AUDIOLOGY JAPAN
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36 巻, 4 号
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  • 辻 純, 奥村 智子, 榊原 淳二, 高木 明, 本庄 巖
    1993 年 36 巻 4 号 p. 225-229
    発行日: 1993/08/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    リドカインは耳鳴の軽減作用があるが, その作用機序は不明である。 リドカインの蝸牛に対する反応を調べるため, モルモットで, distortion product otoacoustic emissions (DP-OAE) を測定し (2×f1-f2, f1=3.9875kHz, f2/f1=1.225), ヒト使用量相当の1.25mg/kgのリドカイン静注に対する反応を計測した。 リドカイン負荷前, 入力音とDP-OAEとの音圧差は50-60dBであり, 呼吸停止により消失し, 呼吸再開によって復活した。 このことは得られた反応波形がアーチファクトでないを示す。 DP-OAEはリドカイン1.25mg/kg静注後, 3-4分後に頂点を持って, 約15分間増加した。 このことからリドカインが, 蝸牛の能動的な働きに影響を及ぼすことが知られた。 その作用が直接有毛細胞になされたか, 間接的になされたかは不明であるが, 蝸牛遠心線維が関与する可能性が示唆された。
  • 佐藤 利徳, 大山 健二, 和田 仁, 高坂 知節
    1993 年 36 巻 4 号 p. 230-237
    発行日: 1993/08/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    Distortion product otoacoustic emissions (DPOAE) のレベルの測定値から聴力レベルの推定が可能か否かを明らかにすることを目的として, 末梢聴器障害によると思われる種々の程度の感音性難聴者で各周波数においてDPOAEのレベルを測定し, 対応する周波数での標準純音聴力レベルとの相関を調べた。 その結果, 聴力レベルの変化を追跡し得た例ではこれらの間に明瞭な直線的関係が認められ, 一般に聴力レベルが約50dB以上になるとDPOAEが雑音レベル以下となり観測することができなくなることがわかった。 対象とした感音性難聴者全体で見た場合には, 両者の間には高い相関が見られ, 入力音の周波数をf1, f2とした場合, f2あるいはf1とf2の相乗平均の周波数を聴力検査の周波数と対応させた場合に特に高い相関係数を示した。 しかし, 同一の聴力レベルを示した例であっても測定されたDPOAEレベルには大きなばらつきが見られ, DPOAEレベルの値から聴力レベルを推定することは困難であると結論された。
  • 西山 耕一郎, 設楽 哲也, 岡本 牧人, 古沢 慎一, 小野 雄一, 佐野 肇, 平山 方俊
    1993 年 36 巻 4 号 p. 238-242
    発行日: 1993/08/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    ムンプスが一側聾を来すことはよく知られている。 しかし今回我々は, 特異な臨床経過を示したムンプス難聴の2例を経験したので報告した。
    症例: 症例1は, 3歳, 女児。 最初小脳症状で発症し, 難聴は発症から8週間後に気づかれた症例である。 従来ならアナムネーゼのみでは, ムンプス難聴と同定できなかったが, ELISA法にてムンプスウイルスのIgM抗体を特異的に測定できるようになり, ムンプス難聴診断基準にて準確実例となった症例であった。
    症例2は, 47歳, 女性。 不顕性感染症例で, IgM抗体が難聴発症1ヵ月目より発症4ヵ月目まで陽性であった症例である。 ムンプス難聴は, 一般的には発症より数日で聾になるとされている。 この症例では中等度難聴発症後, 一時難聴の回復を認めたが, 1ヵ月後再度難聴の悪化をきたし聾となった症例である。 ムンプス難聴診断基準にて準確実例であった。
  • 江原 義郎, 市川 銀一郎, 芳川 洋
    1993 年 36 巻 4 号 p. 243-248
    発行日: 1993/08/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    瞬時スペクトル (時変型スペクトル) を用いて聴性中間反応 (MLR), 聴性頭頂部緩反応 (SVR) の分析を行った。 時変型スペクトルは信号の特徴を時間 (潜時) と周波数の関数として同時に捉えていく手法であり, MLR, SVRの構成周波数と反応成分の関係を明らかにすることができた。
    MLRは, その構成周波数がほぼ40-60Hzに限局しており, スペクトルのピークが各反応潜時と一致するかたちで, エネルギーの時間変動を示していた。
    SVRの優勢な帯域はほぼ3-7Hzであり, スペクトルのピークは各反応成分の潜時と一致していた。 特に10Hz以下の帯域成分の時間変動に注目すると, N1, P2, N2とより潜時の遅い反応成分になるに従って, 相対的に低域の周波数成分が優勢になる傾向がみられた。
  • 村井 和夫, 浅野 義一, 金田 裕治, 小笠原 真, 村井 盛子, 立木 孝
    1993 年 36 巻 4 号 p. 249-257
    発行日: 1993/08/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    一般に小児における耳鳴出現頻度は成人に比較して低いとされているが, その報告は少なく, また検討対象も様々で, 必ずしも小児耳鳴の実態を確実に捉えているとは言えない。 今回, 1986年11月から1989年9月迄に当科を受診し, 純音聴力検査を施行した6歳から15歳迄の小児647例のうち, 耳鳴の有無の記載が明確であった463例を対象として, 小児耳鳴の臨床症状について検討した。 その結果, 463例中190例 (41.0%) に耳鳴を認め, このうち常時耳鳴を訴えたものは30例 (6.5%), 時々訴えるものは160例 (34.5%) であった。 耳鳴の出現率は加齢とともに徐々に上昇する傾向がみられた。 耳鳴は耳疾患のある例に高率にみられ, 常時訴える耳鳴は感音疾患に, 時々訴える耳鳴は伝音疾患に多く見られた。 また常時耳鳴を訴える例の平均聴力レベルは時々訴える例よりも大きい値を示し, 難聴との関連性が示唆された。
    標準耳鳴検査法1984が作成され, 耳鳴の性状について種々の面から検討が加えられその成績が報告されているが, 未だ耳鳴の成因, 病態を明らかにするまでにはいたっていない。
    この報告は小児に見られた自覚的耳鳴 (以下耳鳴と記す) について, その統計的観察を行うとともに耳鳴と疾患, および難聴等の関連性など小児耳鳴の臨床像について検討したものである。
  • 武田 篤, 村井 盛子, 浅野 義一, 亀井 昌代, 村井 和夫
    1993 年 36 巻 4 号 p. 258-265
    発行日: 1993/08/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    難聴児がその同胞にどのような影響を及ぼしているかを検討するために, 当言語治療室で聴能訓練を行った52例にアンケートを実施した。 回答のあった47例の内17例 (36.2%) に, 腹痛, チック, 足痛, 吃音, 過食, 万引きなどの神経症的発症がみられた。 これらの予後は, 1年以内に改善ないし改善傾向を示すものが多いが, 3年以上かかるものや不変例もみられた。 しかし, これらの症状は祖父母同居例に発症が少なく, また発症後スキンシップを図ることにより症状が改善する傾向を示したことから, ともすれば難聴児にばかり親の目がいき, その同胞をなおざりにしてしまうことによる「愛情欲求不満」が関与していると推定された。 難聴児の訓練, 指導にあたっては, その同胞に対しても十分な配慮を行うべきと思われた。
  • 斉藤 秀樹, 石川 正治, 江原 義郎, 市川 銀一郎
    1993 年 36 巻 4 号 p. 266-275
    発行日: 1993/08/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    我々はこれまでに, 対数時間軸を用いてABRからSVRまでの連続記録の反応動態を検討してきた。 今回CT, MRIの画像診断にて局在を明確にとらえられた中枢性疾患を対象にその連続する聴性誘発反応と画像での局在性との比較検討をした。 両側の単耳刺激記録を同一条件で記録し比較し, 以下のような結果を得た。 1) 聴神経病変は主にABRに有意な所見を得た。 2) 脳幹部病変はABRからMLRに有意な所見を得た。 3) 聴皮質病変は主にMLRに有意な所見を得た。 4) 今回の片側性の症例を対象とした検討ではSVRのP2成分以降は左右差を認めなかった。
  • 冨山 道夫
    1993 年 36 巻 4 号 p. 276-281
    発行日: 1993/08/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    補聴器を日常生活で常用しているレクルートメント現象陽性の感音難聴症例を対象として, 実耳挿入利得と子音明瞭度の関係を検討した。 対象を60歳以上の高齢者に限定したため, 1回の検査の負担が大きい57式語表は用いず67式語表を2回施行しその結果から子音明瞭度を検討した。 また今回は裸耳でもある程度は聞き取れる語音を補聴器装用によりどの程度聞き取りが良くなるかを検討する目的で, 検査語音の基準音を測定耳の平均聴力+10dBに設定した。 その結果有声子音群の明瞭度の改善には1500Hzの実耳挿入利得, 無声子音群の明瞭度の改善には3000Hz, 4000Hzの実耳挿入利得が必要であることを示唆する結果を得た。 補聴器装用に伴う有声子音群の明瞭度の改善は語音や症例により異なった傾向を示すものと考えた。
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