1978-'79年に計測された7歳から20歳に至る健康な日本人,男子8,679例,女子8,889例の身体14部位の横断資料を用いて,12年前の資料及び U.S.A. 資料との比較から,現代日本人男女の成長特性を明かにすることを試みた.主な結果は以下のようである.
1.成熟過程を20歳値に対する各年齢の百分率でみると,男女ともに,長高径項目では,足長が上前腸骨棘高に先行し,上前腸骨棘高が袖丈に先行する.周径項目では,頭囲が胸囲と腰囲に先行する.また男子では,腰囲が胸囲に先行し,大腿最大囲が上腕最大囲に先行して成人値に達する.すなわち,身体の下方の部位が上方の部位に先行して成長する,頭部が体幹に先行して成長するという成長勾配が認められる.これらの関係は1966-'67年資料においても同様である.
2.年間成長量が最大となる年齢は,長高径4項目(身長•上前腸骨棘高•袖丈•背肩幅)では男子12~13歳,女子10~11歳である.男女ともに,足長ではその約1年前であり,周径5項目(胸囲•胴囲•腰囲•上腕最大囲•大腿最大囲)•体重では約1年後である.皮下脂肪厚の成長については,長高径4項目の成長速度が最大となる時期に成長速度が停滞する傾向を示す.
成人値に達するのは,長高径4項目では男子16,17歳頃,女子14,15歳頃であり,足長ではその約1年前,周径5項目•体重では約1年後,頭囲では約2,3年後である.ほぼ成人のからだつきに到達するのは,男子19歳,女子18歳である.
これらの各年齢は,男女ともに1966-'67年資料より若くなっている.このことは,女子の平均初潮年齢が12歳11ヵ月から12歳6ヵ月に,すなわち5ヵ月の早発化を示していることからも裏付けられる.
3.12年を隔てた1966-'67年資料との比較によると,この約10年間に,男女ともに,長高径項目及び胴囲では,全年齢にわたり身体の大型化が進行した.しかし,胸囲では減少傾向を示した.腰囲•体重•皮下脂肪厚は男子では増大傾向を,女子では減少または停滞傾向を示す.
4.身長•体重•皮下脂肪厚について U.S.A. 資料と比較すると,日本人は,3項目いずれも全年齢にわたりアメリカ人より劣る.年間成長量の最大値は,3項目で両国間に大きな差異はみられないが,思春期前の成長量や成長が停止するまでの期間には若干の差異があると思われる.
アメリカ人では高身長化と思春期成長の早発化は日本人ほど明瞭ではない.
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