動物園の活用法を紹介し,授業での動物園活用例を増やすことを目的として,安佐動物公園で理科教員を対象としたセミナーを2回開催し,セミナーが参加者に与えた影響を調べるためにアンケートを実施した.2回のセミナーはいずれも中学2年理科「動物の体のつくりとはたらき」の単元に焦点を当てた.第1回セミナーでは,動物の採食や頭骨の観察を行ない,同時に採食している動物の動画教材を作製した.アンケートからは,教材作製が授業での活用に結びつきやすいことが示唆された.第2回セミナーでは,解剖による消化管の観察や糞分析,さらに人工消化液による食物の消化実験によって,食べ物が糞になるまでの過程を参加者に体感してもらった.実験に使用した試料が入手しづらいことから,授業への活用に関しては一部否定的な意見が見られた.しかし,セミナーのわかりやすさや次回の参加意欲については,2回とも肯定的な評価を得ており,参加者にとって動物園がより深い知識の習得の場となったことが示唆された.このように,セミナーの内容によっては,当初の目的であった動物園の活用法を周知し,実際に授業で実践してもらうことができた.動物園を活用した授業を広めるためには,セミナーの継続により動物園が授業の質を高める役割を担えることを周知するとともに,より授業での活用につながりやすいプログラムの開発に取り組む必要がある.
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