Anthropological Science
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103 巻, 5 号
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  • 尾本 恵市
    1995 年 103 巻 5 号 p. 415-427
    発行日: 1995年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    この総説は, 日本人の起源の問題について, 分子人類学の立場から, 何が, どこまでいえるのかを紹介し, 今後の総合的な日本人研究への一助とする目的で書かれた。検討のための土台として, 埴原の「二重構造モデル」が用いられた。このモデルを, (1)「原日本人」は東南アジア起源である, (2) 現代日本人の諸集団の形成には、「原日本人」と北東アジア系の渡来人という主として2つの系統を異にする集団が関わっている, との2つの部分仮説にわけ, それぞれを個別に検討した。分子人類学的に重要な資料としては, 古人骨のミトコンドリアDNAの塩基配列 (宝来ら) と古典的遺伝標識の遺伝子頻度を用いた多変量解析 (根井, および筆者ら) などがある。前者は, 原日本人の南方起源説にとり有利な資料を, また, 後者は, 反対に, 原日本人の北方起源説を支持する資料を提供している。また, 埴原のいう「二重構造」の存在についても, 意見がわかれている。このような不一致点をどのように説明するかが, 大きな問題である。本論文で筆者は, 問題点の所在を明らかにすると共に, 将来の検討に対する資料として, いくつかの提案をした。
  • 高井 正成
    1995 年 103 巻 5 号 p. 429-446
    発行日: 1995年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    南米大陸の熱帯雨林に生息する広鼻猿類の系統進化に関する研究は, ここ十数年の相次ぐ化石種の発見と分子生物学的手法の発展により飛躍的に進展している。現在の主な論点は, マーモセット類•サキ類•クモザル類 (ホエザルを含む) の大きな3つのグループと, 残りの4属 (リスザル•ヨザル•ティティモンキー•オマキザル)との系統的な関係である。特に後4者の系統的な位置に関しては, 古生物学的な解析,現生種の形態学的解析, 分子生物学的解析のいずれも決定的な結論を出すに至っていない. 広鼻猿類の進化の初期段階で, 非常に短い時間に急速に互いに分岐したのではないかと思われる。
  • 森本 岩太郎
    1995 年 103 巻 5 号 p. 447-465
    発行日: 1995年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    神奈川•山梨•長野3県下の7遺跡から出土した飛鳥•室町時代女性7個体の切歯に、苧績み作業によると思われる、後上方から前下方に向かって傾斜する特殊摩耗面が認められた。摩耗は相互に噛み合う上•下顎切歯の各対ごとに個別に起こり、しばしば複数対の切歯に生ずる。摩耗は側切歯より中切歯に多く、また左側より右側が高度である。切歯の摩耗は少数の女性に限られ、苧績み専従の女性がいたと推測される。摩耗形式に時代差がないので、苧績みの技法は飛鳥時代から室町時代まで基本的に変わっていない。苧績みは飛鳥時代に相模国で盛行し、室町時代になると甲斐•信濃両国にも波及したと思われる。
  • 史 常徳, 西澤 哲, 足立 和隆, 遠藤 萬里
    1995 年 103 巻 5 号 p. 467-484
    発行日: 1995年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    直立二足姿勢をとるヒトの脊柱は, 他の動物とは異なった形態を持つことが考えられる。本研究はヒトの脊椎骨の形態と姿勢との機能的な関係を明らかにする前段階として, 椎体の形態的特徴を抽出することを目的として行った。資料はヒト, チンパンジー, ニホンザル, ニホンカモシカである。計測項目は椎体に関する腹背側垂直径, 頭尾側矢状径, 頭尾側横径の6項目である。この結果ヒトにおける椎体の形態的特徴が他の哺乳類と異なる点は, 1) L4とL5の背側垂直径が腹側垂直径より著しく小さい, 2) 椎体横径がC3~C7, T8~最終腰椎まで著しく増加する, 3) 頸椎と腰椎椎体のプロポーションが太く短いということであった。これらの特徴とヒトの直立二足姿勢との関係についての考察を行った。
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