AUDIOLOGY JAPAN
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33 巻, 2 号
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  • 井上 貴博, 大内 利昭, 國弘 幸伸, 佐藤 彰芳, 神崎 仁, 小関 芳宏, 小形 章
    1990 年 33 巻 2 号 p. 95-104
    発行日: 1990/04/28
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    聴力正常耳10耳を対象として刺激音 (トーン・バースト) の位相の変化, 刺激頻度の変化, 刺激音の持続時間の変化が誘発耳音響放射 (e-OAE) 波形にいかなる影響を及ぼすかにつき検討し以下の結果を得た。 1) e-OAEは刺激音の位相に対応して誘発されたが, 刺激音の位相を変化させても, e-OAEの振幅, 潜時及び持続時間に変化は認められなかった。 2) 刺激頻度を変化させてもe-OAE波形に明らかな変化は認められなかった。 3) 刺激音の総持続時間を変化させても, 誘発されるe-OAEの振幅には変化が認められなかった。 4) 刺激音の総持続時間を長くすると, 誘発されるe-OAEの潜時も延長した。 しかし潜時の延長程度は刺激音の総持続時間の延長程度より小さかった。 5) e-OAEの持続時間は刺激音の総持続時間に依存していると考えられた。
  • 西川 典秀, 阿瀬 雄治, 待木 健司, 高橋 邦明, 草刈 潤
    1990 年 33 巻 2 号 p. 105-109
    発行日: 1990/04/28
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    誘発耳音響放射 (OAE) に用いられるプローブと刺激音は各研究者により異なっており未だ統一されていない。 我々は長さと内径の異なる2種類の金属性のプローブを試作しその終端にB & K社製のプローブチューブ校正用金属カップラーをつないで, プローブの音響特性を音響物理学的に検討した。 プローブが長く, 内径の細いものでは刺激音の歪み及び残響が大きかった。 また同一のプローブでは, 周波数が高くなるほど歪及び残響の影響が小さくなった。 OAEの記録にあたっては, このようなプローブの構造に由来する音響学的影響も十分に考慮に入れる必要がある。
  • 阿部 隆, 立木 孝, 村上 裕, 遠藤 芳彦, 伊藤 俊也
    1990 年 33 巻 2 号 p. 110-117
    発行日: 1990/04/28
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    Kemp & Bray製作のILO88を用いて内耳性難聴者90名154耳のclickに対するeOAEを測定し, 内耳性難聴の程度との関連を検討した。 (1), eOAE波形が認められかつ再現性が40%以上の場合をeOAE (+) とすると, 0.5k-4kHzの4周波数平均聴力が35dB未満の81耳では, 94%の確実性でeOAE記録が可能, 35dB以上の73耳及び40dB以上の63耳では, 89%及び92%の確実性でeOAE記録が不能であった。 1kHzと2kHzの2周波数平均聴力が40dB以上の64耳では, 94%の確実性でeOAE記録が不能であった。 (2), eOAE記録可能の84耳では, 内耳性難聴の程度とeOAEパワー (total echo power及びFFT解析図のhighest peak power) の間に負の相関 (r=-0.44) が認められた。 以上の結果から, ILO88を用いて, 4周波数平均聴力レベル35-40dB以上の内耳性難聴のスクリーニングが可能と思われた。
  • 大内 利昭, 神崎 仁, 國弘 幸伸, 井上 貴博, 佐藤 彰芳, 小川 郁, 小関 芳宏, 小形 章
    1990 年 33 巻 2 号 p. 118-130
    発行日: 1990/04/28
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    一側性聴神経腫瘍 (AN) 24例及び正常者24名を対象に, 1kHz及び2kHzのトーン・バースト刺激による誘発耳音響放射 (e-OAE) を記録し以下の結果を得た。 1) AN患側のe-OAE見かけの閾値は正常耳のそれの範囲内にあるものと, 明らかな上昇を示すものとがあった。2) 1kHzのe-OAE見かけの閾値と, 2kHzのe-OAE見かけの閾値との関係を検討すると, 正常耳及びAN健側では両者の間に高い正の相関が認められたが, AN患側ではこの相関は悪化していた。 3) AN患側におけるe-OAE見かけの閾値と純音聴力レベルとの関係を検討すると, 1kHzにおいては両者の間に軽度の正の相関が認められたが, 2kHzにおける相関は明らかではなかった。 4) 腫瘍径と患側e-OAE見かけの閾値との関係を検討すると, 2kHzにおいては両者の間に軽度の正の相関が認められたが, 1kHzにおける相関は明らかではなかった。 5) 以上の結果よりANの聴力障害の病態は複雑なものであると考えられた。
  • 菅澤 正, 八木 昌人, 山岨 達也, 原田 勇彦, 野村 恭也
    1990 年 33 巻 2 号 p. 131-136
    発行日: 1990/04/28
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    オトダイナミックアナライザーILO88を用いて誘発耳音響放射 (EOAE) 閾値を測定し, それに影響を与える因子について検討した。 検査時の対象の聴力は, 全員正常範囲である。
    EOAE域値に, 性別, 疾患による差は認めなかったが, 個体差は著明であった。 しかし, 閾値の左右差は小さく, 閾値そのものより, 臨床応用の際の適当な指標であると思われた。
    自発耳音響放射 (SOAE) 陽性耳のEOAE閾値は陰性耳に比べ低下していた (54.6VS65.3dBSPL)。 EOAE刺激音のSOAEに対する位相同期効果により, 見かけの閾値低下が生じていると思われた。
    EOAE波形の周波数分析では, 各耳特有の周波数成分が認められ, 臨床応用の可能性が期待される。
  • 誘発耳音響放射が最も明瞭に測定できる入力刺激音周波数について
    和田 仁, 小林 俊光, 大山 健二, 高坂 知節
    1990 年 33 巻 2 号 p. 137-143
    発行日: 1990/04/28
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    プローブ内イヤホンより発せられる音波が, 外耳道, 鼓膜, 耳小骨連鎖および中耳含気腔を経由し, 蝸牛内のある部位を刺激する。 そして, コルチ器における能動的な電気-機械変換に励起された基底膜の振動が, 前述と逆の道順をたどり, 外耳道内の微小圧力変動として, プローブ内マイクロホンで検出される。 これが, 誘発耳音響放射 (e-OAE) の発生メカニズムと考えられている。 従つて, e-OAEに及ぼす中耳の影響は大きいことが想像される。 そこで, 本報告では, e-OAE測定システムと我々の開発したMiddle Ear Analyserを用い, 聴力正常な被検者 (20代前半の学生14名27耳) のe-OAEと中耳動特性を測定し, e-OAEが最も明瞭に記録できる入力刺激音周波数と中耳動特性の相関を明らかにすることを試みた。 その結果, 以下のことが明らかとなつた。 (1) e-OAEが最も明瞭に記録できる入力刺激音周波数は, 鼓膜の体積変位が最大となる中耳共振周波数にほほ一致する。 (2) e-OAE周波数の卓越成分は, ほぼ入力刺激音周波数に一致する。
  • 泰地 秀信, 神崎 仁
    1990 年 33 巻 2 号 p. 144-150
    発行日: 1990/04/28
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    Strubeの理論に基づき基底板上での周期的散乱 (ブラッグ反射) を考え, 一次元基底板モデルよわ数値シミュレーションを行いe-OAEを理論的に示した。 その結果, 刺激音の周波数とe-OAEの潜時・大きさの関係などを予測することができ, これは実測値とほぼ一致した。
  • 深澤 達也
    1990 年 33 巻 2 号 p. 151-155
    発行日: 1990/04/28
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    トーンバースト刺激で誘発耳音響放射 (e-OAE) の潜時を測定した。 潜時の定義は一義的に決まらないので, 今回は自己相関関数の最初の極大を潜時の指標とした。 潜時は刺激音のレベル及び持続時間には依存しない傾向にあった。 刺激音の中心周波数が高くなる程潜時は短くなった。 同一刺激で各耳間の潜時のバラツキは大きく1kHzで, ±1SDが3mses程あった。 これらの結果についてその原因を考察した。 潜時の定義が一義的に決まらない理由や自己相関関数法の利点欠点なども考察した。
  • 坂下 哲史, 中井 義明, 八川 公爾, 久保 武志, 箕輪 靖弘
    1990 年 33 巻 2 号 p. 156-163
    発行日: 1990/04/28
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    聴力正常耳21耳を対象として, 刺激音の持続時間がe-OAE波形に与える影響について検討した。 刺激音としては, 1kHzの立ち上がり・立ち下がり時間各1msで, 総持続時間2, 3, 4, 6msの4種類を用いた。 その結果, 刺激音の持続時間が長くなるにともなってピーク潜時は遅延する傾向にあったが, その遅延の仕方などより一見offset response様の波形変化を示すものとそれ以外のもののの二つの異なった変化様式が認められた。 しかし, e-OAE波形を刺激音の持続時間分ずつ遅らせて重ね合わせることによって作成した合成波形を用いてこの波形変化について検討したところ, 一見offset responseであるかのように変化する場合でも, 実際はそうではないことが判明した。 すなわち, 結果として記録されるe-OAE波形は刺激音の各サイクルによって誘発された反応が重なり合い, 干渉し合った結果生じる波形であると考えられた。
  • 鈴木 雅一, 田中 康夫, 井上 庸夫, 都筑 俊寛
    1990 年 33 巻 2 号 p. 164-168
    発行日: 1990/04/28
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    内耳起源と考えられる他覚的耳鳴の一症例について報告した。 症例は生後10ヵ月の男児で, 生後5ヵ月頃より母親が患児の左耳より高音持続性の音のでていることに気づいた。 この音は静かな部屋で聴力正常の者には, 十分聴取可能な大きさであった。 耳鳴模擬検査で, この発振は12000Hzに近い高音のものであり, 持続性かつ一定で, 首の捻転あるいは躯幹の位置で変化を受なかった。
    COR検査およびABR検査で, 4000Hz以上の高音急墜型感音性難聴が疑われた。 自発耳音響検査 (s-OAE) で, 11250Hzに単一のピーク (35dB SPL) をもつパワースペクトラムが記録された。 他覚的耳鳴を自発耳音響放射としてとらえられたものと判断した。 音響放射に関する現在までの報告と考え合せ, この他覚的耳鳴は内耳に起因するものと判断した。
  • 大内 利昭, 神崎 仁, 國弘 幸伸, 井上 貴博, 佐藤 彰芳, 小関 芳宏, 小形 章
    1990 年 33 巻 2 号 p. 169-176
    発行日: 1990/04/28
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    手術を行い病理組織学的に確認された一側性聴神経腫瘍症例11例を対象として, トーン・バースト刺激による1kHz-4kHzの気導刺激emission Cochleogramにつき検討し以下の結果を得た。 (1) 健側emission cochleogramは聴者力正常耳のそれとほぼ同様の型を示したが, 患側emission cochleogramの型は症例により多種多様であった。 (2) 健側の平均emission cochleogramはほぼ高音急墜型を示したが, 患側の平均emission cochleogramは健側と比較して1kHz-2kHzで閾値上昇を示す高音漸傾型を示した。 (3) 純音聴力像之emission cochleogramを比較することにより, 聴神経腫瘍の個々の症例の聴力障害の病態を推定することが可能であると考えられた。 (4) 周波数により聴力障害の病態が異なると考えられる症例が存在した。
  • 竹田 泰三, 鎮西 邦彦, 竹内 俊二, 齋藤 春雄, 青山 好希
    1990 年 33 巻 2 号 p. 177-185
    発行日: 1990/04/28
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    1kHzから2kHzの周波数帯域内で, 100Hz毎の狭帯域に区切って誘発耳音響放射の周波数成分を取り出す, 100Hz狭帯域誘発耳音響放射 (100Hz狭帯域EOAE) を, 突発性難聴新鮮例5耳に施行し, 聴力改善過程に見る100Hz狭帯域EOAEの変化を検討した。
    一般に誘発耳音響放射は40dBHLを越す難聴では, 検出するのは困難であるが, 100Hz狭帯域EOAEを測定した5症例では, 発症初期において, 又は聴力回復過程の中で, 40dBHLを越す中・高度難聴にもかかわらず, EOAEの検出が可能であった。 検出されたechoは, まず1.0-1.3kHzを中心として, 短い潜時を持って出現する。 その後, 聴力の回復につれて, 振幅が増大, 長い潜時を持つechoも出現, 一見, 潜時が延長する傾向を示すと同時に, より高い周波数域でもechoが検出されるようになった。 これら, 明確なechoの検出が可能であった5症例では, 少なくとも1kHz以下の低音域ではほぼ正常聴力に回復した。
  • 自発耳音響放射と誘発耳音響放射の関係について
    小関 芳宏, 大内 利昭, 神崎 仁
    1990 年 33 巻 2 号 p. 186-192
    発行日: 1990/04/28
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    聴力正常な成人6名12耳を対象として自発耳音響放射 (s-OAE) と誘発耳音響放射 (e-OAE) のFFT解析を行い, 両者の関係について検討を行った。 s-OAEは4耳に認められ, その周波数は, e-OAEが最も明瞭に記録できる周波数とほぼ一致していた。 また, この4耳では持続性e-OAEを示した。 等刺激音圧下e-OAE音圧曲線, 予想及び実測e-OAEパワースペクトラム, e-OAEのFFT解析の結果から, e-OAE記録時には, s-OAEの周波数においてe-OAEが出現し易い傾向が認められた。 無刺激音時におけるs-OAEの時間軸の平均加算記録結果からは, 本e-OAE記録系におけるs-OAEのsynchronizationは無いと考えられた。 また, 刺激音の位相を変化させた場合には, s-OAEの周波数おけるe-OAEは, 刺激音の位相に対応して出現していた。 以上より, s-OAEが認められる耳では, 刺激音がトリガーとなり刺激音とs-OAEのsynchronizationが起き, 持続性e-OAEとして記録されると推測された。
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