AUDIOLOGY JAPAN
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40 巻, 4 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 荒尾 はるみ, 別府 玲子, 柳田 則之
    1997 年 40 巻 4 号 p. 201-208
    発行日: 1997/08/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    脳の可塑性を考えると1歳6ヵ月児健診にて言語発達に大きな影響を及ぼす中高度難聴児を検出し, 必要な治療教育がなされるべきである。 愛知県内6市町村にて1歳6ヵ月健診時に質問票と自己検査からなるアンケート方式による聴覚検診を1798名に施行した。 この検診で重症の両側滲出性中耳炎3名, 右一側聾1名, 右一側聾に両側滲出性中耳炎の合併例1名, 両側中等度感音難聴に左滲出性中耳炎合併例1名, 両側高度感音難聴1名の計7名が検出された。 今回の聴覚検診システムが正しく遂行されれば1歳6ヵ月時に中等度難聴が検出されることが確認された。 1歳6ヵ月児聴覚検診で高度難聴児は必ず押さえ, 言語発達遅滞児には特に注意しつつ, 三歳児聴覚検診では, 見逃されてきた軽中等度難聴児を確認するというように, 2つの聴覚検診を一つの流れの中で捉えていくことで, 1次スクリーニングの不安定さなどからくる中等度難聴児の見逃しの可能性も補えると考える。
  • 中原 はるか, 熊川 孝三, 武田 英彦, 氏田 直子
    1997 年 40 巻 4 号 p. 209-217
    発行日: 1997/08/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    人工内耳長期装用者 (スイッチオン後4年以上経過) について, 電極の安定性を調べ, 蝸牛神経に与える影響について考察した。 人工内耳の電極は, スイッチオン後1年は変動するが, 1年を過ぎると安定し, 4年を経過しても電極使用率の変化はほとんど認められず, 安定した状態を示した。 全ての電極が使用可能であった10症例では, 各電極について, 最小可聴閾値 (T値)・最大快適レベル (C値)・ダイナミックレンジ (DR) とも4年間で平均25μA以内の変動と極めて安定しており, 10年の長期装用症例でも電極は安定した反応を示した。 人工内耳による長期間の電気刺激が蝸牛神経にもたらす影響は, 聴取能に影響を与えるほど大きなものではないと結論した。
  • 日野 美奈子, 麻生 伸, 藤坂 実千郎, 山本 森弘, 上田 晋介, 渡辺 行雄
    1997 年 40 巻 4 号 p. 218-222
    発行日: 1997/08/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    小児の難聴で聴力変動を繰り返すために頻回にステロイドを含む治療を必要とした10症例について, その特徴を報告した。 全例, 両側中等度以上の難聴で補聴器を装用し言語訓練を受けてきた小児で, 250Hzから8kHzまでの6周波数の総和で30dB以上の聴力低下を少なくとも3回以上繰り返し, その度に治療を受けていた。 聴力変動は中低音域に多く, 6例ではめまいを訴えたことがあり, 内リンパ水腫を推定するためのグリセロール試験, フロセミド試験でも5症例が陽性を示した。 一側の高度難聴後に長期間を経てめまいや聴力変動を来す疾患として, 遅発性内リンパ水腫が知られており, この中には両側型といわれる症例も存在する。 小児期の発症についての報告は少ないが, 頻回に聴力変動を反復する原因の一つとして内リンパ水腫が関与している可能性について考察した。
  • 矢部 多加夫, 澤木 誠司, 中本 吉紀, 伊藤 茂彦, 小寺 一興, 中村 雅信
    1997 年 40 巻 4 号 p. 223-230
    発行日: 1997/08/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    スポーツクレー射撃時の衝撃音が射手に与える影響について検討するために, 衝撃音測定用のダミー人形装置 (KEMAR) を用いて衝撃音を測定し, 63名のクレー射手を対象に純音聴力検査と質問紙調査を実施した。 1) 衝撃音のピーク音圧は約155dBで, 2msec前後にピークをもち, 約50msecで減衰した。 2) 銃口側耳と反対側耳間にピーク音圧差が認められ, 耳介の集音作用が考えられた。 3) 音響外傷予防用具の遮音効果についてはイヤープラグとイヤーマフの併用, イヤープラグ, イヤーバルブ, イヤーマフの順であった。 4) 高音域で明らかな高音急墜ないしC5 dipを示した異常群は非異常群に比べ平均年齢が高く, 平均経験年数が長く, 予防用具使用率が低率を示した。 音響外傷予防用具は遮音に効果的で, 予防用具の必要性と適切な使用法についての今後の一層の普及, 使用率の向上が望まれる。
  • 越智 健太郎, 木下 裕継, 大橋 徹
    1997 年 40 巻 4 号 p. 231-236
    発行日: 1997/08/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    蝸牛複合電位 (compound action potential: CAP) の順応現象を, モルモットにおいて正常状態での起こり方, さらに異常時のモデルとして低体温負荷時のCAP順応現象について検討を加えた。 CAP順応現象の検討は, クリック間間隔 (Δt) が2, 4, 8msの10個のクリックからなるクリック・トレイン刺激により行われた。 Δt, 音圧のCAP順応現象におよぼす影響に関する検討では, Δtが大きくなるとCAP順応現象が起こりにくくなり, 音圧が大きくなるにしたがってCAP順応現象が起こりにくくなる傾向を認めた。 低体温時に認めたCAP振幅の有意な減少は, 神経放電のdesynchronizationに基づくものと考えられた。 また, 閾値に変化をおこすことなくΔtが4msおよび8ms時に順応現象が起こりにくくなる傾向を認めたが, CAPの順応現象は, ある種の内耳障害の検出に役立つ可能性があるものと考えられた。
  • 中尾 美穂, 西山 彰子, 土井 玲子, 鈴木 敏弘, 志多 真理子, 立本 圭吾, 小宮 精一, 村上 泰
    1997 年 40 巻 4 号 p. 237-245
    発行日: 1997/08/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    難聴のハイリスク新生児・乳児100例にABRを施行し, ABRの結果と追跡後の聴力の最終診断との比較および月齢によるABRの閾値・潜時の推移を検討した。 初回ABRが正常であった51例中には最終診断においても難聴例は認められなかった。 一方異常であった47例中24例 (51%) は後に聴力正常と判明したがこれらの約9割が早期産例や2ヵ月以下の早期検査例であり, 月齢6ヵ月前後の再検時に過半数が正常所見を示した。 今回の検討症例中に高度および中等度難聴例が14例と高率にみられ, 半数において1歳前後と早期の補聴器装用・聴能訓練が可能であった。 リスク因子では胎生期因子を有するものが半数を占め, 周産期因子のみを有したものは1例であった。 以上よりハイリスク児においてはNICUと連携をもちABRによる早期の聴覚検査が望まれる。 また異常所見を認めた場合には再検が必要でありその時期として月齢6ヵ月頃が適当であると考えられた。
  • 延藤 洋子, 大崎 勝一郎, 鄭 鴻祥, 上野 満雄
    1997 年 40 巻 4 号 p. 246-251
    発行日: 1997/08/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    突発性難聴の報告は多いが, 今回著者らは日本 (近畿, 中四国地区) と中国 (北京地区) の187例を対象に, 両地区における背景因子の差異ならびに初診時に得られたデータのうち, 予後への関連因子についてχ2検定を用いて統計学的検討を加えた。 日本110例と中国77例の地区別検討では, 性別, 年齢分布などの患者背景に, 両群間に有意差は認められず, 相違が認められたのは治療法で, 治療効果に関しては有意差は認められなかった。 治療予後に関しては改善率, 有効率, 治癒率に分類類して検討した。 その結果, 良好な予後が期待できる諸因子はめまい無し, 低音障害型, 50歳未満, 早期の治療開始, 初診時聴力レベル60dB未満という条件を満たすものであったが, 特に治療開始日数に関して, 3日以内の治療開始であれば治癒率42%, 有効率62%が, 5日以内であれば改善率85%が期待できることが示唆された。
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