjusting the brightness of regions that include athletes. The proposed method can be used to easily and quickly add effects to make sports broadcasts more enjoyable without depth information.
  • 杉原 厚吉
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 20 巻 5 号 p. 269-276
    発行日: 2021/12/30
    公開日: 2023/05/03
    ジャーナル フリー
    This paper generalizes an impossible figure called a "Penrose triangle" to regular polygonal figures and proposes a method for constructing real 3D objects from such figures. Two well-known tricks, namely the curved surface trick and the discontinuity trick, have been used to construct 3D objects from impossible figures. However, these tricks are very sensitive to viewpoint. The proposed method uses only planar faces and connects them wherever they appear to be connected. The resulting objects are thus less sensitive to viewpoint in the sense that the impression of impossibility does not disappear when the viewpoint slightly changes. Moreover, the constructed objects have the same symmetry as that of the original figures, preserving their elegance.
  • 安本 匡佑, 井藤 雄一
    原稿種別: 研究論文
    2021 年 20 巻 5 号 p. 277-289
    発行日: 2021/12/30
    公開日: 2023/05/03
    ジャーナル フリー
    電子付録
    この研究では,人間の意図が可能な限りはいらず機械が自動的に生成する彫刻を作るというコンセプトで,立体アートの制作方法を模索した.これは,メディアアートの一種であるグリッチアートと類似している.アナログの物理的な彫刻を,3Dスキャナでデジタルデータとして取り込み,3Dプリンタで現実世界に再度物理的な彫刻として出力する.その結果,オリジナルとは異なる彫刻ができる.これは一種のノイズであり,イレギュラであり,機械の性能の限界であり,人間が意図しない結果である.単にデータが劣化するのではなく,ある情報が失われ,新たにイレギュラな情報が追加される.それは,人が意図しないアブストラクションであり,クリエイションである.この一連のプロセスを何度も繰り返すことで,その特徴が強調されていき新たな彫刻を生み出し,そこに存在する美の可能性を探る.4つのモデル(既存の2つの彫刻作品,スタンフォードバニー,CADで作成したプリミティブな形状),4種類のスキャナ,2種類の3Dプリンタを用いて,それぞれの特徴を明らかにした.
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