聴覚系の周波数選択能について, 結合音耳音響放射 (DPOAE) と心理物理学的同調曲線 (PTC) の関係を検討した。 DPOAE複合音 (f
1, f
2) の幾何平均は1k, 2k, 4kHzで, 2音の比f
2/f
1を1.2, f
2レベルはf
1のそれに対し-10dBに設定し, DPOAE入出力曲線を求めた。 またPTCは0.5k, 1k, 2k, 4kHzの検査音を閾値上10dBで与え, マスカー音 (純音) の中央に呈示する同時マスキング法を用いた。 DPOAEのf
1をPTCの周波数に該当させ, DPOAEの検出範囲のf
1音圧レベルをマスキングレベルに一致させたところDPOAEの検出周波数はPTCの変曲点に近似した。 DPOAEは蝸牛のactive processに関わるものと考えられており, PTCの変曲点は内耳障害では不明瞭になる。 このふたつが一致することは, 聴覚系の周波数選択能に大きな意味をもつと考えた。
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