広島市安佐動物公園のはちゅうるい館1 階では,薄暗い赤色照明で夜を演出し,夜行性の哺乳類が活動する様子を展示している.しかし,「暗くて動物が見えにくい」,「通路が怖い」などの不評があったことに加え,使用していた赤色電球が製造中止となった.そこで代替手段の模索および展示環境の改善を目的に,青色と赤色の弱光を同時点灯する観賞魚用のLED 照明を試験的に導入した.青色光の効果として,より自然な夜らしい雰囲気を作り出せると期待できるが,動物への影響の有無や,来園者にとって観察しやすい環境なのかはよく検討する必要がある.そこで今回は,展示の一部に青色照明を導入した上で来園者にアンケート調査を行い,赤色照明とどちらが良い展示か意見を募った.その結果,青色照明の方が夜らしい雰囲気を感じられるとの評価は多かったものの,赤色照明の方が動物は見えやすく,好きだという回答が多かった.また,各照明環境の照度を比較したところ,今回導入した青色LED 照明ではこれまでの赤色電球に比べて照度が低いこと,さらに観覧通路の照明がどちらの展示室よりも明るいことがわかった.以上より,青色照明は展示環境の雰囲気を向上できるものの,今回の環境では照度が低く,動物が見えにくくなっていることが示された.
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