AUDIOLOGY JAPAN
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34 巻, 6 号
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  • 加藤 弓子, 林 治博, 松永 亨, 大山 玄
    1991 年 34 巻 6 号 p. 779-785
    発行日: 1991/12/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    日本語加工単音節/ki//sa//te//ha/及び/ri/を用いて難聴者と健聴者の異聴について検討した。 各単音について, 被験者群ごとの, 各刺激に対する正答率を求めた。 子音及びVOT (Voice Onset Time) を増幅加工した音声に対する正答率は原音声の場合より大きく, 伸展加工では小さかった。 /te/及び/ri/では, 伸展による正答率の低下が大きかった。 さらに, 得られた異聴に関して因子分析をしたところ, /ki/及び/sa/では, 求められた因子のいくつかは, 健聴者と難聴者で共通の解釈がなされた。 刺激の音声学的分類による特定の傾向は見いだせなかった。
    これらの結果から, 1) 後続母音による子音への逆行性maskingの影響, 2) 単音節の知覚には, 一定の時間範囲内に十分な情報が取り込まれる必要があること, 3) 音声学的分類に基づいた音声の加工は, 難聴者の異聴の改善には有効ではないことが示唆された。
  • フロセマイドの影響
    植田 広海, 服部 琢, 佐脇 正之, 丹羽 英人, 柳田 則之
    1991 年 34 巻 6 号 p. 786-791
    発行日: 1991/12/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    Kemp製作のILO88を用いて, モルモットを対象にクリック音刺激によるe-OAEを測定し, フロセマイド静注後の変化を観察した。 e-OAEは, 測定24耳中20耳に認め左右耳差は少なかった。 また, フロセマイド30mg/kg投与後5-10分でe-OAEパワー (Total echo power及びHighest peak power) は, 最低値に達しその後回復した。 一方, フロセマイド50mg/kg投与後では, 過半数耳にe-OAEパワーは無反応の時期を認め, その後の回復傾向も遅かった。 以上の変化は, 文献上報告された蝸牛内静止電位 (EP) の変化に類似しており, EPがe-OAEの発生機構に何らかの関与をしているのではないかと推察した。
  • 刺激音の種類と反応波形
    斉藤 秀樹, 市川 銀一郎, 芳川 洋, 石川 正治, 江原 義郎
    1991 年 34 巻 6 号 p. 792-797
    発行日: 1991/12/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    ABR, MLR, SVRの連続記録を刺激音の立ち上がり時間, 持続時間等の影響を明らかにするため対数時間軸に連続記録した。 刺激音の立ち上がり時間の延長にともない聴性誘発反応の早期成分と中間成分の潜時延長と早期成分の振幅の減少を認めた。 持続時間の延長にともないP2成分の振幅増加を認めた。
  • 宇野 彰, 加我 君孝, 都筑 俊寛, 黒木 三男
    1991 年 34 巻 6 号 p. 798-804
    発行日: 1991/12/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 2頭のニホンザルの覚醒時ABR, MLR, SVRの特徴を検討することである。
    その結果, ABRは7波まで認められ, 再現性の高かった1波から5波までの潜時はヒトの反応に近似していた。 MLRは潜時が約17から19msec間と約30から35msec間に2峰性の陽性ピークが出現した。 SVRは約50msecと100msecにピークが共通に認められた。 MLR, SVRともにヒトの波形の形態に類似していた。
    以上の結果は, ニホンザルのABR, MLR, SVRは, ネコやモルモットなどの小動物よりもヒトの反応に類似しており, 臨床的なヒトのモデルとしての応用に期待できると考えられた。
  • 磯島 愿三, 鈴木 隆男, 石神 寛通
    1991 年 34 巻 6 号 p. 805-813
    発行日: 1991/12/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    実験Iは信号音が帯域雑音で, 遮蔽音が純音の場合である。 そのconventional PTCは信号音のレベルの上昇に従い, 高域勾配は急峻となり, 低域勾配は浅くなる。 この勾配の変化は信号音の持続時間には依存しない。 PTCの勾配は一次ニューロンのFTCの勾配より急峻である。 これは結合音, ことにoff-frequency listening効果の大きさに依存する。 PTCの帯域幅は信号音のレベルにも持続時間にも依存しないが, 聴覚系のフィルタの等価方形帯域幅より狭い。 PTCの先端部での遮蔽閾値は信号音レベルが10dB, 20dBSLでは, 信号音の時間積分が見られるが, 30dBSLでは時間積分はみられない。 これはPTCが臨界帯域と強い関連を持つことを示す。 実験IIは信号音が純音で, 遮蔽音が帯域雑音の場合である。 低域, 高域勾配は実験Iの場合よりも急峻となる。 PTCの帯域幅は実験Iの場合と同じか広くなる。 これは信号音レベルが10dB, 20dBSLでは, 先端部の遮蔽閾値の平坦化が持続時間が長くなるほど広くなるためと, 遮蔽音の帯域幅が持続時間20msの信号音帯域幅の約2倍であるためである。 信号音レベルが30dBSLでは, 持続時間に関係なく平坦化は見られない。 実験IIの結果は, 線形興奮パターンモデルからの予測と一致する。 PTCの先端部遮藪閾値は実験Iの場合と同様である。 conventional PTCは心理的周波数選択性を表わし, その3dB帯域幅は臨界帯域に対応するが, これらは信号音あるいは遮蔽音に用いた帯域雑音の帯域幅に強く依存する。
  • 黒川 泰資, 斉藤 等, 吉田 和典, 山本 哲朗, 岡 宏
    1991 年 34 巻 6 号 p. 814-823
    発行日: 1991/12/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    内側膝状体の一部とみなされている膝上核は聴覚皮質への投射の一部分を形成しているが, その他の皮質野との関係はまだ十分に解明されていない。 本実験ではラットを用い, 順行性トレーサーのPhaseolus vulgaris-leucoagglutinin (PHA-L) と螢光色素二重標識法による検討を行った。 その結果, PHA-Lによる標識終末は側頭皮質では注入部位と同側の一次聴覚野 (AI) と聴覚連合野と島皮質の第I層に広範な分布を示し, 第IV層の終末は聴覚連合野を中心にして比較的限局した分布を示した。 前頭皮質では一次運動野 (MI) とそれ以外の前頭野の比較的尾側部で第I層に分布する終末が広範囲に認められた。 第IV層に分布する終末はさらに尾側部に限局していた。 また, 前頭皮質と側頭皮質に注入した螢光色素に二重標識される神経細胞は膝上核には観察されなかった。 以上より, 前頭皮質に入力される聴覚情報は標識終末の局在分布から, 音刺激に反応して発現する眼球運動や頭部運動に関連し, その投射は側頭皮質と前頭皮質の並列経路で, それぞれ違った情報を処理すると推察された。
  • 磯島 愿三
    1991 年 34 巻 6 号 p. 824-841
    発行日: 1991/12/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    環境騒音のアナロジーとして, 遮蔽音存在下での心理的, 生理的な周波数選択性が何によって, どのようにして, どの部位で知覚されるかについて, 最近の研究成果の一部から概観した。 周波数選択性を左右する要因には次のような現象がある。
    1) off-frequency listeningはconventinal PTCと遮蔽音存在下のFTCによる周波数選択性を尖鋭化する。
    2) 結合音, ことに2f1-f2はPTCとFTCの低域勾配を急峻化する効果があるが, この効果は結合音の特性からみて, off-frequency listeningによる効果よりも小さい。
    3) オリーブ蝸牛束は高い感度, 鋭い同調曲線, 引いては周波数選択性を制御しているので, 周波数選択性は上オリーブ核より高位中枢で成立することが示唆される。
    4) 2音抑制は, 一次ニューロンでのFTCの高域勾配内にはほとんど入っていない。 また, 低域勾配の先端部にも入っていない。 従って, 抑制は末梢聴覚系では, 周波数選択性の急峻化に関与していない。 蝸牛神経核では, 特徴周波数を含む広い抑制野を持つType IVユニットがあるが, 大部分は一次ニューロンと同じような反応を持つType Iユニットであることから, 周波数選択性の急峻化に十分な効果を発揮していない。 下丘ニューロンの抑制効果の異なる広い抑制野を伴う興奮性同調曲線は, PTCとよく似ていることから周波数選択性が下丘で成立する可能性が高い。
    5) 周波数選択性と臨界帯域符号化の直接的実験は, 同じ動物で各中継核ニューロンと行動反応とで, 同じ測定値を導くことにある。 一次ニューロンでのフィルタの帯域幅は, 行動反応で求めたものよりも狭い。 そこで, 周波数選択性は蝸牛神経のレベルには存在しない。 蝸牛神経腹側核ニューロンからの臨界比の帯域幅は一次ニューロンでの帯域幅より狭い。 これは蝸牛神経腹側核では周波数選択性が蝸牛神経より急峻化することを示す。 しかし, 帯域幅は強度に依存するので, 周波数選択性は蝸牛神経核レベルでは成立しない。 下丘ニューロンで測定された周波数選択性は, 行動反応による臨界帯域フィルタの帯域幅と非常によく似た周波数依存性を示し, また, 帯域幅は強度に依存しない。 そこで, 周波数選択性と臨界帯域は中脳レベルで単一下丘ニューロンと行動 (心理的) 反応でともに成立する。 これは単一下丘ニューロンヘ投射される10以上の線維による機能的回路網で情報処理が行われることによる。
  • 1991 年 34 巻 6 号 p. 844
    発行日: 1991年
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
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