AUDIOLOGY JAPAN
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38 巻, 4 号
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  • 高田 敬子, 松平 登志正, 山下 公一
    1995 年 38 巻 4 号 p. 255-262
    発行日: 1995/08/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    ティンパノグラムがA型とAd型を示す症例において, 外耳道圧を, (1) ティンパノグラムのピークに相当する圧力 (ピーク圧), (2) ピーク圧+50daPa (陽圧), (3) ピーク圧-50daPa (陰圧), の3通りの条件下で, 耳小骨筋反射の測定を行い, 結果を比較した。Ad型の症例のピーク圧における反射の検出率は, A型と比べて不良であった。ピーク圧で反射が検出されなかったAd型症例の多くは, 陰圧条件下で反射が記録され, これを含めるとA型とAd型の症例間で検出率に差はみられなかった。反射が検出された症例のうちでも, Ad型では陰圧の方が域値の低い症例が多かった。A型, Ad型群とも陽圧ではピーク圧と比べ, 反射の検出率は低かった。以上の結果は同側刺激, 対側刺激とも同様に認められた。
  • 第2編 損失情報量による音節聴取の解析
    山岸 豪敏, 牧嶋 和見, 大鶴 徹
    1995 年 38 巻 4 号 p. 263-269
    発行日: 1995/08/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    本研究では感音難聴者の音声聴取特性の評価指標として損失情報量を用い, 年齢層, 聴力型, 平均聴力レベルの各要因に関して, 子音部, 母音部の各音節毎に検討した。また子音部は有声と無声子音に分類して検討した。その結果, 子音部の損失情報量の値はほぼ1-2ビット, 母音部は0.5-1.0ビット, であることが認められた。さらに, 有声と無声子音による分類は定性的傾向として認められ, 有声子音はほぼ1.5ビット, 無声子音はほぼ1ビットであった。要因毎には年齢層, 聴力型群において母音部の損失情報量の値の差異が顕著であった。しかし, 平均聴力レベル群では損失情報量の値の差異は認められなかった。さらに各音節毎の音声聴取特性の変動から, 各音節の損失情報量の値はどの要因においてもほぼ同じ値となるが, 各群の音節の差異は区々であった。これらの結果より, 感音難聴者の音声聴取特性は, 年齢, 聴力型による検討を行うことが必要であると考えられた。
  • 日野 剛, 浅野 尚, 今野 昭義
    1995 年 38 巻 4 号 p. 270-277
    発行日: 1995/08/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    近年小児悪性固形腫瘍の領域において, 化学療法, 照射療法, 手術療法を組み合わせた集学的治療法がなされている。その治療の中心は多剤併用化学療法であり, 化学療法剤の副作用としては, CDDPによる腎障害, 聴力障害などが問題となる。そこで当院小児外科で治療された進行神経芽細胞腫症例を中心に聴力障害に関する検討を行った。純音聴力検査を行い得た21症例中16例に高音急墜型の聴力障害が認められた。CDDPの投与量が増加するにつれて, 聴力閾値が上昇する症例が多く認められた。片腎あるいは腎機能低下症例の群の方が腎機能正常群よりも聴力障害を起こしやすいことを示唆する結果であった。投与開始年齢が早いほど聴力障害の程度が高くなる傾向が示唆された。CDDP投与終了後聴力を1年以上観察し得た3例では聴力の悪化は認められなかった。今後これらの症例の経過の観察を続けるとともに, さらに症例を増やして検討を勧めていきたいと考えた。
  • 三島 丈和, 芳川 洋, 安藤 一郎, 西嶋 隆, 市川 銀一郎
    1995 年 38 巻 4 号 p. 278-283
    発行日: 1995/08/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    強大音負荷後のEOAE変化と強大音周波数との関係をTEP (total echo power) およびHPP (highest peak power) を指標に検討した。 1kHz純音を強音圧で負荷した場合, 1kHz刺激音に誘発されるEOAEのTEPおよびHPPが, 4kHz刺激音に誘発されるEOAEのそれよりも有意に抑制された。 一方3300-4800Hz帯域雑音を強音圧で負荷すると, 逆に4kHz刺激音に誘発されるEOAEのTEPおよびHPPが1kHz刺激音に誘発されるEOAEのそれよりも有意に抑制された。 これらの事より, EOAEを抑制させる強大音の周波数は, 刺激音の周波数とより関係がある事が示唆された。
  • 山川 卓也, 芳川 洋, 安藤 一郎, 市川 銀一郎
    1995 年 38 巻 4 号 p. 284-290
    発行日: 1995/08/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    剣道愛好家の中に, 難聴者が多いと言われている。我々は剣道難聴の原因を検討するために, 面打ち時の竹刀の打撃音, 頭部の衝撃 (振動加速度レベル), 及び両者の周波数分析を行った。また実験には当大学剣道部員 (三段) 2名の協力を得て, 竹刀の打撃時の強さ, 部位をなるべく一定にするよう練習をした後に行った。その結果, 竹刀の打撃音圧は面紐を強く縛った場合が120dB以上で最も大きく, エアークッションをいれるとやや小さくなった。また振動加速度レベルも面紐を通常よりも強く縛った場合が77dB以上で最も大きく, エアーや羽毛のクッションをいれた場合に振動の抑制が著明であった。以上より, 竹刀による打撃により難聴が発症する可能性が十分に示唆され, 今回我々の推奨した緩和材を用いれば打撃音圧と衝撃が減少させることが可能であった。
  • 高橋 和彦, 木村 伸一, 和田 哲郎, 阿瀬 雄治, 原 晃, 草刈 潤
    1995 年 38 巻 4 号 p. 291-297
    発行日: 1995/08/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    ステロイドは, 内耳性難聴の治療によく用いられ臨床的経験上効果があるとされている薬剤である。 今回我々は, 白色モルモットを用いて強大音負荷後毎日メチルプレドニゾロン (mPSL) を腹腔内投与し1週間後に蝸牛神経複合活動電位閾値を測定し閾値上昇を比較し, ステロイドの音響外傷に対する治療効果を検討した。 強大音として2 kHz純音, 110dB, 115dB, 及び120dB SPLを10分間負荷した。 mPSL投与量として120dBでは12mg/kg及び40mg/kg, 115dBでは12mg/kg, 110dBでは12mg/kgとし, 対照群では生理食塩水を投与した。 115dB及び120dBの場合にはステロイドの効果はなかったが, 110dB負荷の場合には明らかにステロイド投与群の方が対照群に比べて閾値上昇は軽度であった。 これらの結果より, ステロイドは治療薬として比較的軽度の強大音負荷の場合には有効な薬剤であると考えられた。
  • 小寺 一興, 堀内 美智子
    1995 年 38 巻 4 号 p. 298-304
    発行日: 1995/08/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    急墜型感音性難聴患者36例を対象に語音明瞭度検査を行い弁別能力を検討し, 以下の結果と結論を得た。 1) 2000Hz, までの聴力が正常であれば会話理解に障害はなかった。 2) 急墜型感音性難聴患者の語音弁別能力は, 1000Hz以下の周波数に難聴がある例では, 高度に低下していた。 3) /s/を除く無声子音弁別のキューは, 1000Hz以下の低・中周波数帯に含まれている。 4) 日本語の有声閉鎖音 (破裂・摩擦音) および鼻音の識別には, 2000Hz以上の高周波数帯の情報が必要である。
  • 和田 仁, 高橋 辰, 大山 健二, 高坂 知節
    1995 年 38 巻 4 号 p. 305-312
    発行日: 1995/08/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    聴覚のダイナミックレンジの広さから, 内耳蝸牛において, 何らかの増幅機構の存在が示唆されているが, そのメカニズムについては, まだ明らかにされていない。そこで, 本研究では, レーザードップラー振動計と複合顕微鏡を組み合わせた計測システムを構築し, 蝸牛基底板の振動を計測することを試みた。また, distortion-product otoacoustic emissions (DPOAEs) との同時計測を試み, 耳音響放射と, 基底振動の関連性について, 検討した。その結果, 蝸牛内の増幅機構の存在が明確となり, その増幅機構は, 刺激音圧が小さいときに強く働くことが認められた。また, DPOAEs発生には, 基底板応答の非線形性が関与していると, 推察された。
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