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酒井 美そら, 高橋 義典
2025 年5 巻6 号 論文ID: SC-2025-37
発行日: 2025/11/02
公開日: 2026/01/30
研究報告書・技術報告書
認証あり
本稿では,環境騒音マスキングを目的とした背景音楽の自動生成手法を提案する.騒音の周波数帯域毎のエネルギー分布および包絡線変調度を特徴量として抽出し,フレーム単位で特徴量の近い音楽フレーズをライブラリから選択し背景音楽を生成するアルゴリズムを構築した.騒音の音響的な特徴を合わせることで,騒音が音楽の一部として聴こえ騒音がマスクされる効果が期待できる.本研究では,着目する騒音の特徴への重みづけとして,エネルギー分布のみ,包絡線変調度のみ,両者併用の3種類について検討し,試聴実験を実施した.試聴実験では騒音の特徴量に着目した3種類の重みづけによる生成音楽に加え,音楽フレーズをランダムに選択した手法を加えた4種類の手法により各背景音楽を生成した.生成された背景音楽と対象とした環境騒音を同時に再生し,印象評価実験を実施した.その結果,音楽を付加することで全体として不快感が軽減され,騒音の種類によっては,集中しやすく,音楽的と知覚されることが確認された.
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磯山 拓都, 鵜木 祐史
2025 年5 巻6 号 論文ID: SC-2025-38
発行日: 2025/11/02
公開日: 2026/01/30
研究報告書・技術報告書
認証あり
本稿では,製品音や環境音の印象操作に資する基礎知見を得るため,スペクトル時間変調(STM)と音質評価指標(SQMs)の対応関係を体系的に明らかにすることを目的とした.まず,ガンマトーン聴覚フィルタバンクと包絡抽出,二次元フーリエ変換によりSTMスペクトルを算出した.次に,同一データでSQMs(ラウドネス,シャープネス,ラフネス,変動強度)を評価した.最後に,部分的最小二乗回帰とブートストラップ再標本化で,STMスペクトル(SM:cycle/ERB,TM:Hz)上の寄与度を評価した.その結果,シャープネスはSM=0cycle/ERB・TM=0Hz近傍に寄与度が集中し,ラフネスはSM=0∼0.08cycle/ERBかつTM=0∼100Hzの広帯域振幅変調成分と整合的な領域に,変動強度はSM=0∼0.1cycle/ERBかつTM=0∼5Hzの低変調周波帯域に明瞭な寄与度が確認された.一方,ラウドネスは入力信号を8soneに固定した条件下では顕著な寄与度を示さなかった.以上より,どのSTMスペクトルの領域が各SQMにとって重要かが明らかになった.
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河原 英紀, 程島 奈緒, 水町 光徳, 榊原 健一
2025 年5 巻6 号 論文ID: SC-2025-39
発行日: 2025/11/02
公開日: 2026/01/30
研究報告書・技術報告書
認証あり
急速に普及しつつある大規模言語モデルに基づくマルチモーダルAIを利用して,音声コミュニケーション研究用の実時間Webアプリケーションを設計し開発する可能性について議論する。ここでは著者らが開発してきた研究支援ツール類から,実時間のインパルス応答畳込みと環境/妨害音との混合機能を有するツールをWebアプリケーションとして開発する例を紹介する。研究会では実装したWebアプリケーションを体験していただくとともに,どのようにマルチモーダルAIを利用するか紹介し議論したい。なお,紹介したアプリケーションとその元となったMATLABアプリケーションを筆頭著者のGitHubリポジトリで公開している。
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大浦 杏奈, 菊池 浩史, 菊池 英明
2025 年5 巻6 号 論文ID: SC-2025-40
発行日: 2025/11/02
公開日: 2026/01/30
研究報告書・技術報告書
認証あり
調音運動の可視化は,聴覚情報だけでは発音習得が困難な第二言語学習者や聴覚障害者にとって有効な補助手段になり得る.そこで本稿では,音声信号からreal-timeMRI(rtMRI)調音運動動画を推定するAcoustic-toarticulatoryinversion(AAI)モデルを用いて,推定rtMRI動画の提示が,舌位置を制御する発音練習課題の達成度に与える影響を検討した.実験では20代の実験参加者10名を,推定rtMRI動画提示群(EXP)と非提示群(CTR)に割り当てた.舌位置の指示方向への一致度を,音声フォルマント解析によって評価した.その結果,EXPはCTRと比べ,指示方向に舌を動かせている傾向が確認できた.以上より,現状の推定精度においても,本AAIモデルにおける発音練習への応用可能性が示唆された.
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山下 典子, 菊池 浩史, 菊池 英明
2025 年5 巻6 号 論文ID: SC-2025-41
発行日: 2025/11/02
公開日: 2026/01/30
研究報告書・技術報告書
認証あり
ボイストレーニングの現場では経験則に依存しない量的エビデンスに基づいた指導方法の確立が望まれている。本研究ではプレゼンテーションにおいてF0高低差により文頭にプロミネンスを実現する話し方を指導すると聞き手の関心が高められるかを検証した。文頭プロミネンスを実現させる方法は複数あるが、本研究では、文頭1拍目と2拍目のF0に高低差をつけることだけに注目した。F0高低差の違いによる効果をみるため他の要因を統制した音声刺激を作成し聴取評価実験を行った。文頭プロミネンスあり音声となし音声の関心評価を比較した結果、文頭プロミネンスが聞き手関心評価を高めることが示唆された。本稿では効果的であった指導方法を整理する。
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道本 智揮, 橋澤 ( 吉野 ) 寿紀, 新家 ( 田中 ) 一樹, 小林 耕太, 飛龍 志津子
2025 年5 巻6 号 論文ID: SC-2025-42
発行日: 2025/11/02
公開日: 2026/01/30
研究報告書・技術報告書
認証あり
コウモリは小型でありながら長寿の動物として知られており,環境把握には超音波を利用したエコーロケーションを行う.聴覚は環境要因に影響を受けやすいため,長期間にわたり聴覚に依存するコウモリは独自の耐性を発達させている可能性がある.そこで本研究では,環境要因として加齢と幼少期の慢性的ストレスに注目し,アブラコウモリ(Pipistrellusabramus)を用いて異なる年齢および幼少期のストレス背景を持つ個体間で聴覚機能を比較した.なお,幼少期にストレスを負荷する手法として,齧歯類で用いられている母仔分離を実施した.聴覚機能の評価には聴性脳幹反応を用い,音刺激に対する下丘での誘発電位を平均化することで記録した.また,聴性脳幹反応の結果に基づき聴覚閾値を算出し,群間で比較したところ,老齢群と母仔分離群の一部では閾値の上昇や反応遅延が見られた.この結果は,加齢による蝸牛有毛細胞の損傷や母仔分離による蝸牛の発達不足が関連している可能性があり,アブラコウモリにおいても環境要因が聴覚に影響を与えることを示唆している.
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木下 夢, 西堀 諒, 中川 喜嵩, 松本 直樹, 安田 亮太, 片山 瑞月, 新家 一樹, 伊藤 優樹, 小林 耕太
2025 年5 巻6 号 論文ID: SC-2025-43
発行日: 2025/11/02
公開日: 2026/01/30
研究報告書・技術報告書
認証あり
多くの哺乳類において,発達初期の母子間コミュニケーションは幼獣による音声発声を介した母親への信号送出と,それに対する母親の養育行動によって構成される.幼獣の音声がコミュニケーションにおいて果たす役割については解明が進んでいる一方で,養育行動の多寡が母子間コミュニケーションに及ぼす影響については、十分に明らかにされていない.本研究では,養育行動の制限が母子間コミュニケーションに与える影響を明らかにすることを目的とし,スナネズミを用いて一定期間幼獣と母獣を分離する母子分離操作を行った.実験1では,生後7日目から8日目にかけて24時間分離した母子分離群と対照群の5分間の発声回数,音響特徴,体温,行動を記録した.その結果、発育初期における養育の不足は音声の周波数構造に影響を与え,幼獣音声の特徴である周波数変調を平板化させることが分かった。さらに実験2では変化した音声が母獣の養育行動の誘発に与える影響を調べるために,音声の周波数構造に最も違いが生じた生後10日目の母子分離群と対照群の録音音声を母獣に提示し,音源に接近する行動を観察した.音源の選択割合は対照群の音源提示時には88%だったのに対し,母子分離群では62%に低下した。これにより,発育初期の養育不足は幼獣発声の周波数特徴を平板化させ,その音声を聴取した母獣は養育行動を誘発しにくい可能性が示された.
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山内 等矢, 中川原 光洋, 水町 光徳
2025 年5 巻6 号 論文ID: SC-2025-44
発行日: 2025/11/02
公開日: 2026/01/30
研究報告書・技術報告書
認証あり
近年の高齢化により、今後は高齢者向けの音響機器の需要がさらに高まると予想される。本研究では、高齢者が使用する音響機器において、聴覚特性に基づいた音源加工を通じて省電力化を図り、その音質への影響を調査する。先行研究では、聴覚特性を模擬可能なガンマチャープフィルタを用いた音源加工により、省電力化の可能性が示されているが、加齢による聴覚変化を十分に反映できていなかった。 本研究では、WHIS(模擬難聴システム)とガンマチャープフィルタを組み合わせて年代別の聴覚モデルを構築し、 60代、70代、80代の聴覚特性に応じた音源加工を行うことで、さらなる省電力化を目指した。
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野元 勇吾, 中川原 光洋, 水町 光徳
2025 年5 巻6 号 論文ID: SC-2025-45
発行日: 2025/11/02
公開日: 2026/01/30
研究報告書・技術報告書
認証あり
フィルタは一般に周波数領域において信号の帯域を制限するために用いられる。音に対しては情報量の圧縮や加工を行うために,不要な高域成分を除去するローパスフィルタが使われており,フィルタのタップ長が長くなるほど群遅延が増加し,時間特性に影響を与えることが知られている。一方,人間の聴覚系は数ミリ秒単位の時間分解能を有し,特に音の立ち上がりや瞬時的な変化は音色や明瞭度の知覚に強く関与することが知られている。本研究では,カットオフ周波数を20kHzに固定し,タップ長のみを変化させた音源を作成することで,タップ長の違いが音の知覚的差異に与える影響を評価した。これにより,フィルタの時間特性が聴覚印象に与える影響の理解を深めることを目的とする。
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福井 康真, 置田 響希, 寳﨑 大悟, 近藤 洋史
2025 年5 巻6 号 論文ID: SC-2025-46
発行日: 2025/11/02
公開日: 2026/01/30
研究報告書・技術報告書
認証あり
本研究は,音嫌悪症のトリガーとして代表的な咀嚼音に着目し,快・不快の心理評定と音響特徴量の関連を探索的に検討したものである。本研究では,24名の参加者に咀嚼音を提示し,快・中立・不快の3段階で連続評定を求め,刺激音から音響特徴量を算出した。その結果,心理評定と音響特徴の間には体系的な関連性が認められた。不快感情は音の変動性やリズム的特徴の多さによって緩和され,音圧や顕著性,あるいは過度な周期性によって強められる可能性が示唆された。さらに因子分析により,中音域エネルギー・スペクトル形状を表す第1因子,時間的規則性・主観評定に関する第2因子,変調特性およびピッチの顕著性を表す第3因子が抽出され,心理評定に関与する音響的次元が存在することが示された。
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長崎 光倫, 小林 耕太, 玉井 湧太
2025 年5 巻6 号 論文ID: SC-2025-47
発行日: 2025/11/02
公開日: 2026/01/30
研究報告書・技術報告書
認証あり
感音性難聴者の聴覚再建方法のひとつに人工内耳の装着が挙げられる.しかし,従来の人工内耳の装着には蝸牛へ直接電極を埋め込むため侵襲性の高い外科手術が必要である.そこで私たちは,赤外光レーザーを蝸牛神経へ照射することで聴神経応答を誘発させる点に着目し,生体の組織外から神経刺激可能な侵襲性の高い手術なしに装着できる赤外光レーザー人工内耳の開発を目指している.本実験では赤外光レーザー刺激が生み出す音の長さ知覚を評価することを目的に,赤外光レーザー刺激を提示した際に刺激の始まりのオンセットと音の時間知覚に必要とされる刺激の終わりのオフセットに反応があるかを計測した.その結果,オンセット・オフセット反応が見られたため,赤外光レーザー刺激を提示した際の音の長さを知覚できる可能性が示唆された.
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鈴木 雅子, 木谷 俊介
2025 年5 巻6 号 論文ID: SC-2025-48
発行日: 2025/11/02
公開日: 2026/01/30
研究報告書・技術報告書
認証あり
音楽が人の感情にどのように影響を与えているかを理解するためには,楽曲聴取によるヒトの感情が変化する情報処理過程を正確に捉える必要がある.一方で,そのために重要な和音の物理性質,心理指標,生理指標の三つを結びつけた関係性が明らかになっていない.そこで本研究では心理指標と生理指標から楽曲聴取時の感情遷移に関わる和音の物理性質を明らかにすることを目的とする.和音の物理性質である基本周波数,周波数スペクトル上のパワー,協和度・不協和度を操作した刺激を用い,聴取実験,心理評価,生体情報の取得を行った.その結果,聴取前後の各心理指標,生理指標に有意な変化はみられず,心理指標,生理指標間の相関も弱い水準にとどまった.
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長尾 宙昭, 桂木 洋光
2025 年5 巻6 号 論文ID: SC-2025-49
発行日: 2025/11/02
公開日: 2026/01/30
研究報告書・技術報告書
認証あり
蝸牛コルチ器は空気中から伝わった振動を電気的な神経信号に変換する重要な器官であり、ダイテルス細胞はコルチ器の構造を支える支持細胞として知られている。この細胞には本体とは別に、細長く特異な斜め構造を有する、指節突起と呼ばれるパーツがある。本研究ではコルチ器の部分的な構造を再現した3DCADモデルを作成し、指節突起にあたる部分の構造を様々に変えて有限要素法解析を行うことで、斜め構造の役割を明らかにすることを試みた。結果、この斜め構造が蝸牛の聴覚センサとしての感度と周波数分解能の両側面の機能を向上させている可能性があることが分かった。
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清水 圭吾, 村越 道生, 杉本 寿史, 小澤 賢司, 鳥谷 輝樹
2025 年5 巻6 号 論文ID: SC-2025-50
発行日: 2025/11/02
公開日: 2026/01/30
研究報告書・技術報告書
認証あり
筆者らは,耳小骨固着・離断などの中耳疾患の非侵襲・簡便な判別を目指し,ティンパノメトリに代わる中耳機能計測法として周波数掃引インピーダンス(SFI)メータの開発を進めている.しかし,SFIメータで音響的に得られる2種類の特徴量(RF・∆SPL)のみでは,正常耳と固着耳の正確な判別は困難であった.本研究では,SFIメータに外耳道内静圧掃引機能を加えた3D-SFIを用いて正常・固着・離断耳の計測を行い,静圧掃引下でのRF・∆SPLの変化が中耳疾患判別に向けた有効な特徴量となるかを検討した.その結果,静圧変化に伴う∆SPLの変動量が,正常・固着・離断耳の3群間で有意に異なり,静圧掃引下のSFI計測で得られる特徴量が中耳疾患の高精度な判別に繋がる可能性が示唆された.
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松永 拓真, 髙橋 克匡, 伊藤 哲史
2025 年5 巻6 号 論文ID: SC-2025-51
発行日: 2025/11/02
公開日: 2026/01/30
研究報告書・技術報告書
認証あり
聴覚情報は情動的変化を誘発し,情動に関与する前脳基底部のドパミン動態に影響することが示唆されている.しかし,このドパミン動態について,より基本的な聴覚情報に対する応答性はよくわかっていない.また,マウスがコミュニケーションを行うために用いる超音波発声(ultrasonicvocalizations,USVs)について,多くのUSVsはその情動価が不明なままである.そこで本研究では,マウスの側坐核におけるドパミン濃度変化を計測しながら各種音刺激を提示することで,聴覚情報に対する応答性や情動的意味について検証した.ノイズ音や純音などの人工音に対するドパミン動態を計測したところ,人工音に対してドパミン濃度は低下し,ノイズ音の音圧レベルや純音の周波数を変化させて提示することで,より大きな音に対してドパミン濃度は大きく低下した.また,USVsに対する側坐核内のドパミン動態を計測したところ,USVsの種類や側坐核のサブ領域によって差異が見られた.これらの結果から,マウスの前脳基底部におけるドパミンが音刺激ごとに異なる動態を示すことがわかった.情動についてさらに議論するためには,音刺激に対するその他の情動に関わる領域の活動や行動実験を用いた嗜好性の検証が必要である.
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-ストループ効果を利用した課題による実験的検討-
伊藝 雄太郎, 程島 奈緒
2025 年5 巻6 号 論文ID: SC-2025-52
発行日: 2025/11/02
公開日: 2026/01/30
研究報告書・技術報告書
認証あり
本研究では,作業時に提示されるメトロノーム音が作業効率および心理的状態に及ぼす影響について検討した.被験者7名に対し,無音条件(α1,α2)およびメトロノーム音提示条件(β1,β2)の4条件でストループ課題を実施させ,各条件下における回答数,誤答数,および作業時間間隔を測定した.その結果,作業効率に関して有意差は認められなかったが,メトロノームを初めて聴取した条件β1では作業効率が低下し,2回目の聴取条件β2では改善する傾向がみられた.また,作業時間間隔の分散と作業効率との間に強い負の相関が認められ,反応リズムの安定性が作業効率に寄与する可能性が示唆された.さらに,アンケート結果からは,音刺激が集中を妨げると感じた被験者が4名いた一方で,慣れによりその影響が軽減されることが示された.これらの結果から,メトロノームによる音刺激の効果は一様ではなく,被験者の慣れや心理的状態に依存して変化することが明らかとなった.
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野上田 一兵, 藤平 晴奈, 森 周司, Wong Willy
2025 年5 巻6 号 論文ID: SC-2025-54
発行日: 2025/11/02
公開日: 2026/01/30
研究報告書・技術報告書
認証あり
本研究では、ラウドネスの大小比較法を用いて、1000Hzを基準にした心理関数の測定を行った。250Hzおよび4000Hzの純音に対して、30フォンおよび70フォン条件下で測定を行い、提示はヘッドホンを用いて実施した。参加者数は限られていたものの、実験参加者間の個人差は大きく、条件による心理関数の形状には大きな違いは見られなかった。このことは、等ラウドネス曲線の決定において、ベイズ型適応法と併用可能な単一の尤度関数を用いるアプローチが有効である可能性を示唆している。さらに、30フォン条件では低周波音(250Hz)において明確な上乗せが見られ、70フォン条件ではこの差が縮小した。これは、聴取レベルの上昇に伴い等ラウドネス輪郭が平坦化するという既存の知見と一致する結果である。
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矢尾 遼太, 長谷川 勘太, 前川 隼人, 青木 耀大, 土屋 隆生, 山田 恭史, 飛龍 志津子
2025 年5 巻6 号 論文ID: SC-2025-55
発行日: 2025/11/02
公開日: 2026/01/30
研究報告書・技術報告書
認証あり
コウモリは,超音波を放射しその反響音を聴くことで周囲の環境を把握するエコーロケーションを行う.コウモリの音響的視線であるパルス放射方向は,飛行中の空間的な注意方向を示す重要な指標であり,複数飛行中の放射方向を計測することで,混信や衝突の回避戦略の解明につながると考える.そこで,本研究ではユビナガコウモリを対象とし,ペア飛行中の個々のコウモリが放射するパルス放射方向の計測システムの構築を行った.さらに,計測した単独・ペア飛行中のパルス放射回数,パルス放射方向を分析したところ,後方個体が前方個体を追跡飛行する際には,互いのセンシング情報を相補的に取得している可能性が考察された.
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谷口 翼, 森川 大輔, 岡崎 聡, モクタリ パーハム
2025 年5 巻6 号 論文ID: SC-2025-56
発行日: 2025/11/02
公開日: 2026/01/30
研究報告書・技術報告書
認証あり
本稿では、動的バイノーラル収録音における頭部形状の違いが音像の距離知覚に与える影響を明らかにするために、3種類の異なる形状のダミーヘッドを用いて音像の距離知覚実験を行った(実験1)。その結果、頭部静止条件では音圧レベルが高ければ近い距離に、低ければ遠い距離に音像を知覚する傾向があり、頭部運動条件では、音源が遠いほど音像も遠く知覚する傾向が見られたものの、ダミーヘッドの形状による違いは認められなかった。また、受聴者の学習の影響を確認するため、実頭受聴での再実験を行い(実験2)、動的バイノーラル収録音の実験による学習の影響を受ける前に行った実頭受聴での実験結果と比較した。その結果、頭部静止条件では学習の影響が見られたが、頭部運動条件では頭部静止条件よりも学習の影響は小さくなった。したがって、学習の影響よりも頭部運動の影響が大きいと考えられる。
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Xiajie Zhou, Candy Olivia Mawalim, Masashi Unoki
2025 年5 巻6 号 論文ID: SC-2025-57
発行日: 2025/11/02
公開日: 2026/01/30
研究報告書・技術報告書
認証あり
Hearing loss induces deficits in frequency and temporal resolution that reduce speech intelligibility. However, the auditory cortex integrates frequency and time through spectro-temporal patterns, which can be modeled using spectro-temporal modulation (STM) analysis. We develop an intrusive speech intelligibility prediction model based on STM analysis that simulates auditory deficits and improves prediction accuracy for hearing-impaired listeners. Evaluations on the Clarity Prediction Challenge (CPC3) corpus demonstrate that the proposed method outperforms the baseline Hearing-Aid Speech Perception Index (HASPI), achieving a 7.0% reduction in root mean squared error (RMSE). These results show that STM-based auditory modeling improves prediction accuracyfor hearing-impaired listeners.
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清水 美聖, 上江洲 安史, 鵜木 祐史
2025 年5 巻6 号 論文ID: SC-2025-58
発行日: 2025/11/02
公開日: 2026/01/30
研究報告書・技術報告書
認証あり
緊急時には明瞭な発話での情報伝達が求められる . 特に聞き取りにくい子音を強調して生成することが重 要である . 子音部分のパワーを抑圧した聴覚フィードバックをかければ , 補償応答として子音が強調された発話が生 成されることが予測できる . そこで , 本研究では , 日本語無声歯擦音 /s, C/ を対象に , 子音抑圧聴覚フィードバック (consonant-suppressed auditory feedback: SAF) が発話に与える影響について検討した . 成人日本語母語話者 5 名を 対象に , 通常聴覚フィードバック (NAF) と SAF で /asa, aCa/ の読み上げを行った . 発話の音声波形の振幅実効値 (RMS), 歯 擦 音 の ス ペ ク ト ル 重 心 ( CoG), 発話時間長の変化を調査した . その結果 , いずれの音素においても RMS 振幅と時間長は増加する傾向が ,CoG は低下する傾向がみられた . これにより ,SAF によって発話変化が生じること が確認できた . 本研究の結果から ,SAF が音声明瞭度を向上させる可能性が示唆された .
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牧野 哲平, 上江洲 安史, 木谷 俊介, 鵜木 祐史
2025 年5 巻6 号 論文ID: SC-2025-59
発行日: 2025/11/02
公開日: 2026/01/30
研究報告書・技術報告書
認証あり
聴覚代行は,聴覚機能を他の感覚器で補う技術である.従来の触覚による聴覚代行は,点字やタクタイルボコーダのように,言語情報の伝達には有効であるが,感情や緊迫感といった非言語情報を伝えることは困難である.本稿では,触覚による音声の感情認識の実現可能性について検討した.5つの提示部位(人差し指,手のひら,前腕,上腕,頬)における触覚閾値を測定し,得られた結果に基づいて実験参加者への刺激強度レベル(感覚レベル)を設定した.実験参加者には,5種類(Neutral,Joy,Coldanger,Sadness,Hotanger)の感情音声を触覚刺激として5つの部位に提示し,知覚した感情を5つの感情から強制選択させた.その結果,頬で触覚提示したときに高い精度で感情を正確に判断でき,それ以外の触覚提示では正しく判断できないことがわかった.頬での触覚提示の場合,骨導音知覚の影響も考えられるため,骨導音の影響を排除した条件下での再検証が今後の課題となる.
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高野 佐代子, 長塚 全, 土田 義郎
2025 年5 巻6 号 論文ID: SC-2025-60
発行日: 2025/11/02
公開日: 2026/01/30
研究報告書・技術報告書
認証あり
近年,機械学習・深層学習の進展により音声認識や話者認識が高精度化している.我々は認識結果やスコアを学習者へのフィードバックとして利用し、発話トレーニングに役立てる方法を模索している.本研究では,話者認識や声質モデルの出力を即時に提示する音声トレーニング支援システムを構築し,声優の演じ分け訓練および避難呼びかけ改善への応用を試みた.その結果,危機感のように評価基準が明確なタスクでは改善効果が得られた一方,キャラクター性のような高次表現では解釈の多様性により改善が困難であった.今後は音響特徴の提示だけでなく,人間が理解し行動に結びつけやすいフィードバック設計が重要である.
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長野 瑞生, 井島 勇祐, 廣谷 定男
2025 年5 巻6 号 論文ID: SC-2025-61
発行日: 2025/11/02
公開日: 2026/01/30
研究報告書・技術報告書
認証あり
音声は聴取者の行動に影響を及ぼすことが知られている.我々は以前,聴取者自身の感情を媒介とする Stimulus-Organism-Response(SOR)理論が,宣伝音声が購買意欲に及ぼす影響を説明できることを明らかにした.本研究では音声印象が購買意欲に及ぼす影響を検証することを目的とした.宣伝音声を聴取し,購買意欲,知覚された感情,音声印象を評価する大規模な主観評価実験を実施した.媒介分析の結果,音声印象は感情と同程度に宣伝音声が購買意欲に及ぼす影響を説明出来ることが分かった.また快感情や声の明るさ,温かさの媒介効果は,話者と聴取者の属性(年齢・性別)が近いほど強くなることが示された.
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岡本 雅弘, 森 幹男
2025 年5 巻6 号 論文ID: SC-2025-62
発行日: 2025/11/02
公開日: 2026/01/30
研究報告書・技術報告書
認証あり
口笛の教則本などには口笛の吹き方についての論理的で明解な記述は少なく,口笛音楽教室においても経験に基づく指導が試行錯誤で行われている.このことから,口笛の発音原理の解明が口笛音楽教室の指導者や生徒から期待されている.しかし,口笛吹鳴の状態を定量的に確認するためには,声道形状を定量的に細かく調整した上で固定し,呼気量を計測・コントロールする必要があり,実際の口笛吹鳴に対する計測は困難である.そこで本研究グループでは,口笛吹鳴時の声道のMRI撮影データを基に口笛声道模型を作成し,口笛声道模型を用いての実験を行っている.本報告ではプロ口笛奏者に対して行った口笛吹鳴時のMRI撮影データ,及びMRI撮影データを用いて作成した口笛声道模型について述べる.
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長谷川 英之, 大村 眞朗, 長岡 亮, 斎藤 こずえ
2025 年5 巻6 号 論文ID: SC-2025-63
発行日: 2025/11/02
公開日: 2026/01/30
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臨床における超音波による血流速度計測には,パルスドプラ法およびカラードプラ法が主に用いられている。周知のとおり,ドプラ法で得られる流速は超音波の伝搬方向(すなわちビーム方向)成分である。したがって,流速を定量的に求める際には,パルスドプラ法において血流方向と超音波ビーム方向のなす角度を同時に計測し,ビーム方向成分に角度補正を施して真の流速を推定するのが一般的である。この角度計測は現在でも手動で行われることが多い。このような問題を解決するため,角度補正を必要としない血流速度計測法が検討されてきた。これらの手法は大きく二つに分類される。すなわち,(1)血液からの散乱波の時間変化をスペックルトラッキング法により追跡して流速ベクトルを推定する方法と,(2)複数方向からの超音波ビームによるビーム方向速度を組み合わせて流速ベクトルを求める方法である。本報告では後者の手法について述べる。本手法では,ビーム方向速度の推定にカラードプラ法で用いられる自己相関法を適用し,血球からの多数の散乱波の干渉の影響を低減することで,流速ベクトル推定の精度を向上させている。本法は,平面波送信を用いた超高速超音波イメージングのみならず,集束送信ビームを用いた従来型の送受信シーケンスにも適用可能である。本手法により角度補正を必要とせずに流速ベクトルを推定できる点に特徴がある。
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小松 達也
2025 年5 巻6 号 論文ID: SC-2025-64
発行日: 2025/11/02
公開日: 2026/01/30
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