AUDIOLOGY JAPAN
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34 巻, 3 号
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  • 蘆原 郁, 吉野 公喜, 大橋 徹
    1991 年 34 巻 3 号 p. 141-148
    発行日: 1991/06/29
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    聴覚における遠心性のolivo-cochlear bundleの破壊による蝸電図への影響を観察するため, モルモットを用い, 実験Iでは, COCBを第四脳室底で, 実験IIでは, COCB及びUCOCBを含む前庭神経をそれぞれ切断し, 蝸牛正円窓よりAP及びCMを記録した。 その結果, 第四脳室底でのCOCB切断に伴う蝸電図の変化は認められなかったが, 前庭神経を切断したモルモットでは, APのP1成分の減少, あるいは消失が特徴的に観察された。 しかし, CMには変化がみられず, また, 前庭神経切断後の蝸牛コルチ器の形態にも異常はみられなかった。 このことから, 遠心性聴覚系のうち, 求心性の聴神経と結合するLOCシステムが, 聴神経の活動, 特にP1の起源を制御していること, また, P1が, 何らかの神経活動をあらわしていることが示唆された。
  • 青柳 優, 布施 健生, 横田 雅司, 鈴木 利久, 金 慶訓, 稲村 和俊, 小池 吉郎
    1991 年 34 巻 3 号 p. 149-157
    発行日: 1991/06/29
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    Fridman (1982) により開発された位相スペクトル解析を正弦波的振幅変調音による聴性定常反応の反応検出へ応用し, その臨床的有用性について検討した。 まず, 自動解析プログラムを作成するための最適な解析条件を決めるため, 周波数分析能・サンプリング点数・group averageの加算回数について検討したが, 最適な条件はサンプリング点数512点, サンプリング時間400μsec (解析時間204.8msec, 周波数分析能4.9Hz) であった。 次に, 変調周波数と位相スペクトルの関係について検討したが, 反応波形と同様に成人においては変調周波数40Hzのときに最も高いcomponent synchrony measure (CSM) 値を示した。 又, 位相スペクトル解析による閾値判定と反応波形による判定を比較したが, 前者が10-20dB低い閾値を示す例が多く, 位相スペクトル解析による閾値判定は反応波形の形状による判定より感度が高い傾向にあった。
  • 佐伯 忠彦, 暁 清文, 柳原 尚明
    1991 年 34 巻 3 号 p. 158-164
    発行日: 1991/06/29
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    人工中耳とフィッティングした耳掛け型補聴器の聴覚について, 騒音下と非騒音下で語音明瞭度あるいは了解度検査を行い比較検討した。 対象は人工中耳植え込み患者5名である。 語音にはTY-89語音検査表の単音節語音と成人用2音節単語, 騒音にはマルチトーカーノイズを使用し聴覚評価には語音明瞭度と了解度を用いた。
    単音節語音では, 非騒音下において, 人工中耳群, 補聴器群で語音明瞭度は各々平均93.2%, 90.8%と有意差はなかった。 一方, 65dB SPLの騒音下では, 各々平均59.2%, 45.2%, と有意差を認めた (P<0.01)。 騒音音圧を変化させても人工中耳群と補聴器群の語音明瞭度は有意差をもって低下した (P<0.01, 0.001)。 2音節単語による語音了解度においても同じ検査条件下で単音節語音の場合とほぼ同様の結果を得た。 以上より, 騒音下における人工中耳の語音明瞭度あるいは了解度は耳掛け型補聴器のそれに比べて優れていることが分かった。
  • 竹内 義夫
    1991 年 34 巻 3 号 p. 165-170
    発行日: 1991/06/29
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    国内オージオメータ・メーカー4社の骨導0dBの基準値の不統一の実態をアンケート調査および各社の基準等価域値フォースレベルの測定によって明らかにした。 その原因の大半は現時点からみると, JIS T 1201の骨導最小可聴値に関する規定の不備にある。 メカニカルカプラおよびこれを用いた骨導の基準等価域値フォースレベル等の一連の国際基準化の動向の中で, 今後わが国のとるべき方策を提言した。
  • 船井 洋光
    1991 年 34 巻 3 号 p. 171-176
    発行日: 1991/06/29
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    刺激音 (クリック) と同時に各種純音を与えて, 誘発されるABRと蝸牛機能との関係を調べた。
    1) 正常耳では最大遮蔽周波数は3-4kHzであった。 2) 高音障害型感音難聴では最大遮蔽周波数は全例1-2kHzと正常より低音に分布した。 3) 低音障害型感音難聴では最大遮蔽周波数より低音へ向かう曲線が正常より急峻となった。 4) 水平型感音難聴では最大遮蔽周波数は4kHzと正常範囲内にあった。
    以上の結果よりクリックABRは波形形成に関与する周波数帯域において, 純音聴力検査上自覚域値の低い周波数領域をより強く, 自覚域値の高い周波数領域をより弱く反映することが示された。 したがって各症例ごとに, さらに蝸牛機能ごとに, 蝸牛機能とABR域値との関係は異なる。 今後ABR診断上, 極めて重要かつ注意を要する点と考えられた。
  • 竹内 義夫
    1991 年 34 巻 3 号 p. 177-186
    発行日: 1991/06/29
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    語音聴力検査用語表の検査語のレベルはVUメータによって測定および統制されている現行の方法の歴史的経緯を述べ, 現在までに公開された語音聴取域値検査用数字語表の録音について数字音声のレベルの比較計測を行った。 57および57-S語表に関しては語音聴取域値の正常値を測定し, 57-S語表の語音のレベルの基準値が14dB SPLである根拠を明らかにした。 最近CD化された語表が瞬時値指示器によってレベルの計測と統制を行ったことに由来する問題点を指摘し, CDの数字音声のレベルをVUメータおよびピークメータで測定した結果から約5dBの補正が必要なことを示した。 今後語音のレベルに関する曖昧さを排除するため, オージオメータのJIS規格の中に規定を新たに設けるべきであることを提言した。
  • 深澤 達也
    1991 年 34 巻 3 号 p. 187-190
    発行日: 1991/06/29
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    誘発耳音響放射 (e-OAE) の線形性を比較的弱い刺激音圧の領域で, 正常な6耳において検証した。 まずclick e-OAEから畳み込み積分によってtone burst e-OAEを理論予測し, それと実測のe-OAEとの相関係数を計算した。 その結果各種条件下で両者は高い正の相関を示し, 弱い刺激音圧でのe-OAE現象の線形性を示唆した。 次に線形近似のもとで, tone burst e-OAEの刺激依存性について考察し, それらがclick e-OAEを使って統一的に解釈されることを示した。
  • 深澤 達也
    1991 年 34 巻 3 号 p. 191-197
    発行日: 1991/06/29
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    人間の正常耳において, クリック刺激で外耳道に誘発される音 (刺激音と誘発耳音響放射とを含む) のパワースペクトルと, 純音刺激で外耳道に誘発される音の周波数依存性とを比較した。 その結果両者とも1kHz周辺で周期が約100Hzの揺らぎが存在し, その周波数構造がほぼ一致することが判明した。 一方前者の位相にも同様な揺らぎが存在した。 そこで誘発耳音響放射 (e-OAE) がこのスペクトルの揺らぎをもたらすと考え, 数学的にこの揺らぎ成分を分離してみた。 その結果, 分離された揺らぎ成分は, 時間軸に戻すとe-OAE部分に一致していた。 その位相は, 1kHz付近で, 100Hzで2πだけ回転していた。 これがトーンバースト刺激で, 長い群遅延 (潜時) が起こる理由と考えられた。
  • 阿部 隆, 立木 孝, 遠藤 芳彦, 伊藤 俊也, 鈴木 健策, 大内 利昭
    1991 年 34 巻 3 号 p. 198-204
    発行日: 1991/06/29
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    ティンパノグラムA型の聴力正常成人30名60耳を対象に, 現行の2つのe-OAE測定法における臨床的指標の個体差・両耳差・両者の関連について検討した。 第1の方法は誘発電位測定装置と特製プローブによるこれまでの方法でみかけの域値を臨床的指標とし, 第2の方法はkemp & Brayが製作したILO88で, TEP (total echo power) およびHPP (FFT周波数解析図の1kHz-2kHzの間のhighest peak power) を臨床的指標とした。 刺激音にはクリック音を用いた。 3つの指標はいずれも個体差が大きく両耳差が小さいという同様の特性を示した。 個体差ではみかけの域値とTEP・HPPの間に各々-0.83・-0.81の高い負の相関が認められた。 両耳差でも両者の間に相関を認めたが, その相関係数は個体差のそれに比し小さな値であった。 ILO88におけるTEP・HPPはみかけの域値に比し, より定量的で客観的な臨床的指標になり得ると思われた。 ILO88におけるe-OAE (+) の判定基準3項目を示した。
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