AUDIOLOGY JAPAN
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39 巻, 3 号
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  • 池原 由香, 加我 君孝, 田中 美郷, 都筑 俊寛, 徳光 裕子, 内山 勉
    1996 年 39 巻 3 号 p. 197-203
    発行日: 1996/06/29
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    昭和62年出生の風疹難聴児9名について追跡調査を行い, 生下時状況, 聴力, 言語発達, 就学状況について調べ, 神経心理学的もしくは発達上の問題について検討した。 4名が低出生体重児で, そのうち3名には心奇形・新生児仮死・脳髄膜炎の合併があった。 初診時年齢は2カ月-2歳, 平均聴力レベルは78-113dBの範囲にあった。 始語は1歳1カ月-6歳であった。 就学先は聾学校が6例, 普通小学校が3例であった。 4例にて施行したWISC-R知能検査では, 言語性知能指数は78-118, 動作性指数は79-118であった。 1例に施行した新版K式知能検査では, 言語・社会領域の発達指数は20, 認知・適応領域の発達指数は56であった。 出生体重が2500g以上の児と比較して, 2500g未満の児では言語発達・精神発達での遅れが見られ, 風疹難聴児の場合, 低出生体重は神経心理学的発達に関達性があることを否定できない。
  • 篠原 尚吾, 庄司 和彦, 児嶋 久剛, 宮田 耕志, 本庄 巖
    1996 年 39 巻 3 号 p. 204-208
    発行日: 1996/06/29
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    音刺激は蝸牛で場所情報としての周波数情報と, 各ニューロンの発火パターンとしての時間情報に変換されるが, 語音認知においては時間情報の重要性が注目されている。 そこで聴ニューロンの同期的発火である複合活動電位 (CAP) を指標とし, 感音難聴者の蝸牛での語音の時間情報を調べ, 正常者のそれと対比した。 方法は感音難聴耳17耳に対し母音 [a] とCV音節 [ka] を用い蝸電図を用いCAPを導出した。 その結果母音の持続部に声の基本周波数に一致するCAPと, 語頭の大きな振幅のCAPを示す正常耳と同じ型が9耳と最も多かったが, それ以外の型も8耳存在した。 なかでも母音の持続部に比べ語頭のCAPの振幅が有意に低下する型が多く, これはメニエール病患者に特徴的であった。 以上より感音難聴耳の一部では語音は正常耳と異なる時間情報に変換されている可能性があり, この様なパターンの違いは蝸牛の物理的な特性に起因すると推察された。
  • 鈴木 陽一, 伊勢 友彦, 浅野 太, 曽根 敏夫, 大山 健二, 高坂 知節
    1996 年 39 巻 3 号 p. 209-223
    発行日: 1996/06/29
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    難聴者に, 健聴者と同等のラウドネスを与えるように補聴器の利得を決定できる新しいタイプの補聴器が見られるようになってきた。 このような補聴器の特性の決定に当たっては, 難聴者と健聴者のラウドネスが等しくなる音のレベルの関係を表す関数-ラウドネス補償関数-が必要である。 しかし, ある難聴者のラウドネス関数の測定結果から, ラウドネス補償関数を推定する場合には, 健聴者のラウドネス関数のばら付きを考慮する必要がある。 これは, 難聴者が健聴であったとしたときにどのようなラウドネス関数を示すかは知ることができないからである。 そこで本論文では, その難聴者のラウドネス関数の被験者内分散と, 健聴者のラウドネス関数の被験者間分散の和を考慮することにより, ラウドネス補償関数をある幅をもった形で推定することを提案した。 これにより様々なラウドネス感覚を持つ難聴者に対して, 妥当なラウドネス補償関数を推定できることを示した。
  • 三上 純一
    1996 年 39 巻 3 号 p. 224-234
    発行日: 1996/06/29
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    補聴器のT特性表示は実用上非常に分かり難い欠点がある。 さらに周囲の騒音・磁気ノイズにも影響されやすく, 正確なデータをとるのも困難である。
    これらの問題を解決するため, T特性をより明確に測定・表示する方法を開発した。 この測定法の調整はM特性の規準状態を元にして行うため, 得られるデータは測定手順が簡単ながらきわめて具体的で種々の処理にも応じられて利用価値の高いことが認められた。 この測定法により, ノイズの影響の小さなT特性曲線が得られ, Tの周波数特性にも注目させるきっかけができた。 さらに, 磁気ループ活用中の補聴器装用耳への音声の入力, 誘導コイル感度と磁界強度・利得調整の関係がより明らかにされた結果, 現在の磁気ループ方式の具体的な改善点を一層明らかにできた。
  • 竹内 義夫, 村山 真弓, 河野 薫
    1996 年 39 巻 3 号 p. 235-239
    発行日: 1996/06/29
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    30耳を対象に, ラジオイヤー社B-72およびリオン社BR-41の二種の骨導受話器骨導検査耳に気導受話器を装着し, 骨導受話器を前額に圧抵するABCマスキング法の骨導検査の骨導聴力レベルの0dB基準値を求めた。 正常青年男女30名30耳を用いて, 250-4000Hzの5周波数の気導および骨導域値を自記記録法によって測定した。 非検査耳は40dB実効マスキングレベルの狭帯域雑音でマスクした。 B & K 4930メカニカルカプラによって計測したABCマスキング法の等価域値フォースレベルはISO 7566の前額骨導の基準等価域値フォースレベルに比べ, 1000Hz以下の周波数においては外耳道閉鎖効果に相当する差を示し, 2000, 4000Hzにおいてほぼ等しかった。 また骨導受話器の器種によって等価域値フォースレベルに差はなかった。 今回の測定結果は少なくとも, より実証的な資料が発表されるまでは, ABCマスキング法骨導検査の基準等価域値フォースレベルの基礎資料であると考える。
  • 安達 忠治, 小寺 一興, 設楽 仁一, 芦野 聡子
    1996 年 39 巻 3 号 p. 240-244
    発行日: 1996/06/29
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    語音明瞭度や難聴の種類の違いが, 日常生活の理解度に違いをもたらすかを検討した。 対象は, 30dB-60dBの難聴者で以下の3通りにわけた。 1. 感音性難聴者を語音明瞭度別に3群。 2. 語音明瞭度が同等な感音性難聴, 混合性難聴, 伝音性難聴の群。 3. 聴力レベル別に2群。 方法は質問紙法を用い, 理解できる, 理解できないのいずれかを選択させた。 聴力レベルの10dBの差による理解度への影響と, 語音明瞭度の40%の差による理解度への影響は, ほぼ同等であった。 聴力レベル, 語音明瞭度が同等な場合の, 感音性難聴と伝音性難聴の比較では, 複数での会話やスピーカからの音にたいして, 伝音性難聴のほうが理解度が良好であった。 聴力レベル, 語音明瞭度, 難聴の種類のすべてにたいし影響をうける項目は, 5人くらいの会議, マイクを使った講演会, 劇場などの音であった。 これらの項目は, コミュニケーションのハンディキャップ評価のために, 有効性の高い質問であると考えられた。
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