安佐動物公園飼育記録集
Online ISSN : 2759-6567
44 巻
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 棚田 晃成
    2021 年 44 巻 p. 1-11
    発行日: 2021年
    公開日: 2025/01/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    行動観察をしていたマンドリルの家族群において,母親のマンドリルが死亡した.母親の死亡が同居していた父親とその子どものワカモノ雌,コドモ雌の計3個体の行動に及ぼす影響について調べるため,行動観察を継続して実施し,母親の死亡前後の他個体の行動を比較した.その結果,母親の死亡前後で,父親,コドモ雌の社会行動が減り,ワカモノ雌の移動が増えた.また,父親とワカモノ雌が近くにいる時間が増え,父親とコドモ雌が離れている時間が増えた.同居個体の死亡による影響の程度は,同居する血縁個体数などの社会環境と関係する可能性がある.個体の死亡のような予期せぬ飼育環境の変化が動物に与える影響を評価するため,日常的な行動観察が有用である.
  • 鎌田 博
    2021 年 44 巻 p. 12-18
    発行日: 2021年
    公開日: 2025/01/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    広島市安佐動物公園の敷地内には開園以前から残る農業用ため池が存在しており,1993年から不定期で水生昆虫類,鳥類,爬虫類,両生類,植物の生息調査を行なっている.2010年,里山を代表する水生昆虫の一種であるゲンゴロウを発見した.発見から現在まで概ね継続して確認している.2010年から2019年までの10 年間の個体確認日と時刻,確認時の行動について,生息池の環境変化とゲンゴロウの生態とを照らし合わせた.確認日,確認時刻,確認場所において極端な偏りが見られた.確認日においては繁殖期であり,場所においても繁殖に適した場 所であることから,この池で繁殖している可能性が示唆された.開園以前から残る農業用ため池は,1994年の大規模な渇水時に干上がる寸前の状態であった.このことがため池の管理で行なう池干しと同様の効果をおよぼし水質改善が図られた.さらに絶滅要員の一つである外来魚の駆除を行なったことと除草等の管理を放置した結果,水生植物の多様な水辺環境へと変化を遂げた.このことが,2010年のゲンゴロウ発見につながったものと考えられたが,個体数は少なく危機的状況である.さらに,安佐動物公園近隣の水田を含めた水辺環境が悪化している中,他の池での生息状況の調査,ゲンゴロウ誘致のための環境整備が急務である.これらの活動は,動物園の役割の一つである「自然保護」と一致し,ゲンゴロウの保護が新たな動物園の役割となりえると考える.
  • 屋野丸 勢津子
    2021 年 44 巻 p. 19-24
    発行日: 2021年
    公開日: 2025/01/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    ユーラシアカワウソは,ヨーロッパ,アジア,北アフリカのさまざまな水域に生息し,現在11の亜種に分類されている.本種は,CITES附属書Ⅰに含まれており,条約の下で保護されている.また,IUCNレッドリストにおいては準絶滅危惧種(NT)に分類される.そのため,動物園での域外保全は重要な役割を担っている.2018年現在,日本では11亜種のうち中国系と雑種を含むヨーロッパ系の2亜種を飼育している.中国系ユーラシアカワウソの飼育は1988年に王子動物園で始まり,1990年に初繁殖した.その後順調に増え,2000年には飼育頭数は最大の30頭になった.しかし,2001年から徐々に飼育頭数は減少しはじめ,2018年にはわずか6頭だけとなった.この飼育頭数の減少の原因は2つ推測することができる.1つは,2000年頃に行われた安易な繁殖制限が挙げられる.繁殖技術が十分に確立できていない状態にも関わらず,繁殖成績の良かったペアの繁殖を安易に制限したことが影響したと考えられた.もう1つは,飼育施設が本種の繁殖に不十分であることが挙げられる.交尾の成功率を高めるための陸地面積や水場の水深,個体が安心して出産できる寝室や巣箱など,本種本来の生態を考慮した飼育環境を提供することが重要だと考えられた.
  • 畑瀬 淳, 寺山 美穂子, 上野 吉雄, 島津 幸枝
    2021 年 44 巻 p. 25-39
    発行日: 2021年
    公開日: 2025/01/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
    広島市市街地において,校舎を利用するオヒキコウモリTadarida insignisの集団ねぐら3か所を調査した.これらは,市街地ならびに人工建築物からは唯一のオヒキコウモリのねぐら確認で,これまでの報告すべてが無人の小離島であったのとは異なっている.調査したねぐらのうち,少なくとも1か所においては,ねぐら内のコウモリは壁面を利用し,個体間に一定の間隔を開けて静止していた.また,既知の生息地では最大の個体群を有するねぐらであり,秋には520頭を確認した.さらに,ねぐらの利用個体数には季節的な変動が顕著に認められ,近隣地域に存在する別ねぐらとの間で,個体の相互交流が示唆された.出産保育群を中心としており,春期を中心に成獣雄の存在も確認した.本種は出生後,性成熟までに複数年を要すると考えられ,1産1仔であることを確認した.また本種の交尾期は,多くの温帯産コウモリとは異なる,冬から春であると考えられる.
  • 畑瀬 淳, 濱村 陽心, 彌永 千穂, 伊藤 文香, 西原 幹朗, 野田 亜矢子
    2021 年 44 巻 p. 40-44
    発行日: 2021年
    公開日: 2025/01/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
  • -動物糞からガラスを作る試み-
    畑瀬 淳, 坪田 麻実子, 寺山 美穂子, 金井塚 務
    2021 年 44 巻 p. 45-48
    発行日: 2021年
    公開日: 2025/01/17
    研究報告書・技術報告書 フリー
feedback
Top