人類學雜誌
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92 巻, 4 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 「働きかけ」と印象づけ行動について
    宮藤 浩子
    1984 年 92 巻 4 号 p. 253-271
    発行日: 1984年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    宮崎県串間市幸島のニホンザル群において,群れから離脱したメスを中心に新群が形成されていく過程を追跡観察した。1979年に始まった新メンバーの加入以降の新群内のSocial Interaction の変化を分析した結果,(1)新加入のメス個体は,加入当初,攻撃的Interaction をさかんに行ない,また接近行動や一方的な Grooming もさかんに行なって,群れのもとからのメンバーに対し積極的な「働きかけ」をし,(2)群れの安定状態は,反撥的 Interaction と親和的 Interaction の両方が減少することによって達成された。これらの結果が,群れ社会の成立の原因を個体間の Social Interaction のパターンに求めようとする立場から考察された。
  • 岩本 光雄, 浜田 穰, 渡辺 毅
    1984 年 92 巻 4 号 p. 273-279
    発行日: 1984年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    実生年月日のわかっているニホンザルについて,乳歯の萌出年令を検討した例はほとんどない。本研究では,実生年月日のわかっているニホンザル76頭より得た,延べ384頭分の歯牙萌出状態の観察例にもとづき,乳歯の萌出年令の検討を行った。萌出年令の個体差が大きく,それにくらべて地域差,性差が目立たないこと,また例数が限られていることから,地域差,性差は無視して,統計を行った。歯の萌出順序を,萌出が始まっているか否かで検討すると,全体的傾向としては,前方の歯から後方の歯の方へ向かって萌出が進行し,また,下顎歯の方が,対応する上顎歯よりも先に萌出することがわかる。平均的な萌出年令は,乳切歯の萌出が生後約1週間で始まり,生後1.5~2.0箇月で生え終ったあと,生後約2.5箇月で乳犬歯と第1乳臼歯が生え始め,前者は約1箇月後,後者は約2箇月後に生え終る。第2乳臼歯は生後5.5~6.0箇月で生え始め,生後約7.5箇月で乳歯列が完成する。このような結果を従来のアカゲザルとカニクイザルについての報告と対比すると,3者間で特別に大きな食い違いはないが,比較的にニホンザルでは乳切歯の萌出が早く,アカゲザルでs第2乳臼歯の萌出が早いことが注目される。
  • 保志 宏
    1984 年 92 巻 4 号 p. 281-293
    発行日: 1984年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    通産省工業技術院が全国規模で行った体格調査の結果が「日本人の体格調査報告書」として発表されたので,その平均値と標準偏差によって日本人の体格•体型について性差•時代差•年令変化などを解析した。(1)幼小児期の性差は3才ごろから成人の性差と同じ性質のものとして出現するが,差そのものは成人より小さい。(2)学令期の体位は,およそ10年前に工業技術院によって同規模で行なわれた調査結果とくらべて,少しも改善向上していないことが明らかにされ,むしろ周径は肥満者の増加を示唆している。(3)成人女子の皮下脂肪厚はこの10年間に著しく減少した。(4)10年前の値との比較によって,成人以後の年令変化の実態について,重要な所見が得られた。
  • 小宮 秀一, 藤野 武彦
    1984 年 92 巻 4 号 p. 295-301
    発行日: 1984年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    本研究は,日本人高年齢者男子18名と女子16名を対象に体脂肪分布を皮下脂肪と体内脂肪に分けて検討した。体脂肪総量には有意な性差は認められないが,体脂肪率では男子27.2%,女子35.0%で有意な性差が認められた。皮下脂肪量と体内脂肪量に2分してみると,有意な差ではないが,皮下脂肪量は女子に多く,体内脂肪量は男子に多い傾向が認められた。体脂肪総量に占める体内脂肪量の割合は男子54.2%,女子48.7%であった。皮下脂肪量と体内脂肪量とはそれほど高い相関を示さなかった。全身の体内脂肪量と CT 法によって推定された体幹局部の体内脂肪量では,腹部と腰部に5%水準で有意な相関が認められた。
  • 馬場 悠男, 茂原 信生, 芹澤 雅夫, 江藤 盛治
    1984 年 92 巻 4 号 p. 303-308
    発行日: 1984年
    公開日: 2008/02/26
    ジャーナル フリー
    古墳時代人骨で,右肩甲骨関節窩が変形•拡大し,右鎖骨が左鎖骨より著しく太いなど,明らかに右利きの証拠と考えられる例が見られた。この個体は強壮な若い男性であり,特別な病変は認められなかった。
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