Anthropological Science (Japanese Series)
Online ISSN : 1348-8813
Print ISSN : 1344-3992
ISSN-L : 1344-3992
早期公開論文
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  • 平野 力也, 海部 陽介
    原稿種別: 原著論文
    論文ID: 240220
    発行日: 2024年
    [早期公開] 公開日: 2024/04/04
    ジャーナル 認証あり 早期公開

    羽島貝塚は岡山県倉敷市に所在する縄文時代前期の貝塚である。当遺跡から1920年に発掘された頭骨1点には左前頭部に楕円形の孔があるが,それは先行研究で非人為的と報告されていた。この損傷について,肉眼およびCT画像を用いて法医人類学的観点から検討したところ,それは典型的な人為損傷の特徴を示し,形態的に「刺器損傷」に分類すべきものであることがわかった。さらに東京大学総合研究博物館所蔵資料の中で,人為損傷が報告されている頭骨3例に対しても同様に再検討を行い,法医人類学で用いられる鈍器損傷,刺器損傷,鋭器損傷の3つに分類した。そのうち2例のいくつかの孔は刺器損傷に相当すると判断された。このような損傷を生じた利器としては,これまで論じられてきた槍や矢だけでなく,近接武器としての鹿角や骨角器の可能性を検討すべきであろう。これらの損傷の性状を吟味しながら,意図的暴力や儀礼的遺体損壊を含む,損傷の背景について考察した。

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