Anthropological Science (Japanese Series)
Online ISSN : 1348-8813
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115 巻 , 1 号
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総説
  • 煎本 孝
    2007 年 115 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/07
    ジャーナル フリー
    北方文化とは北方地域独自にみられる生活様式―生態,社会,文化―であり,進化史的には新人(ホモ・サピエンス・サピエンス)の北方ユーラシアへの進出と北アメリカへの拡散にさかのぼり,現在に至るまで変化しながら継承,展開している北方地域文化の総体である。この定義に基づき,本稿では日本における北方研究の変遷と成果を,探検の時代(4世紀―19世紀中葉),学究の時代(1868年―1945年),世界の時代(1946年―2000年)について再検討した。その結果,北方研究の研究対象はアイヌ文化から広く北方ユーラシア,日本,北アメリカを含む北方周極地域諸文化へと展開し,研究方法も民族学・民俗学から自然と文化の人類学―自然誌―へと変遷し,さらに研究目的も日本人と日本文化の起源を明らかにすることから,「人間とは何か」という人類学の普遍的課題の解明へと変化してきたことが明らかにされた。最後に,北方研究が人類の普遍性の探究へと展開していることをふまえ,21世紀が人類学にとって人間性の時代となることが展望された。
原著論文
  • 静島 昭夫
    2007 年 115 巻 1 号 p. 15-23
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/07
    ジャーナル フリー
    本研究は鎌倉市由比ヶ浜中世集団墓地遺跡〈No. 372〉からの出土人骨について,上顎洞内面を観察して骨壁状態の病理形態学的分類を行い,さらに出現していた骨病変の頻度について分析を行ったものである。上顎骨の左右あわせて809個のうち,骨吸収,骨増殖など合わせて56.1%の上顎洞内の骨壁で骨病変が認められた。骨吸収を示す小窩が最も多く,次いで骨増殖を示す棘状のものが多かった。また残存するすべての骨壁の数2315面のうち,異常所見がある骨壁は全ての面を合わせて39.6%であり,最も頻度が高かったのは洞底面で57.0%であった。これらの骨病変のうち,重度の小窩は急性副鼻腔炎,骨増殖は慢性副鼻腔炎,孔は歯性上顎洞炎であると考えられ,急性および慢性副鼻腔炎は生活環境が影響するものと考えられるため,中世期に都市として発展した鎌倉の生活環境の一面を反映していると推測される。日本人の急性および慢性副鼻腔炎罹患者数は,様々な条件が重なって高頻度である,ということは耳鼻咽喉科領域でこれまでに述べられてきたが,中世日本人古人骨においても確認された。
  • 諸見里 恵一, 譜久嶺 忠彦, 土肥 直美, 埴原 恒彦, 西銘 章, 米田 穣, 石田 肇
    2007 年 115 巻 1 号 p. 25-36
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/07
    ジャーナル フリー
    17世紀から19世紀の農耕民であると考えられる,久米島近世人骨(男性56個体,女性45個体)の変形性脊椎関節症の評価を行った。変形性脊椎関節症の頻度は,男女ともに腰椎が最も高く,女性においては重度化を認めた。次に変形性脊椎関節症を認めた部位として,女性は頚椎で,男性は胸椎下部と,男女間で異なった傾向を示した。変形性脊椎関節症の部位別頻度では,椎体前縁部が後縁部に比べ顕著に高く,男性の胸腰椎では右側縁部が左側縁部より高い傾向を示した。関節突起に関しては頚椎が最も頻度が高く,胸腰椎では低い傾向を示した。また,男性は頚椎,胸椎上部の一部に,女性では第11および第12胸椎で頻度が高く性差を認めた。主成分分析の結果でも,頚椎および腰椎の変形性関節症の頻度が高く,腰椎では椎体前縁部と左右縁部に,頚椎では椎体後方と椎間関節に関節症の頻度が高い傾向を確認した。久米島近世人骨の女性は,頚椎の椎体後方に変形性関節症の頻度が男性と比較して高いことから,民俗学者らによって示唆されている,頭上運搬による体幹直立位での荷重の影響を受けたと思われる。
短報
  • 奥住 秀之, 國分 充, 島田 恭子
    2007 年 115 巻 1 号 p. 37-40
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/07
    ジャーナル フリー
    本研究では,3つの手指運動課題を小学生と成人に行ない,学童期における道具操作の発達的変化を検討した。評価の観点は課題遂行速度と正確性であった。被験者は,小学生1年生~6年生60名(各学年10名)と成人大学生10名である。なぞり書き課題,折り紙課題,シール貼り課題という3つの課題を行い,それぞれ課題遂行時間(運動速度)と正確性を求めた。結果は以下の通りである。(1)幼児期においては運動の正確性は速度よりも発達的に先行した。(2)折り紙課題は全課題の中で最も早く発達的画期を示し,シール貼り課題はなぞり書き課題よりも発達的画期が先行した。
シンポジウム特集記事
  • 松村 秋芳, 馬場 悠男
    2007 年 115 巻 1 号 p. 41-42
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/07
    ジャーナル フリー
  • 荒井 正春
    2007 年 115 巻 1 号 p. 42-46
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/07
    ジャーナル フリー
    義務教育課程における人類(ヒト)に関する学習は,「人類学」としての単元がないので,まとまった体系的な学習は行われていない。平成10年12月の中学校学習指導要領の改定で理科の授業時間が減少して内容から進化が消えたため,人類に関する学習は動物の学習や地学分野の化石の学習の中で発展的な内容として取り上げられている程度である。人類についての子どもの興味関心は高いが,分断的に学ぶしかない現状では教材化も十分進んでいるとは言えない。「どこで」「何を」「どのように」教えるのかが実践的な課題になる。近年,人類学に関する情報は以前よりも豊かになっている。テレビ番組や出版物も多く,さらにコンピュータソフト,標本なども手に入りやすくなった。それらを活用してダイナミックに楽しく人類の進化について教えたい。子どもたちは自分のことについて関心を持って学ぼうとしている。
  • 平田 泰紀
    2007 年 115 巻 1 号 p. 46-49
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/07
    ジャーナル フリー
    小中高校において人類学教育を行うにあたり,学校側の関心事はその教育的効果の如何である。そこで,予備知識の少ない中学・高校生向けに,人骨や獣骨を用いた実習プログラムを作成・実施したところ,知的好奇心を満たす,探究心を芽生えさせるなどの効果があることが認められた。また一般的な生物学の講義に,人類学的話題を織り込むことで,生徒たちの学習への意欲を高めることができた。これらのことから,人類学は中学・高校での理科教育にとって,すぐれたテーマになり得ると考えられる。
  • 藤枝 秀樹
    2007 年 115 巻 1 号 p. 49-52
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/07
    ジャーナル フリー
    高等学校理科では全般的に,自然人類学に関連した学習に割り当てられる時間は少ない。そこで,高等学校における人類学教育の現状について,どのような内容が扱われているか,教員の意識はどうかなどの視点から,香川県の高等学校生物教員を対象に,意識・実態調査を実施した。その結果,「生物教員の約半数が,授業で自然人類学の内容を扱っている」,「教員であっても,自然人類学の内容をよく知らない」,「教員の自然人類学についての意識は多様である」という実態が明らかになった。この調査結果は,日本人類学会として,今後,人類学教育にどのように寄与すべきか,その活動や方向性を検討する際の基礎資料になると考えられる。
  • 松村 秋芳
    2007 年 115 巻 1 号 p. 53-56
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/07
    ジャーナル フリー
    高校の各教科の教科書について自然人類学関連の記述を検討した。自然人類学関連分野の記述は,理科総合B,生物II,地理歴史などの各科目に分断されている。生物では自然人類学分野の中核をなす記述が,生物IIの「生物の分類と進化」の章の一部にある。これらの人類学に関する記述を繋げるような解説が追加され,それを生かした授業が行われることで,複合領域としての人類学が認識され,この分野への興味と理解を増幅できる可能性がある。学習指導要領は,生物IIにおいて,「生物の分類と進化」あるいは「生物の集団」(生態学)の章のいずれかを選択することができると定めている。この選択制は,多くの高校生からヒトを含む生物の進化について学習する機会を奪っている。高校教科書の内容は,今後に課題を残している。
  • 鳩貝 太郎
    2007 年 115 巻 1 号 p. 56-60
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/07/07
    ジャーナル フリー
    わが国では法的な根拠を持った学習指導要領が教科・科目の内容等を定め,それに沿った教科書が発行されている。現行の高等学校学習指導要領では理科は11科目からなり,それらから必要な科目を数科目選択することになっている。そのため,生物Iの履修率は約67%,生物IIは約18%である。現状では生物に関する基本的な内容を学ばないまま高等学校を卒業する生徒が少なくない。高校生の3分の2ほどが選択している生物Iの内容にはヒトの遺伝,変異,進化,生態に関する内容及び生命現象の仕組みを分子レベルで扱うことなども含まれていない。学習指導要領で生物の内容を充実させることと,生物の基礎・基本の定着を図る指導の充実が求められている。
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