AUDIOLOGY JAPAN
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37 巻, 3 号
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  • 設楽 仁一, 小寺 一興, 鈴木 真純, 三浦 雅美
    1994 年 37 巻 3 号 p. 177-182
    発行日: 1994/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    伸長増幅は入力音圧レベルの増大に伴い, 一定の比率にしたがって増幅度が大きくなる新しい増幅法である。 伸長増幅はSN比を改善するのに有用であるが, 伸長増幅を作用させることは, 同時に語音も変化させる。 デジタル補聴器HD-10を用い, 6名の正常者を対象に, 語音明瞭度における伸長増幅の効果を検討した。 SN比10dBの条件下で語音明瞭度検査を施行した。 全周波数帯域に1:2の伸長比で伸長増幅を作用させた場合には, 語音明瞭度は低下しなかった。 しかし1:4, 1:8の伸長比では伸長増幅を作用させなかったときと比べて著明に明瞭度が低下した。 一方, 伸長増幅を低および高周波数帯域にのみ作用させたときには, すべての伸長比において語音明瞭度は低下しなかった。 低および高周波数帯域のみに伸長増幅を作用させた場合には, 語音明瞭度を低下させずに雑音を軽減する効果がある。
  • 小嶋 知幸, 加我 君孝, 石川 史人, 斉藤 陽一, 石川 貞夫
    1994 年 37 巻 3 号 p. 183-189
    発行日: 1994/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    事象関連電位 (以下ERP) の加算波形の潜時における, (1) 同一個体内での再現性, (2) 覚醒水準の低下に伴う変動について, 加算前の素反応および背景脳波との関連で検討することを目的とした。 健常成人9名を対象とし, 聴覚刺激によるオドボール課題を反復して3回以上施行し, N1, P2, N2, P3を分析対象とした。 また, 脳波の同時記録を行った。 結果, 9名中覚醒を維持した被験者 (以下W群) が5名, 実験中覚醒水準の低下 (Stage 1まで) を認めた被験者が4名であった。 結論として, (1) W群でもERPの潜時の再現性には個人差が認められた。 (2) 覚醒水準の低下により, 潜時の変動係数の個人差が大きくなった。 (3) Stage 1前半ではα波の変動および標的刺激後のα波の位相の同期が加算波形に影響を与えている可能性が考えられた。 (4) Stage 1後半では標的刺激がトリガーとなり, 睡眠-覚醒のパターンが繰り返され, 覚醒状態での認知・判断とは異なる反応が生じている可能性が考えられた。
  • 柊山 幹子
    1994 年 37 巻 3 号 p. 190-195
    発行日: 1994/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    当科でCochlear社製人工内耳手術を施行した症例のうち, 使用期間が1年以上になる7例の語音了解度を母音, 子音, 単音節, 単語, 文について評価し, その経過を検討した。
    人工内耳のみによる母音弁別能 (チャンス・レベル: 20%) は平均80% (範囲: 58-100%) で, 子音弁別能 (チャンス・レベル: 7.1%) は人工内耳のみで平均46% (範囲: 23-65%), 人工内耳読話併用で平均73% (範囲: 55-86%) であった。 良好な成績を示した5例の語音了解度は使用開始後3ヵ月あるいは6ヵ月までに急激に上昇した。 7例中, 最低の語音了解度を示した1例では使用2年後に母音弁別能が30%から58%に上昇し, 長期失聴症例の語音了解度は短期失聴症例のそれとは異なり緩徐に上昇することが示唆された。 また語音了解度の順調な発達のためには人工内耳の日常的な使用継続が大切だと思われた。
  • 奥野 秀次, 小松崎 篤
    1994 年 37 巻 3 号 p. 196-202
    発行日: 1994/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    骨導蝸電図を用いて, 同側および対側刺激によるAP (聴神経複合活動電位) の動態を観察し, その差異を検討した。 その結果, 正常耳では対側刺激によるAPと同側刺激のAPとの比較で, 潜時・振幅が対側刺激で延長および低下する形で定量的な差を示すことが認められた。 この結果は, 主として, 対側刺激の伝達時間の遅れと刺激量の減衰によると考えた。 潜時は量的に安定した値を示したため, 今後, 伝音障害耳における検討に用いられると考えられた。
  • 前田 知佳子, 小寺 一興, 広田 栄子, 北 義子, 三浦 雅美, 矢部 進
    1994 年 37 巻 3 号 p. 203-209
    発行日: 1994/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    TS-1語表を57-S語表, TY-89単音節語表の問題点を改善する目的で作製し, 3語表の比較検討を行った。 TS-1の明瞭度は, 20dB条件下では57-Sより有意に良好であり, 30dB条件下では57-SとTY-89より有意に良好であった。 子音別明瞭度を検討すると, 他の語表と比較して20%以上明瞭度が低かったのは, 57-S語表では20dB条件下の∫, t∫, wと30dB条件下の∫, dz, w, TY-89では30dB条件下のts, k, 母音と50dB, 40dB条件下のt∫, tsであった。 TS-1語表では40dB条件下のbであった。
    TS-1語表の特徴は, 録音状態が良いこと, 各検査語音のレベルが校正用純音に全て一致していること, 発話者の特徴として正常者が聞き誤る語音が少ないことである。 TS-1語表は音圧差を考慮することなく, 各語音の明瞭度結果を分析でき, 良好な音質の再生が永続的に可能な語表として有益である。
  • 大日向 由光, 荒木 倫利, 萩森 伸一, 川上 理郎, 牧本 一男
    1994 年 37 巻 3 号 p. 210-215
    発行日: 1994/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    突発性難聴25例に対して血液粘度, 血漿粘度を経時的に測定した。 対照群と比較検討したところ血液粘度, 血漿粘度に有意の上昇を示し, その差はずり速度が高値になるほど著明となった。 血液粘度と初診時の平均聴力との間に正の相関を認め, 高音障害型での血液粘度の上昇は聴力障害の程度に比して軽度であった。 血漿粘度に関しては低音障害型の症例において初診時の平均聴力との間に正の相関を認めた。 また, 治療を開始すると一般に経過とともに血液粘度, 血漿粘度は正常化する傾向がみられた。 聴力の回復に関しては短期間に急速に回復する群と血液粘度, 血漿粘度と聴力が正の相関を持って徐々に回復する群の2つの型に分けられた。 以上より血液粘度, 血漿粘度の測定は突発性難聴の治療方針の決定, 病因の推定等において有意義と考えられた。
  • 木村 謙一, 加藤 寿彦, 白石 君男, 江浦 陽一, 曽田 豊二
    1994 年 37 巻 3 号 p. 216-221
    発行日: 1994/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    正常成人14名 (n=28) のABR速波における陰性成分の頭皮上電位分布地図を作成し, 陽性成分の電位分布と比較検討した。
    NIとPI, NIIとPIIでは電位分布が異なっており, NIはPIIに類似した電位分布を示し, NIIは後頭部優位である点ではPIIに類似していたが刺激側による関係は逆転していた。 NIIIはPIIIに, NVはPVに類似した電位分布を示した。
    したがって, ABRの陰性成分は先行する陽性成分の起源と必ずしも同一でないと考えられ, 陰性成分の臨床応用について検討する際には考慮すべきと思われた。
  • 田中 英和, 小松崎 篤, 谷口 郁雄
    1994 年 37 巻 3 号 p. 222-228
    発行日: 1994/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    ネンブタール麻酔下のモルモット大脳皮質聴覚領Anterior fieldにおける応答潜時分布について検討を加えた。 音刺激は記録側の対側耳より与え, 単一神経細胞応答を細胞外で記録した。 等周波数線上における数箇所の測定点で, 等しい音圧の純音トーンバースト (CF) に対するニューロン応答のピーク潜時を比較すると, 最も腹側もしくは腹側寄りの測定点でピーク潜時は最も短く, そこから腹側もしくは背側に向かうにしたがって潜時は延長した。 この傾向は刺激音の音圧によって大きな影響は受けなかった。 この結果は応答潜時についても, 機能的構造が存在することを示している。
  • 福田 友美子, 森本 行雄, 四日市 章
    1994 年 37 巻 3 号 p. 229-235
    発行日: 1994/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    現在の日本社会における聴覚障害者のコミュニケーション手段の使用に関して, 先天性の重度聴覚障害者の集団を対象にして, 郵便によるアンケート調査を行った。 3740通の質問紙を発送したのに対して回答数は1696通で, 回答率は45%であった。 その結果次のことがわかった。
    1. コミュニケーションの相手によって, 異なったコミュニケーション手段を用いていた。
    2. 音声言語でのコミュニケーションが要求される場面では, 筆談を用いているものが多かった。
    3. コミュニケーションの手段として, 手話が最も有効であり, 続いて指文字・読話・補聴器の順に有効性が高いという判断がなされていた。
    4. 先天性の聴覚障害者であっても, 情報補償の方法として, 手話だけでなく文字による補償への希望も同様に多かった。
  • 太田 豊, 山本 昌彦, 寺山 善博, 木村 裕, 小田 恂, 草刈 潤
    1994 年 37 巻 3 号 p. 236-246
    発行日: 1994/06/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    内耳道内聴神経腫瘍2症例の聴力障害を蝸電図および誘発耳音響放射 (以下EOAEと略す) にて評価, 検討したので報告する。
    蝸電図検査は鼓室内誘導法にて行い, EOAEの測定では1kHzから2kHzまでの周波数帯で最も明瞭に反応が認められた周波数を仮にbest frequency (以下BFと略す) と呼称し, BFの検出閾値を求めた。
    症例1は46歳, 女性で, 左耳の内耳道内聴神経腫瘍である。 聴覚心理学的検査は内耳障害を示唆するものであった。 蝸電図およびEOAEからは, 主にラセン神経節から蝸牛神経の障害による難聴が示唆されたが, 軽度の有毛細胞領域障害も併存していた。
    症例2は36歳, 女性で, 左耳の内耳道内聴神経腫瘍である。 経過中に聴力変動 (回復) が観察された。 蝸電図およびEOAEからは, 有毛細胞領域の障害, およびラセン神経節から蝸牛神経の障害の併存が示唆された。
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