AUDIOLOGY JAPAN
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34 巻, 2 号
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  • 池田 勝久
    1991 年 34 巻 2 号 p. 75-83
    発行日: 1991/04/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    全身のCa2+ビタミンD (V. D) の代謝異常による聴覚障害の発生の可能性をV. D欠乏ラットを用いたモデル動物実験と副甲状腺機能低下症の臨床経験から探求した。 また基礎的研究から蝸牛における内耳液のCa2+の輸送機序と全身のCa2+代謝異常による蝸牛のCa2+輸送の機序を検討した。 前述の全身のCa2+代謝異常は蝸牛における音受容の機能障害を引き起こすことが明らかとなった。 この機序として血清Ca2+濃度の低下が外リンパのCa2+濃度の低下, さらに内リンパの Ca2+輸送の障害を引き起こし, 有毛細胞の機械電気変換や神経伝達物質放出の障害が誘発されることが考えられた。
  • 土橋 信明, 大内 利昭, 小川 郁, 國弘 幸伸, 小川 茂雄, 井上 泰宏, 池田 俊也, 神崎 仁
    1991 年 34 巻 2 号 p. 84-90
    発行日: 1991/04/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    ステロイド依存性難聴症例の聴力の長期観察を行い, 以下の結果を得た。 1) 個々の耳において, 隣接する2周波数間, 低・中音域間および中・高音域間の聴力経過には高い正の相関が認められたが, 周波数が離れるに従い, その相関性は低下していた。 2) 両側例の両耳の聴力経過は, 5例中3例ではほぼ一致していたが, 2例では異なる経過を示した。 3) 急性聴力変化の頻度は, 低音域では平均1年に1回程度, 中・高音域では平均2年に1回程度であったが, 症例によりかなりの差が認められた。 4) ステロイド依存性難聴の聴力障害の病態は多様であると考えられた。 5) 個々の急性聴力変化時の聴力悪化・改善幅は, 何れの音域においても平均20-25dBであった。 6) 全経過観察期間中の最大聴力変動幅は, 何れの音域においても平均35dB前後であった。 7) 適切な治療によりステロイド依存性難聴の聴力は比較的良好に維持し得るものと考えられた。
  • 永田 祐子, 牛迫 泰明, 牧野 浩二, 松浦 宏司, 森満 保
    1991 年 34 巻 2 号 p. 91-96
    発行日: 1991/04/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    当料を受診した全身疾患患者123例の純音聴力検査成績を検討し以下の結果を得た。
    1) 聴力レベルは, 30dB以下が168耳 (68.3%), 30-60dBが55耳 (22.4%), 60dB以上は23耳 (9.3%) であった。
    2) 難聴症例は両側性が多く, 発症様式は緩徐な例が多かった。
    3) 70dB以上の高度難聴症例は, 一側性に急性に発症するものが多く, 発症時の全身状態との関係については不明のものが多かった。
    難聴に全身疾患が合併している症例の報告は数多く見られるが, それぞれの疾患における聴力障害の全体的な傾向を明らかにすることが, 今後, 難聴の発症と全身疾患との関連について検討するうえで必要になるのではないかと思われた。
  • 中村 雅一, 川端 五十鈴
    1991 年 34 巻 2 号 p. 97-103
    発行日: 1991/04/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    糖尿病患者にみられた突発難聴症例11例について, 突発難聴の臨床的経過および糖尿病の状態との関係を検討した。 11例すべて一側性で, 非糖尿病患者の突発性難聴と臨床症状はほぼ同じであるが, 難聴の程度が高度のものが多く, 数日かかって難聴の進行したものが11例中3例みられた。 過去の報告例では突発難聴の原因として糖尿病による血管病変の関与をあげているものが多いため, HbA1c, 網膜病変, 尿蛋白を指標として, 糖尿病の状態と難聴の程度および予後との関係を検討したところ, 網膜症のあるものでは難聴が高度であるということ以外相関はみとめられなかった。 治療は血糖をコントロールしながらステロイドを投与したが, 合併症の新たな発生や進行は認められず, 予後は不良ではなかった。
  • 大蔵 眞一, 加我 君孝
    1991 年 34 巻 2 号 p. 104-109
    発行日: 1991/04/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    白血病は, 経過中に難聴などの耳症状を呈することがある。 今回, 難聴を訴え生前聴力検査を施行できた白血病4症例の側頭骨病理標本を光学顕微鏡を用いて観察し, 側頭骨病変と難聴の程度を比較検討したので報告する。 難聴の内訳は, 両側高度突発難聴2例, 軽度混合性難聴1例, 両側軽度感音性難聴1例であった。 全標本に白血病性変化を認めた。 突発難聴症例の聴覚系の病理学的所見は, 内耳道から蝸牛軸・蝸牛への細胞浸潤と出血であった。 混合性難聴症例は, 外耳道への白血病性細胞浸潤と内耳道から蝸牛にかけての出血が難聴の原因であった。 感音性難聴症例は, 乳突洞への細胞浸潤と中耳腔の滲出液貯留以外, 側頭骨内には白血病性変化を認めなかった。 以上白血病4症例の側頭骨病理より, 外耳・中耳・内耳と側頭骨内のいずれの部位にも病変が生じることがわかった。 病変の部位に対応して, 伝音性・混合性・感音性のいずれのタイプの難聴もきたすと考えられる。
  • 仙波 哲雄, 原田 勇彦, 山岨 達也, 菊地 茂, 八木 昌人
    1991 年 34 巻 2 号 p. 110-116
    発行日: 1991/04/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    感音難聴症例に存在する免疫異常を検討する目的で, 特難を中心とする感音難聴症例83例に対して, 免疫複合体, 抗DNA抗体, 抗カルジオリピン抗体, 免疫グロブリン値, 血清補体価, 抗核抗体を検索した。 全体としては53例になんらかの異常を認め, 特に特難例の多くに免疫複合体の異常を認めたほか, 抗DNA抗体の比較的高値や抗核抗体陽性例を認め感音難聴に免疫異常が存在する可能性が示唆された。
  • 木村 寛, 麻生 伸, 渡辺 行雄
    1991 年 34 巻 2 号 p. 117-121
    発行日: 1991/04/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    原田病患者11例22耳に対して神経耳科学的検討を行った。 11例中9例が蝸牛または前庭症状を訴えた。 22耳中8耳に平均20dBから40dBまでの軽度難聴, 5耳に平均40dBから60dBまでの中等度難聴を認めた。 聴力型は, 高音障害型を示すものが多かった。 内耳機能検査を施行した2例とも, 補充現象陽性を示した。 蝸電図を施行した5例全例にSP/APの異常増大は認めなかった。 1例にグリセロール・テストを施行し, 両耳とも陰性であった。 平衡機能検査を施行した6例全例に軽度の前庭障害を認めた。 対象例11例すべてに何らかの聴覚・平衡機能の異常所見を認めた。 眼症状, 髄液所見と内耳障害の程度は必ずしも対応しなかった。 今回の検査結果から原田病は, 高頻度に比較的軽度の内耳障害を併発するものと推察された。 さらに, 本疾患の内耳障害について文献的に考察した。
  • 多湖 千晃, 永井 裕之, 藤浦 一喜, 柳田 則之
    1991 年 34 巻 2 号 p. 122-127
    発行日: 1991/04/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    原因不明の感音難聴の発症機序の一つとして近年, 内耳における自己免疫現象の実験的研究が進められている。 現在, 厚生省特定疾患「急性高度難聴」調査研究班の対象疾患の一つとして「免疫異常に関連する急性高度難聴」がある。 今回既存の自己免疫疾患に合併した両側感音難聴症例11例の検討を行い以下の結果を得た。 11例の内訳は, 慢性関節リウマチ3例, 再発性多発性軟骨炎2例, ベーチェット病1例, 原田氏病3例, 大動脈炎症候群1例, MCTD 1例であった。 1) 各々の症例において聴力像に一定の傾向は, 認められなかった。 2) しかし各症例の両耳の聴力は類似しており, 全身性の障害の部分症として捉えられる可能性が示唆された。 3) ステロイドに対する反応性は, 各症例ごとに異なっていたが血管炎を主体とする疾患にステロイド反応性が良い傾向にあった。 4) 従来の自己免疫性感音難聴, ステロイド依存性感音難聴とは共通する部分はあるが相違点もみられた。
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