Academic Technology Assessment Group (ATAG) Reports
Online ISSN : 2759-6478
3 巻, 3 号
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  • 柏 宗伸, 此村 恵子, 森脇 健介, 小嶋 智美, 前田 知美, 白岩 健, 下妻 晃二郎, 福田 敬
    2025 年3 巻3 号 p. 1-61
    発行日: 2025年
    公開日: 2026/09/11
    研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

    公的分析は、エプコリタマブの製造販売業者(ジェンマブ株式会社)より提出された、抗CD20モノクローナル抗体製剤を含む少なくとも2つの標準的な治療が無効又は治療後に再発した、大細胞型B細胞リンパ腫又は濾胞性リンパ腫に対するエプコリタマブの追加的有用性および費用対効果に関する報告についてレビューを行った。本報告書ではその結果を要約している。

    追加的有用性の評価に際して、製造販売業者は主にEPCORE NHL-1試験の個別患者データとSCHOLAR-1試験の集計データを用いたMAIC(Matching-Adjusted Indirect Comparison)による分析結果を参照した。製造販売業者は、救援化学療法に対するエプコリタマブのOSハザード比が統計学的に有意に死亡リスクを低下することが示されたことから、エプコリタマブの追加的有用性を主張した。公的分析は、この結果に基づき製造販売業者による追加的有用性の主張を受け入れたが、アンカーなしMAICによる高い不確実性や、単群試験を含むことによる研究デザイン特有のバイアス、効果修飾因子や予後因子に関する強い仮定など、いくつかの方法論的課題が存在すると考えた。

    費用効果分析においては、製造販売業者はPFS(Progression-free survival)、PPS(post-progression survival)、Deathの3つの健康状態からなるPartitioned Survival Analysisモデルを使用した。救援化学療法としては、より安価なR-ICE療法が選択された。製造販売業者の提出したモデルには、分析開始から3年間PFS状態を維持した患者を長期寛解状態とみなし、長期寛解状態の患者のQOL値を一般健常人と同等とする仮定が含まれていた。公的分析では、これらの仮定が必ずしも臨床実態を反映していない可能性があると判断し、長期寛解後のQOL値をPFS状態の値と同様とするよう変更し、生存曲線の設定としてMixture cure modelを採用する再分析を行った。

    公的分析のベースケース分析では、エプコリタマブは救援化学療法と比較して追加費用は40,291,857円であり、追加効果は4.006 QALYであることが示された。これにより、増分費用効果比(ICER)は、1 QALYあたり10,058,394円となった。生存曲線モデルをLognormalモデルやAIC平均化モデルに変更したシナリオ分析でも、ICERはそれぞれ11,108,558円/QALY、11,340,614円/QALYと大きく変動しないことが確認された。MAICによる間接比較の方法論的限界や効果推計における不確実性が存在することに留意する必要があるが、これらの結果から、抗CD20モノクローナル抗体製剤を含む少なくとも2つの標準的な治療が無効又は治療後に再発した、大細胞型B細胞リンパ腫又は濾胞性リンパ腫に対するエプコリタマブの救援化学療法に対するICERは、日本の公的医療の立場において、1 QALYあたり750~1,125万円未満の範囲にある可能性が高いことが示唆された。

    また、費用対効果評価専門組織の指示に基づき、ポラツズマブベドチン併用ベンダムスチン・リツキシマブ(Pola-BR)療法を比較対照技術とした場合の費用最小化分析も実施され、エプコリタマブはPola-BR療法と比較して25,145,483円の追加費用が生じることが示された。

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