東北理学療法学
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27 巻
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巻頭言
目次
研究論文
  • 岩坂 憂児
    2015 年 27 巻 p. 1-4
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究は,運動観察の効果を高めることを目的として,観察する動画の再生速度を徐々に速めていくことが学習効果に影響を与えるかを,両手間転移効果を用いて調べるものである。
    【方法】対象者は右利きの健常成人で,課題は左手手掌でのボール回転課題とし,ボール回転数を測定した。対象者を介入群と対照群にランダムに割り当て,それぞれに右手掌でボール回転を実施している動画(対照群は速度が一定,介入群は徐々に回転速度が上昇)を視聴させた。
    【結果】対照群と介入群における主効果は有意差を認め,二群間の運動観察後のボール回転数に有意差が認められた。
    【結語】徐々に速度が上昇する動画は,両手間転移を引き起こしたことから,高次運動野領域でシミュレートされる可能性が示唆された。従って,運動観察を治療介入として用いる場合には,ゆっくりとした動画から徐々に速度を上げていくことで,効果が期待できる可能性が示唆された。
  • 古川 勉寛, 藤原 孝之, 上條 正義
    2015 年 27 巻 p. 5-9
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    健常成人7名を対象に,最大努力での発声(80dB以上;最大発声)前,中,後のH波振幅値(mV)を測定し,最大発声が脊髄興奮準位に与える影響を明らかにすることを目的とした。リクライニング座位で右脚の膝窩から脛骨神経を1msecの方形波を用いて閾下2発刺激法で定めた電気強度で刺激し,同側のヒラメ筋よりH波を導出した。測定順は,発声条件前の安静条件(P1,P2),最大発声条件,最大発声終了2分後から17分経過するまでの安静(以下,Post条件)の順に測定を実施した。その後,Post条件を15区間に分け,加算平均した。統計処理ソフト(SPSS,IBM社製)を用いて,多重比較検定を実施した。H波変化率(%)を知るために,各被験者のP1とP2平均を100%として基準化した。その結果,すべての条件間に統計学的有意差が認められなかった。H波変化率は,最大発声後11から21%の増強効果が観察された。このことから,最大発声後の増強効果は,小さいことが示唆された。
  • 高橋 純平, 西山 徹
    2015 年 27 巻 p. 10-13
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,回復期病棟入院患者における抑うつの有無が「できるADL」と「しているADL」の差に与える影響について明らかにすることである。入院患者25名を対象に,抑うつの評価を行い,抑うつ群,非抑うつ群に群分けを行った。ADLの評価はFIMを用い,「できるADL」と「しているADL」の差の検討を行った。その結果,抑うつ群の方が高年齢であり,「できるADL」と「しているADL」の差が大きく,FIM下位項目では「清拭」「トイレ移乗動作」で有意差が認められた。本研究の結果より,抑うつが,「できるADL」と「しているADL」の差に影響を及ぼすことが考えられた。
  • 池田 拓洋, 真壁 寿
    2015 年 27 巻 p. 14-17
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    目的:本研究では、長期入院中の統合失調症患者の身体機能を同年代との比較すること、入院期間と身体機能の関係について当院の現状を明らかにすることを目的とした。対象は、ADL・独歩移動が自立している入院5年以上の統合失調症患者25名とした。身体機能は、握力、Time Up and Go Test(以下、TUG)、30秒椅子立ち上がりテスト(以下、CS-30)を測定した。結果:各測定値のいずれも全対象が同年代平均値を下回っていた。年齢との関係は、握力、CS-30は相関関係がみられず、TUGは年齢と弱い相関がみられた。入院期間との関係は、握力、TUG、CS-30のいずれも有意差がみられなかった。考察:結果より入院の長期化と身体機能との関係を証明するには至らなかったが、加齢による更なる身体機能の低下に対して理学療法の介入が必要であると考えられた。
  • 柏木 智一, 横山 徹, 畠山 優, 阿部 寛子, 豊口 卓, 石川 大瑛, 伊藤 麻子, 山内 紗貴子, 本間 昌大, 笹島 真人
    2015 年 27 巻 p. 18-22
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,腰部脊柱管狭窄症の術後6カ月の歩行能力とQOLについて調査し,検討することである。当院において間欠性跛行を呈し,手術を施行した腰部脊柱管狭窄症18例(男性7例,女性11例,平均年齢72.8±7.1歳)を対象とした。手術内容は全例が部分腰椎椎弓切除術であった。術前と術後6カ月に10m歩行テスト,30m歩行テスト,連続歩行テストと歩行時VAS,MOS Short-Form 36-Item Health Survey日本語版ver.2(以下,SF-36),日本整形外科腰痛質問票(以下,JOABPEQ),日本語版チューリッヒ跛行質問票(以下,ZCQ)を評価した。術後6カ月では10m歩行時間と歩数,30m歩行時間と歩数,歩行時VAS,SF-36のBP,VT,SF,RE,JOABPEQの疼痛関連障害,歩行機能障害,社会生活障害,心理的障害において有意な改善が認められた。術後6カ月では,歩行テスト,QOL評価ともに有意に改善し,特に痛みの改善が大きく,身体機能面だけでなく精神面,心理面でも改善されていることが示唆された。
  • -矢状面上の歩行分析を想定し膝関節に見立てた角度計モデルを用いた検討-
    関 裕也, 対馬 栄輝
    2015 年 27 巻 p. 23-28
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    デジタルビデオ画像による角度測定の精度については報告されているが,被写体を撮影画面の中央付近で,かつ正投影面に撮影しなければその精度は高くない.臨床場面で矢状面上の歩行を分析の対象とした場合,これらの条件を満たすことは困難である.そこで本研究の目的を,プラスティックゴニオメータを膝関節に見立て,撮影画面を細分化し左端から右端までの範囲で,正投影面および15°刻みで45°まで回転させた斜投影面において,5°以内の測定誤差で角度測定を行える撮影画面の範囲を明らかにすることとした.デジタルビデオ画像から測定された角度データを,歩行の進行方向と下肢回旋方向を想定して分類した.その結果,下肢外旋位想定時の測定精度は,斜投影面の回転角度が大きくなるにつれ撮影画面の中央を通過した後半以降で高くなり,下肢内旋位想定時の測定精度は,斜投影面の回転角度が大きくなるにつれ撮影画面の中央よりも手前で高くなった.これは視差の影響やビデオカメラのレンズ特性によって生じたものと考える.
  • 皆方 伸, 佐藤 雄一, 中村 和浩, 長田 乾
    2015 年 27 巻 p. 29-34
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,functional connectivity(FC)解析を用いて,運動習熟の過程の脳領域間の関係性を検討することである.対象は右利き健常成人6名とし,4週間の非利き手での箸操作トレーニングを実施した.評価は,箸操作時間測定,箸先開閉操作を運動課題としたfMRI検査とし,トレーニング開始時ならびに終了時に実施した.FC解析では,関心領域を神経支配側のBrodmann area(BA)4に設定した集団解析を行った.箸操作時間は,非利き手側でトレーニング効果による有意な時間短縮がみられた.FC解析は,利き手では同側の感覚野や対側一次運動野を中心にBA4とFCを認める脳領域は5領域であった.非利き手では,開始時は9領域であったが,終了時は4領域まで減少した.非利き手での運動学習の習熟に伴い,脳の効率的運動制御が進み,箸操作に対して必要な脳領域間の関係に限局したものと考えられた.
  • 齊藤 恵子, 皆方 伸, 佐藤 雄一
    2015 年 27 巻 p. 35-39
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,当センター回復期リハビリテーション病棟(回リハ病棟)における脳卒中患者の血清アルブミン(Alb)を指標に栄養状態とバランス機能,ADLの関係を調査することである。対象は,当センター回リハ病棟に入棟した初発脳卒中患者58名とした。検討項目は,診療録より後方視的に,入棟時のAlb,入棟時・退院時の体幹・下肢運動年齢検査(MAT),入棟時・退院時の機能的自立度評価(FIM)運動項目合計点,FIM利得,入棟時の年齢,発症から入棟までの日数(入棟日数),在棟日数を抽出した。入棟時のAlb3.5g/dlを基準として対象群を2群に分類し,基準値以上の正常Alb群と基準値未満の低Alb群で各検討項目を比較した。結果,低Alb群は有意に高齢で,入棟日数が有意に長く,入棟時・退院時ともにMAT,FIM運動項目合計点が有意に低値を示した。このことから,回リハ病棟入棟時の低Albは高齢者に多く,低Albではバランス機能やADLが低いレベルに留まる可能性が示唆され,急性期からの栄養管理が重要と考えられた。
  • -下腿回旋運動の影響-
    川上 真吾, 鈴木 博人, 田中 直樹, 藤澤 宏幸
    2015 年 27 巻 p. 40-44
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究の目的は,片脚膝立ち位保持におけるバランス制御機構を検討するため、COG変動およびCOP変動と下腿回旋運動との関係を明らかにすることとした。
    【方法】対象は,健常成人28名とした。測定課題は軸足での開眼片脚膝立ち位保持とした。測定機器には三次元動作解析装置および床反力計を用い,サンプリング周波数を150Hzとした。データ解析では,各マーカーの座標データから体重心および軸足下腿回旋角度を,床反力データから圧中心を求めた。さらに,保持が安定しているデータを切り出し平均パワー周波数(MPF)を算出した。
    【結果・結語】MPFは体重心で0.4±0.2Hz,圧中心で2.1±0.3Hz,下腿回旋においては0.9±0.2Hzであった。一方,下腿回旋角度の変動成分は複数のピークを示し,体重心および圧中心の各々のピークと重なった。体重心変動では低周波数成分のパワーが強いことを考慮すると,下腿回旋が基本的には圧中心制御に関与しているものと考えられた。
  • -圧中心による肢節間協調性の検討-
    鈴木 誠, 三木 千栄, 鈴木 博人, 川上 真吾, 田中 直樹, 高橋 純平, 村上 賢一, 藤澤 宏幸
    2015 年 27 巻 p. 45-50
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,若年女性(14名,以下Y群)及び地域在宅高齢女性(30名)を対象にタンデム立位時の圧中心(Center of pressure, COP)から肢節間協調性を検討した。課題は20秒間のタンデム立位保持とし,得られた前足及び後足のCOPから移動軌跡の特徴ごとに分類を行った。また,COP前後・左右成分の時系列データから位相差時間±0.00時点の相互相関係数を算出した。20秒保持が可能であった地域在宅高齢女性群を高齢者A群,不可能であった群を高齢者B群とした。各対象群と前足及び後足でとりうるCOP移動軌跡から2つのタイプに区分した結果,有意な関連性が認められた。また,前足及び後足COPの前後成分での相互相関係数では群間に有意差を認めた(中央値:Y群0.806,高齢者A群0.926,高齢者B群0.890)。今回の結果から,加齢やバランス能力の影響によってタンデム立位保持のためのとりうる戦略が異なることが示唆された。
  • 木元 裕介, 佐竹 將宏, 菊谷 明弘, 皆方 伸, 中澤 明紀, 岩澤 里美, 佐藤 峰善, 若狭 正彦
    2015 年 27 巻 p. 51-57
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    【目的】大腿四頭筋へのダイナミックストレッチングとスタティックストレッチングを実施した後の、膝屈曲可動域および膝伸展筋力の変化を検討した。
    【方法】健常成人男女18名を対象に、ダイナミックストレッチングを行う介入、スタティックストレッチングを行う介入、ストレッチングを行わず安静を保つ介入(安静)を行った。ダイナミックストレッチングは、つかまり立位をとり1回6秒(10回/分)のゆっくりとした速度で12回行う方法とした。
    【結果】ダイナミックストレッチングおよびスタティックストレッチングは、同様に膝屈曲可動域が有意に増加した。しかし、スタティックストレッチングにおいてのみ膝伸展筋力が有意に低下した。安静は全てにおいて有意な変化がなかった。
    【考察】1回6秒を12回行うダイナミックストレッチングは、理学療法場面において有益な方法となり得る可能性があった。
  • ―クリニカルクラークシップを基本とした指導と実習指導支援ツールを導入して見えた現状と課題―
    髙野 稔, 佐藤 聡見, 篠原 弥生
    2015 年 27 巻 p. 58-64
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    【目的】平成26年度より臨床実習指導の新たな取り組みとしてクリニカルクラークシップを基本とした指導と実習指導支援ツールを導入した。本研究は新たな取り組みの現状と効果を調査し今後の課題を検討することを目的とした。
    【対象】平成26年度総合南東北病院で臨床実習を行った学生19名と実習指導者延べ38名。
    【方法】実習終了時に無記名記述式のアンケート調査を実施した。調査項目は生活項目、主観的実習評価項目、自由記載とし回答を得た。尚、主観的実習評価項目は5段階評価(いいえ1~はい5)で評価した。
    【結果】実習指導者がクリニカルクラークシップによる指導を実践できた結果、学生は過度なストレスを受けることなく、実習終了時に高い自己成長感と満足感を得る結果となった。
    【結語】クリニカルクラークシップを基本とした指導と実習指導支援ツールは学生・指導者ともに有用であったことが示唆された。当院での取り組みがクリニカルクラークシップ指導を導入する実習施設の一助になると考えられる。
  • 日塔 善之, 真壁 寿, 鈴木 克彦
    2015 年 27 巻 p. 65-70
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    目的:立位及びステップ位での下肢荷重量の変化がヒラメ筋H反射の振幅に及ぼす影響を検討する。方法:健常成人9名を対象とした。立位,前及び後ステップ位で下肢荷重量を変化させ,ヒラメ筋H反射を測定した。立位では体重の5%,25%,50%,75%,95%荷重,前後のステップ位で体重の25%,50%,75%荷重とした。各荷重条件において最大M波振幅に対するヒラメ筋H反射の振幅比(%Mmax),下肢筋(ヒラメ筋,前脛骨筋,外側広筋)の背景筋電図比(%RMS),下肢関節角度(足関節,膝関節,股関節)を測定した。結果:立位では下肢荷重量の増加に伴い,%Mmaxは有意に増加し,前及び後ステップ位では%Mmaxは有意に減少した。考察:ヒラメ筋H反射の振幅は下肢荷重量の変化に影響され,立位とステップ位においては相反する影響を受けた。その主たる要因は,ヒラメ筋の背景筋電図とIb抑制,前脛骨筋による相反性Ia抑制が考えられた。
  • 添田 健仁
    2015 年 27 巻 p. 71-74
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    【目的】健常人を対象にし,足踏み課題を用いて直流前庭電気刺激 (GVS) で荷重状況に変化はあるかという点について調査した.
    【方法】健常成人14名を対象とした.課題は重心動揺計上での足踏み検査とした.対象者への刺激条件は2種の極性と3種の刺激強度を組み合わせた計6条件とした.
    【結果】立脚相時間因子は1.5mAと2.5mAで陽極側が有意に増加した.遊脚相時間因子は1.5mAと2.5mAで陽極側が有意に減少した.離床荷重速度は1.5mAと2.5mAで両側において有意に増加した.接床から離床への移行変化は1.5mAと2.5mAで陰極側が有意に増加した.荷重再現性は両側とも差はなかった.
    【考察】結果から急激な接床や荷重速度の増加によるバランスの低下を起こさず,陽極側立脚相延長を誘導できた.また,陰極側のみで接床から離床への移行変化が増加し,陰極側下肢の速やかな引き上げが陽極側への移動を促進した.離床荷重速度に関しては,陽極側と陰極側ともに増加しており,歩行のリズミカルな蹴り出しの改善に寄与できる.また,低刺激でも有効であり,刺激増強による不快感の回避が可能である.以上の現象は極性と刺激強度に関わらず,再現性を維持することを明らかにした.
  • 奈川 英美, 対馬 栄輝
    2015 年 27 巻 p. 75-81
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    【目的】脳卒中患者の歩行所要時間に対して, 観察による歩容のどのような点が影響するかを検討することを目的とした.
    【対象】装具・補助具の使用を問わず近位監視あるいは自立で20m以上歩行可能な脳卒中患者19名(男性15名, 平均年齢62.74±11.70歳)を対象とした.
    【方法】5mの歩行を矢状面・前額面の2方向からデジタルスチルカメラで撮影した. 撮影したカメラ映像から, 5m歩行時間を計測した. 次に, 映像を観察し, 2名の検査者で, 25項目の観察項目で構成された歩容評価表を用いて, 歩容を評価した. 5m歩行時間を従属変数, 歩容評価表の25項目を独立変数としてステップワイズ法による重回帰分析を行った. 有意水準はp=0.05とした.
    【結果】 重回帰分析の結果, 麻痺側のクリアランス(標準偏回帰係数b=0.63)と麻痺側遊脚初期(ISw)での外旋(b=0.40)が選択された(p<0.05).
    【結語】麻痺側下肢の足底クリアランスが悪く, ISwで下肢の外旋が大きい者は歩行時間の長くなる傾向が明らかとなった.
  • 照井 駿明, 吉田 英樹, 前田 貴哉, 皆方 伸
    2015 年 27 巻 p. 82-85
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    本研究では、脳卒中片麻痺患者の肩手症候群の発症との関連の深い麻痺側手指皮膚温に影響を及ぼす関連因子について検討することを目的とした。対象は当センター回復期病棟に入院する片麻痺患者45名を対象とした。評価項目として、麻痺側および非麻痺側手指皮膚温に加えて、基礎情報として上肢運動麻痺、および感覚障害の重症度と、半側空間無視、及び認知症検査の得点を評価した。結果、麻痺側および非麻痺側手指皮膚温は麻痺側での有意な上昇を認めた。また、皮膚温患健比と全ての基礎情報との間に有意な相関を認めた。stepwise重回帰分析の結果、麻痺側手指皮膚温を上昇させる関連因子として上肢運動麻痺、および感覚障害の重症度が抽出された。これらから、運動麻痺や感覚障害の存在は、麻痺側上肢の不動化や日常生活での麻痺側上肢の保護管理不十分になりやすく、麻痺側手指皮膚温を上昇させる因子の一つと考えられる。
  • - 関節外転筋力の最高値と平均値を用いたシミュレーションによる推定 -
    対馬 栄輝
    2015 年 27 巻 p. 86-90
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,股関節外転筋力(外転筋力)を例に挙げて最大随意性の筋力(最大筋力)について,最高値と平均値のどちらを採用すべきか,また最大筋力を何回繰り返して測定すべきか,を明らかにすることである.対象は健常女性23名で,方法としては被検者をベッド上腹臥位とさせ,等尺性の外転筋力を10回繰り返し測定した.それにより記録された外転筋力値をもとにして,ブートストラップ法によるシミュレーションを行った.その結果,最高値よりも平均値の方が値は安定し,かつバラツキが少なく正規分布に従うという性質を示した.よって,筋力測定値については平均値の方が最大値より適切な値であると考えた.また,値の変化は最高値でも平均値でも4回以降は緩やかとなったことから,信頼性の高い値を求めるには,4回程度測定が必要となるのではないかと考える.
症例研究
  • -日本光電工業社製SAS2100で捉えた呼吸の変化-
    佐藤 亜矢, 矢崎 憲二, 近藤 圭, 中村 信也
    2015 年 27 巻 p. 91-97
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    症例は慢性閉塞性肺疾患(COPD)急性増悪で入院した70歳代の男性である。酸素療法及び薬物治療に加え、非侵襲的陽圧換気療法(NPPV)の併用を試みたが、NPPV装着時に呼吸困難が生じ導入が困難であった。第14病日、呼吸困難を軽減する目的で呼吸リハビリテーション(呼吸リハ)開始となった。用手的呼吸介助法(呼吸介助)を用いて充分な呼気を誘導しリラクセーションを図りながら、上肢の活動性を上げることで胸郭の可動性の拡大に繋げた。第21病日、呼吸数減少と共に本症例の苦痛表情が和らいだため、第26病日、呼吸介助を併用しながらNPPVを試みた。その後は呼吸困難の訴えなくNPPV装着可能となり、第36病日、日常生活動作自立され自宅退院となった。本症例の呼吸を日本光電工業社製SAS2100(SAS)にて測定し、呼吸数及び圧差を比較、検証した。測定結果から、第21病日目には歩行時にも深呼吸が可能となっていることが客観的に確認できた。また、NPPV導入後には深呼吸数が減少し、歩行後にも深呼吸が可能となり呼吸困難の軽減に繋がった。SASを用いることで呼吸の変化を視覚的に捉えることが可能となり、呼吸リハの効果判定と症例及び治療者へのフィードバックに役立っている。
短報
  • 蛯名 葉月, 古澤 武志, 阿部 直子, 吉田 祐真
    2015 年 27 巻 p. 98-100
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    当院の介護療養型病床に入院している患者91例に介護度、Barthel Index(BI)、肺炎の既往、中枢神経疾患の既往、認知症および経管栄養実施の有無について調査を行った。結果、介護度4・5と重度の介護を要し、BI20点以下で日常生活全介助の患者が約9割を占め、活動量が低い状態であった。肺炎の既往は27%にあり、経管栄養実施の有無と相関があった。
    呼吸リハビリーションは13例へ排痰や胸郭ストレッチなどのコンディショニングを中心に実施していた。今後は肺炎予防の観点からポジショニング、離床、嚥下面へのアプローチなど包括的な介入が必要と考えられる。
症例報告
  • 小野寺 可奈恵, 五安城 亜希, 鈴木 浩司, 澤邉 泰, 四役 晃一, 千葉 友香, 熊谷 歩, 沼田 拓己, 菅野 遥, 高橋 香織, ...
    2015 年 27 巻 p. 101-106
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/07/31
    ジャーナル フリー
    閉塞性動脈硬化症 (ASO) の治療として、運動療法が推奨されている。我々は、入院中に両下肢ASOが判明した片麻痺を有する脳梗塞患者において、身体能力に応じた運動の選択と、患者および家族への指導により、6年間に渡り運動療法を継続している症例を経験した。症例は中等度~重度の右片麻痺と失語症を有し、自宅への退院後の運動不足を指摘された。そこで、運動強度の調整がしやすく長時間連続した運動を行いやすい自転車エルゴメーターを用いた。運動療法継続により冠危険因子の是正およびASOによる下肢虚血症状の改善、さらには歩行速度の向上が得られた。重複合併症を有する脳梗塞患者でも症例に応じた運動療法を工夫することで、心血管系疾患の再発リスクを長期間に渡り軽減できた。脳梗塞後遺症を有するASO患者でも、個々の身体能力に応じた運動療法を工夫しその適応を広めていきたい。
東北理学療法学術大会大会賞について
平成26年度公益社団法人 日本理学療法士協会 東北ブロック協議会 理事会会議録
平成26年度公益社団法人 日本理学療法士協会 東北ブロック協議会 役員
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機関誌編集部構成員と編集後記
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