聴性脳幹反応 (Auditory Brainstem Response; ABR) は速波成分と緩やかな変動の陽性緩徐波から成り立っている。 一般にABRを記録する際, の判定の指標はI波, III波, V波の潜時, 振幅であり, II波, IV波は出現率が低いため利用されにくい。 特にIV波はV波と分離する場合とがあり, 分離したV波は融合したV波の頂点潜時より長いため, 波間潜時の測定に誤差を生じてしまう。 我々は現在までIV, V波の動態に影響を与える因子をいろいろ検討してきた。 今回はマスキング雑音の影響について検討した。 その結果, マスキング雑音はABRの後半成分と緩徐波成分を抑制し, IV, V波は分離し易かった。 しかし, 両耳間移行減衰量をふまえた程度のマスキング量では非刺激側からの入力を遮断するには不十分で, さらにマスキング雑音自体が聴覚上行路の中枢に影響を与えることがわかった。
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