Anthropological Science (Japanese Series)
Online ISSN : 1348-8813
Print ISSN : 1344-3992
ISSN-L : 1344-3992
118 巻, 2 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
原著論文
  • 松村 博文, Hudson Mark J., 川村 健太郎, 柏 孝史
    原稿種別: 原著論文
    2010 年 118 巻 2 号 p. 69-82
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/21
    ジャーナル フリー
    北海道北部と東部のオホーツク文化期人の大腿骨計測値について,地域差を明らかにするとともに,同じ北海道内の縄文・続縄文人やアイヌとの比較もおこない,オホーツク人の集団的特性も明らかにした。また判別分析を用いることにより,これらの北海道内の集団がどの程度の正答率で帰属集団を判別できるかも検証した。モヨロ貝塚をはじめとする道東のオホーツク人については,大腿骨の全長や骨体上部径および頭頚部の大きさなどが顕著に異なり,道東オホーツク人はこれらに関する多くの項目で有意に大きいことが示された。一方,大岬や浜中遺跡などからなる道北オホーツク人は,全長や骨体径において道東オホーツク人よりも小さく,縄文・続縄文人やアイヌとは大きな差はみいだされなかった。オホーツク人の大腿骨の形態におけるこうした顕著な地域差は,従来の頭蓋形態の比較ではみられなかったものである。またこれら4集団の男性の大腿骨計測値を用いて判別分析をおこなったところ,道北,道東のいずれのオホーツク人も他の2集団とは90%以上の正答率で判別が可能であり,大腿骨全体の大きさだけでなく,骨体長に対する各部位の径などのプロポーションの相違も判別に寄与していることが明らかとなった。
  • 山田 博之
    原稿種別: 原著論文
    2010 年 118 巻 2 号 p. 83-96
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/21
    ジャーナル フリー
    第一大臼歯の先天性欠如が疑われる症例について,残存している大臼歯の形態ならびに大きさについて検討した。資料は男性5名,女性6名のパノラマX線写真,口腔内全顎石膏模型,アンケート調査である。第一大臼歯は大臼歯の中で最も早く萌出し,一般には6歳ころに萌出してくる。しかし,8歳から10歳ころになってはじめて大臼歯が萌出することがあり,その歯は,ほとんど例外なく退化的特徴をもつ。このような「退化的近心大臼歯」について系統発生学的,形態学的ならびに遺伝学的に調査を試みた。退化的近心大臼歯は近心傾斜しており,上顎では遠心舌側咬頭(hypocone)が退化して3咬頭性に,下顎では遠心咬頭(hypoconulid)が退化して4咬頭となり,第二大臼歯の退化した特徴をもつ形態になることが多い。X線写真の所見では3本すべての大臼歯が存在することはなく,1歯以上の大臼歯が先天性欠如したと考えられる。従来,大臼歯のうち最も早く萌出する歯を第一大臼歯とみなし,この歯が遅れて生える場合は第一大臼歯の萌出遅延とみなしてきた。しかし,これらの症例を詳細に検討した結果,第一大臼歯が先天性欠如し,第二大臼歯が早期に萌出したと考える方が理にかなっていることが分かった。退化的近心大臼歯の大きさは通常の第二大臼歯よりも大きく,これは,第一大臼歯の先天欠如による代償的現象として説明できる。
  • 水嶋 崇一郎, 諏訪 元, 平田 和明
    原稿種別: 原著論文
    2010 年 118 巻 2 号 p. 97-113
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/21
    ジャーナル フリー
    成人期縄文人の四肢骨骨幹部は現代日本人より断面が太く扁平であることが知られている。本研究では,胎生8ヶ月から生後3ヶ月にわたる縄文人と現代日本人の主要四肢骨を用いて,骨幹中央部の各種の断面特性値を群間比較することにより,従来指摘されてきた頑丈性と扁平性の成因について改めて考察した。資料は縄文人49個体,現代日本人185個体の上腕骨,橈骨,尺骨,大腿骨,脛骨,腓骨を用いた。内部断面計測では高精細のマイクロCT装置を導入した。解析においては各四肢骨の骨幹長を相対的な年齢指標とみなし,骨幹長を共変量とする共分散分析を実施した。その結果,全身の四肢骨にわたり,縄文人の骨幹は一貫して現代日本人より外径が太く,断面上の骨量が多く,力学的に頑丈な傾向にあり,さらには二集団の断面拡大パターンの間に有意な違いはないことがわかった。二集団の外部形状と骨分布形状は胎児・乳児期を通じてほとんど変化しておらず,大半の四肢骨の断面示数において有意な集団差は認められなかった。ただし,縄文人の大腿骨の外部形状は一貫して現代日本人より前後方向に扁平であることがわかった。本研究では,成人期縄文人で指摘されてきた骨幹部形質のうち,外径の太さ,骨量の多さ,さらに大腿骨骨体上部の相対的に前後径が短い(内外側方向に長い)扁平さに関しては,既に胎生期にそれらの傾向が存在し,発生初期におけるパターン形成の影響が示唆された。
シンポジウム報告
feedback
Top