Anthropological Science (Japanese Series)
Online ISSN : 1348-8813
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116 巻 , 2 号
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総説
原著論文
  • 久高 将臣, 譜久嶺 忠彦, 蔵元 秀一, 西銘 章, 石田 肇
    原稿種別: 原著論文
    2008 年 116 巻 2 号 p. 115-129
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/27
    ジャーナル フリー
    久米島近世成人人骨222個体396側を用い,踵骨の距骨関節面形状を4型(連続型・くびれ型・分離型・前関節面欠損型),距骨の踵骨関節面形状も4型(連続型・角型・溝型・前関節面欠損型)に分類し分析を行った。結果,男女とも左右踵骨の距骨関節面形状で有意に連関を認めた。成人踵骨の距骨関節面形状の出現頻度に左右差および年齢差は認めなかった。性差では男性のくびれ型の出現頻度が有意に高く,連続型の出現頻度が有意に低い値となった。踵骨の距骨関節面形状と距骨の関節面との連関は,連続型と連続型,くびれ型と角型,前関節面欠損型と前関節面欠損型と,3型でほぼ1対1の対応関係を示し,分離型は距骨の角型と溝型の2つの関節面形状に対応した。前・中距骨関節面計測値より,関節面長(AB)は,連続型と比較し,くびれ型が有意に長く,深さ(C)は,連続型と比較し分離型が有意に深い値を示した。深さ示数(C/AB)も同様に連続型と比較して,分離型が有意に高い結果となった。踵骨の距骨関節面の分離型出現頻度は,現代の中部九州および近世久米島集団が高い値を示し,現代の北陸集団および縄文時代の東北および北海道集団が,有意に低い値を示した。近世久米島では,足部の内返しおよび外返しの動きが必要な生活様式は少なかったと考えられ,分離型の踵骨関節面形状の出現頻度が高いのではないかと思われる。踵骨の距骨関節面の形状の機能的意義については,前・中距骨関節面の深さ示数が高い分離型の場合,踵骨の前・中距骨関節面の凹面と,距骨の前・中踵骨関節面の凸面が深くはまり込むことで,関節の安定性が増加すると考えられた。縄文時代から現代にかけて生業が変化し,足の可動域が不要になっていく過程で関節面形状も変化したと考えられた。
  • 中橋 孝博, 飯塚 勝
    原稿種別: 原著論文
    2008 年 116 巻 2 号 p. 131-143
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/27
    ジャーナル フリー
    北部九州において我が国でいち早く起きた縄文時代から弥生時代への変革は,どの様な人々がどの様なかたちで実現したのだろうか。日本人の起源問題とも関連する残された課題の一つであるこの疑問については,先に人骨形態と集団遺伝学的解析とを組みあわせた論考(中橋・飯塚,1998; Iizuka and Nakahashi, 2002)を発表しているが,その後,AMS炭素14年代測定によって弥生開始期の年代を500年程度遡らせるべきだという見解が発表され,これまでの弥生時代の年代観に大きな修正が加わる可能性が浮上した。そこで,従来は200~300年に想定した弥生時代早期から前期末までの年代幅を最大800年まで拡張して,改めてこの間の縄文系と渡来系の人々の人口変化について数理解析を行った。その結果,年代幅が長くなるにつれ,渡来系の人々にとってより緩やかな人口増加率でも弥生時代前期末までに縄文系の人々を圧倒するような人口比の逆転が可能であることが示された。
特集:台湾大学医学院収集人骨の人類学的総合研究
  • 土肥 直美, 廬 國賢
    原稿種別: 特集:台湾大学医学院収集人骨の人類学的総合研究
    2008 年 116 巻 2 号 p. 145-148
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/27
    ジャーナル フリー
  • 片山 一道, 土肥 直美
    原稿種別: 特集:台湾大学医学院収集人骨の人類学的総合研究
    2008 年 116 巻 2 号 p. 149-153
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/27
    ジャーナル フリー
    ポリネシア人の祖先となったと考えられるラピタ人など,オーストロネシア系オセアニア諸語グループが,そもそもは台湾あたりに出自したとする出台湾(Out of Taiwan)仮説,あるいは‘Express Train to Polynesia’(ETP)仮説は,言語学や考古学の分野で有力視されている。その仮説を人類学的方法で検証するための試論を展開した。台湾先史時代の墾丁寮人骨と,ラピタ人骨など,太平洋の先史時代人骨との間で頭骨形態を予備的に比較することにより,前者がラピタ人などの変異内に収まることを示した。今後,詳細な研究が期待できる。
  • 篠田 謙一
    原稿種別: 特集:台湾大学医学院収集人骨の人類学的総合研究
    2008 年 116 巻 2 号 p. 154-160
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/27
    ジャーナル フリー
    歴史時代と現代の台湾原住民の関係について考察する目的で,国立台湾大学が所蔵する台湾原住民ブヌン族の古人骨試料からDNAを抽出し,ミトコンドリアDNAの分析を行った。合計で34体分の肋骨サンプルを実験に用い,最終的に25体で塩基配列データを得た。全体で15のハプロタイプを区別したが,特定のハプロタイプが多数を占めると言うことはなく,多様性が保たれていることが判明した。次にハプログループ頻度を用いて現代の原住民8集団との系統関係を解析した。その結果,今回のサンプルは現代のブヌン集団に最も近縁であることが示され,少なくともブヌン族では歴史時代からの遺伝的な特徴が,そのまま保存されていることが証明された。また各集団の遺伝的な関係は,基本的には地理的な近縁関係を反映していることも明らかとなった。今回の研究は,これらのサンプルに解析できる量のDNAが保存されていることを明らかにし,博物館・大学に収蔵されている人骨試料が,現在では収集が困難になりつつある原住民のDNAサンプルの供給源としても大きな価値があることを証明した。
  • 米田 穣, 向井 人史, 蔡 錫圭
    原稿種別: 特集:台湾大学医学院収集人骨の人類学的総合研究
    2008 年 116 巻 2 号 p. 161-170
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/27
    ジャーナル フリー
    本研究では,国立台湾大学医学院体質人類学教室が収蔵する人骨コレクションに関する総合的研究の一環として,人骨中に残存するコラーゲンの炭素・窒素同位体比から,彼らが利用したタンパク質源を推定した。中央山地の高地に居住するブヌンの生業は,粟に特化した焼畑農耕と狩猟を主としたとされるが,骨コラーゲンの同位体比は陸上生態系およびC4植物の雑穀に依存した個体がある一方,窒素同位体比が比較的高い水産物に依存した可能性のある個体も検出されている。しかし,戦前の民俗調査では,ブヌンの漁撈活動は社によって大きく異なることが記されており,その意義についてはさらに議論が必要である。一方,台湾各地の先史時代遺跡から出土した古人骨では,非常に多様性に富んだ食生態が示された。海産物の利用やC4植物である粟などの雑穀の利用について,時代および地域間で大きな変動があったようだ。残念ながら,今回分析した古人骨資料は,帰属する文化層などの出土状況の記録が失われているので,今後放射性炭素などで,人骨の年代決定をすすめ,あわせて出土状況が明らかな古人骨資料のデータを積み重ねることで,台湾における食生態のダイナミックな変遷を明らかにできるだろう。
  • 中橋 孝博
    原稿種別: 特集:台湾大学医学院収集人骨の人類学的総合研究
    2008 年 116 巻 2 号 p. 171-175
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/27
    ジャーナル フリー
    台湾大学医学院所蔵の先史時代~近現代の人骨に見られた風習的抜歯痕を報告する。台湾南端に位置する墾丁寮遺跡出土の先史時代人骨17体の内,16体に上顎両側の犬歯と側切歯を主対象とする抜歯が認められた。また,台湾原住民のブヌンでは,観察した46体のうち,28体に,上顎両側の犬歯と側切歯を主対象とする抜歯が見られ,タイヤル族161体のうち,72体に,上顎両側の側切歯を主対象とした抜歯が確認された。
  • 土肥 直美, 竹中 正巳, 中橋 孝博, 蔡 錫圭
    原稿種別: 特集:台湾大学医学院収集人骨の人類学的総合研究
    2008 年 116 巻 2 号 p. 176-181
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/27
    ジャーナル フリー
シンポジウム特集
  • 松村 秋芳, 高山 博
    原稿種別: シンポジウム特集
    2008 年 116 巻 2 号 p. 183-184
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/27
    ジャーナル フリー
  • 馬場 悠男
    原稿種別: シンポジウム特集記事 総説
    2008 年 116 巻 2 号 p. 184-187
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/27
    ジャーナル フリー
    小中高の生徒たちは,ヒトの成長期間が長いのは多くを学習するためであることを具体的に認識してはいない。個体成長曲線で知られるように,幼児期に急速な脳の成長があり,思春期以降に性的成熟がある。身体全体は,児童期に長い成長遅滞があり,その間に教育効果が上がるようになっている。教育の要素をこのような成長パターンに当てはめてみると,脳成長と身体成長とのズレは知育のため,身体成長と性的成熟のズレは徳育のためである。この二つのズレを実際の教育・学習によって適切に充填しないと,まともな自己実現は出来ない。このように手間はかかるが最終的に優れた適応力を発揮するライフヒストリーこそ人間性の中核であり,それが人類進化の過程でいかに獲得されたかを普及させるのは,人類学研究者の責務であろう。
  • 田代 直幸
    原稿種別: シンポジウム特集記事 総説
    2008 年 116 巻 2 号 p. 187-190
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/27
    ジャーナル フリー
    教科書の作成は,学習指導要領及び学習指導要領解説に基づいて行われる。学習指導要領は,目標,内容,内容の取扱いの3つの部分から構成され,扱う内容やその内容の扱い方(程度)が示されている。学習指導要領解説は,学習指導要領の趣旨や内容の取扱いなどをもう少し具体的に示したものである。教科書会社が作成した申請図書は,執筆されている内容の範囲や程度,学問上の正確性などの観点から,教科用図書検定調査審議会による審議によって意見が付される。これらの意見に対して適切に修正を加えることで,申請図書は,教科書として認められることとなる。
  • 市石 博
    原稿種別: シンポジウム特集記事 総説
    2008 年 116 巻 2 号 p. 191-194
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/27
    ジャーナル フリー
    現在新しい学習指導要領の改訂作業が進んでいる。このようなときに,現行の学習指導要領の問題点を総括することは,次期学習指導要領を考えていく上で重要である。現行の指導要領においては,理科に当てる時数が少ないために「DNA」などを学ぶことなく終わったり,生物Iを履修してもその中に含まれない「進化」や「代謝」「生態」などは,生物IIを履修しないと学べない。かつて行われていた「生物IA」(ヒトの生物学)という科目は,ヒトを対象に総合的に見る幅広いカリキュラムであった。そのような科目が定着しなかったのは,そのアプローチが中途半端であったこと,入試において重要視されなかったことなどがあげられる。しかし,ヒトである自分自身を知ることは生徒の興味を引かせ,そこを入り口に生物の多様性・普遍性の意義を理解する上で重要である。またこの地球や生き物の歴史の中でのヒトの立ち位置を認識することが可能である。今後実施される学習指導要領においても,ヒトの生物学を進展させる意義は変わらない。そのためには,人類学の成果の教材化が不可欠である。
  • 宮本 俊彦
    原稿種別: シンポジウム特集記事 総説
    2008 年 116 巻 2 号 p. 194-198
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/27
    ジャーナル フリー
    アンケート調査により新潟県の中等教育段階の生徒が,生物学上の進化をどのように理解しているかについて調べた。その結果,「進化と変態を区別できていない」,「進化を進歩ととらえている」,といった事実が明らかになった。中等教育段階の生徒は生物学上の「進化」という現象を誤解しており,これが生物学理解の妨げになっているように思われる。このような誤った認識の改善を目的として,自然人類学の内容に基づいた進化に関する授業を行なった。事前事後に行ったアンケート調査から,授業によって進化の理解が進んだことがわかった。今回の試みにより,中等教育において自然人類学を扱う利点が存在することが確かめられた。
  • 平田 泰紀
    原稿種別: シンポジウム特集記事 総説
    2008 年 116 巻 2 号 p. 199-202
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/27
    ジャーナル フリー
    中学生・高校生に対し,形質人類学的テーマに関する実習授業を行った。授業後のアンケート調査の分析から,生徒たちそれぞれの発達に応じた興味関心を,高いレベルで抱かせることができたとわかった。生徒を惹きつけられる人類学は,高い教育的効果が期待でき,それゆえ学校側にニーズがあると考えられる。また中学校教員向けに実施した研修会を通して,学校において形質人類学を普及させるためには,標本類の充実と,教員への知識の伝授が重要であることが示唆された。
  • 松村 秋芳, 高山 博, 高橋 裕
    原稿種別: シンポジウム特集記事 総説
    2008 年 116 巻 2 号 p. 202-206
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/27
    ジャーナル フリー
    高等学校理科の検定済教科書における自然人類学に関連した記述(1952年以降)について調査した。これまでの学習指導要領の改訂の機会に学会の新しい情報がどの程度改訂版の教科書に盛り込まれてきたかについてしらべたところ,更新された記述内容は必ずしもその時代の新しい知見を反映していなかった。最近2回の学習指導要領の改訂では,霊長類としてのヒトという視点から基礎事項の記述が充実してきていることが見出された。人類の起源と進化について理解し,生物としてのヒトの本質を知るために,どのような教材が適切か,どの程度最新の知見を考慮すべきかは難しい問題だが,複合領域としての特性を生かした記載がなされるよう,配慮がなされる必要があると思われる。
  • 高山 博, 若林 美由紀
    原稿種別: シンポジウム特集記事 総説
    2008 年 116 巻 2 号 p. 207-210
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/27
    ジャーナル フリー
    世界史,日本史の高等学校教科書(山川出版社)の人類学分野の記載について年代別に文字数,図版数,用語などをしらべ,時代変化の概要を把握した。世界史の「人類の起源」に関する記述は,1999年以降著しく減少していた。内容も正確さに欠ける面が見られた。一方,日本史の「日本人の起源」については,量的に顕著な変化は認められなかったが,相対的に縄文時代と旧石器時代の記載が減少し,弥生時代の記載が増加する傾向が見いだされた。世界史と日本史の教科書を総合的に見た場合,「人類の起源」および「日本列島にいたる人類の歴史」に関する内容は,明らかな減少が認められた。日本人類学会から教科書会社や教員へ向けた,ガイドブック等による情報提供が必要である。
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