縄文時代人, 江戸時代人および現代人の同一個体で両側のそろった標本を用いて, 上腕骨, 橈骨, 尺骨の最大長における左右差を検討した。上腕骨では, 江戸時代女性を除き, 各時代の男女とも右平均値が左よりも有意に長かった。橈骨においては, 縄文時代人女性と現代人男女において右平均値が左よりも有意に長かった。尺骨においては, 縄文時代人女性, 江戸時代人男性および現代人男女において右平均値が左よりも有意に長かった。女性の三つの骨の左右差平均値は男性よりも大きい傾向を示した。日本での地域および時代的な差は, これらの標本による左右差平均値の比較からは認められなかった。既発表の他の四つの集団(清野らによる縄文時代人と現代人日本集団, Warren によ Naqada 集団, Münter によ Anglo-Saxon 集団)を含めた七つの集団の左右差平均値間の一様性の検定において, 上腕骨だけに集団間の差が認められた。
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