人の不良姿勢の原因の一つとして,身体の大きさに椅子の高さが適合しないことが挙げられる。これまで椅子の座面の高さの決定には,身長や下腿長が用いられてきた。先行研究では,チャート法を用いて現代日本人青年の身体プロポーションの変化を調査したところ,現在の男女のプロポーションには胴長化(座高の増加と下肢長の減少)が見られると報告されている。本研究の目的は,健常な成人を対象に身長および下腿長の関連性を明らかにし,椅子の座面の高さを決める際の基礎的資料を得ることである。東京およびその近郊に在住する健常成人196名(男性85名,女性111名,平均年齢:59.0 ± 14.2歳)を対象とした。身長は身長計を用いて計測し,下腿長(脛骨上縁高)はアントロポメーターを用いたMartin法により計測した。男性は身長と下腿長の間に強い正の相関関係(r = 0.795, p < 0.001)を示した。また,女性は身長と下腿長の間に中程度の正の相関関係(r = 0.664, p < 0.001)を示した。男女ともに身長と下腿長の間に正の相関関係を認めたことから,各個人が適合した椅子を選択する際の基準として,身長と下腿長を用いることができる可能性が示唆された。
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