人類學雜誌
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88 巻, 1 号
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  • I.新発見とヒト属の年代
    北原 隆
    1980 年 88 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 1980年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    The present article surveys the important evidence on human origins that has accumulated during the last ten years, particularly from East Africa and Ethiopia, and goes on to discuss the implications of these finds for our understanding of early hominid evolution.
    The material recovered from four sites (East Turkana, Omo, Laetolil and Hadar) is summarily described and is shown to trace the roots of mankind deeper into the past by a factor of three, as compared to the time when the find of Zinjanthropus provided anthropologists with the first absolute date for early hominids.
    On the other hand, these abundant and important finds have raised a number of new questions regarding human origins and are seen by some to call for a thorough revision of the traditional views on human origins. The first of these questions is considered in this article and regards the antiquity of genus Homo. After examining the finds that are thought to represent an early form of Homo, it is concluded that, though it has become clear that the genus existed earlier than had long been thought, its earliest occurrence cannot at present be shown to be much anterior to 1.8 Myr. ago. The problem of the antiquity of genus Homo is also seen to be closely associated with that of its relationship to Australopithecus, a topic to be discussed in a later part of the article.
  • 双生児法による体型の研究第1報
    保志 宏, 高橋 千佳子, 芦沢 玖美, 河内 まき子
    1980 年 88 巻 1 号 p. 9-23
    発行日: 1980年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    双生児の組内類似度の表現法としてのVERSCHUERの百分率偏差法を再検討したところ,個人差の大きい計測項目では大きな値に,個人差の小さい項目では小さな値になることがわかったので,個人差を取り除くため,変異係数の逆数を乗じて重みづけし,さらに正規分布に近づけるため平方根変換したものを訂正百分率偏差と呼び,その平均値を類似度係数と呼ぶことを提案した。46組の一卵性双生児について27生体計測項目および24示数の類似度を類似度係数を用いて検討した。従来最もよく似ているとされていた頭囲が実はさほどでなく,似ていないとされて来た体重がよく似ていること,プロポーションよりも実サイズの方がよく似ていること,などを明らかにした。
  • 市川 光雄
    1980 年 88 巻 1 号 p. 25-48
    発行日: 1980年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    東アフリカの各地にDoroboと呼ばれる狩猟民が住むことは古くから知られていたが,その狩猟採集生活の実態については,Huntingfordらによる概略的な記載をみるのみである。筆者は,1976年~1978年に北部ケニヤのMathew山脈に住むSuiei Doroboの調査をおこなった。ここでは,彼らの生息環境と,伝統的な野生植物食の利用について,記載と分析を試みた。
    Mathew山脈の植生は,ほぼ高度にしたがって, dry bushland, wooded grassland, riverine forest,montane forest等に分類できるが,とくにこの地域の植生を代表するものとして, Acacia属のサバンナ(bushland, wooded grassland)および, Croton林, Juniperus-Podocarpus林などの比較的乾燥したタイフ。の山地林をあげることができる。Suiei Doroboは,ちょうどこの山地林帯と, Acaciaサバンナ帯の中間域に居住し,サバンナ帯での植物採集,山地林帯での蜂蜜採集など,多面的な環境利用をおこなっている。
    Suiei Doroboが,伝統的に食物と考える植物は,合計44科122種におよんでいる。このうち,5種の漿果,2種の堅果,3種の根茎からなる10種のmajor foodが,彼らの伝統的な食生活において大きな役割を果たしていたと考えられる。なかでも,Papilionoideaeに属する2種の堅果は,栄養に富む極めて重要な食物である。
    これらの植物の採集場所をみると,122種のうち,73%がサバンナ性のものであり,これに対して森林性のものは16%にすぎない(森林,サバンナに共通なものが11%)。また,major foodのうち,主に山地林帯で採集できるものは,1種のみである。すなわち,植物性食物の採集という観点からすれば,サバンナ帯の方が,山地林よりはるかに重要なのである。同様な傾向は狩猟獣についてもみられ,彼らが食物の考える26種の哺乳類のうち,森林に生息するものは5種を数えるのみである。多くのDoroboの集団が,狩猟,植物食の採集という点からは不利な山地林帯およびその周縁部に居住している。その理由のひとつとして,山地林帯では大量の蜂蜜が採集できることがあげられよう。
    アフリカの狩猟採集民の植物性食物についての比較研究はほとんどない。伊谷(1974a)は,アフリカの狩猟採集民を植生タイプに応じて分類しているが,この分類にもとついて,主要植物性食物の比較を試みたところ,主要植物性食物の構成が,植生のタイプをかなりよく反映することが判明した。
  • 欠田 早苗, 生駒 栄喜
    1980 年 88 巻 1 号 p. 49-54
    発行日: 1980年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    日本人成人男性の左中手骨のレントゲン像(n=62)より長径,幅径(B)および骨髄幅(MD)を計測し,それらより皮質面積(CA=0.785(B2-MD2)),皮質面積の比例値(PCA=(B2-MD2)/B2×100)ならびに第2指長の第4指長に対する比を求めて因子分析にかけた。その結果,すべての中手骨の長径は身長をも含めて,ひとつの因子で説明できるが,幅径については第1,2および5指の高い負荷量が複数の因子に分散していて,因子的に複雑な性質を予想しうる。
    ついで,左中手骨の晒骨標本について,幅径と前後径(厚み)を計測し,また第1と5指のレントゲン像での幅径を加えて分析した。その結果,各指の幅径と前後径は同一の因子の支配を受け,各指の幅径の因子は互いに独立性が明確で,幅径の複雑性が指摘されうる。
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