Anthropological Science
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104 巻, 5 号
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  • 山口 敏
    1996 年 104 巻 5 号 p. 343-354
    発行日: 1996年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    主として北海道と東日本の先史時代人骨に関する筆者の研究の跡を振り返りながら, 北海道の縄文時代人が近世アイヌに移行したこと, 日本列島の縄文時代人は旧石器時代人的な形態を長く保持していたが, 弥生時代以後, モンゴロイドの渡来の影響によって大きく変容し, 縄文人本来の特徴の多くはアイヌに受け継がれたこと, 縄文•アイヌ集団はオーストラロイド, モンゴロイド, コーカソイドなどの大人種群のどれにも属さない独立した人種であることについて, これまでの考察の経過を説明した。また最近行なった江南の古人骨に関する比較研究の結果を紹介し, 今後に残された古人骨研究の課題についても言及した。
  • 平井 百樹
    1996 年 104 巻 5 号 p. 355-364
    発行日: 1996年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    ヒトの染色体進化は, かつてはバンド•パターンを指標とした近縁霊長類との比較により研究されてきた。しかし最近では, 遺伝子工学的手法によるDNAレベルでの染色体比較研究が主流となっている。クローン化された遺伝子やDNAフラグメントを染色体上に位置付けする遺伝子地図作成 (マッピング) により, 霊長類種間の相同遺伝子の位置を比較し染色体の構成が調べられている。特にヒト染色体特異的DNAライブラリーを標識プローブとし他の種の染色体にハイブリダイズさせ, 相同領域を顕微鏡下で検出する染色体比較彩色法は, 染色体進化を調べる上で極めて有力な方法である。最近の研究では, 染色体は大きな保存的染色体領域が単位となってダイナミックに再構成され進化していることがわかってきた。このような研究により, ヒトの染色体の進化の全貌が明らかにされることが期待される。
  • 研究の現状
    内田 亮子
    1996 年 104 巻 5 号 p. 365-383
    発行日: 1996年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    伝統的に頭蓋と歯の形態中心に研究されてきた化石ヒト上科は, 近年の四肢骨資料増加により全体像が徐々に明らかにされつつある。多くの中新世 dental ape には尾はないようだが, 他の骨格は現生類人猿よりも, 古典的な狭鼻猿類に類似している。そこで, 共有派生形質の解釈次第でさまざまな系統関係が提唱されており, 現生類人猿放散以前にほとんどの化石ヒト上科が分岐した可能性も示唆されている。一方, 現生大型類人猿は, 遺伝, 形態, 行動生態の示す変異パターンがいままで考えられてきたよりも複雑であることが明らかになってきた。各分野を総合的に検討することで,種独特と考えられてきた行動や形態の適応的意義などを改めて問い直す必要がある。長い歴史を経たヒト上科研究だが, データの増加に伴い, ますます難解でかつ魅力的な生物進化を認識させられる。
  • 大島 直行
    1996 年 104 巻 5 号 p. 385-397
    発行日: 1996年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    北海道における縄文時代から近代に至るまでの古人骨資料を用いて, 各時代の成人集団における齲歯頻度の時代的推移を調査した。縄文時代から続縄文時代になると齲歯頻度は有意に低下し, その後, 近世アイヌに至るまで齲歯は少ないまま推移する。また, オホーツク文化の人々には齲歯が見られなかったが, これは, 海産動物を中心とする動物質食への依存が強いことと関係が深いと思われる。縄文時代においては, 北海道北東部は南西部に比べ齲歯頻度が低いが, 本州の縄文時代人と比較すると北海道南西部でもはるかにその頻度が低い。これも, 縄文時代の北海道, とくに北東部では本州に比べ, 食料を海産動物に頼る割合がもともと高かったことが原因と考えられる。ただし, 本州においても, 齲歯頻度が極端に低い縄文時代人集団があり, 齲歯の成因として植物食料の量のみならず, その加工技術, 集団全体の栄養状態なども考慮する必要があると思われる。
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