AUDIOLOGY JAPAN
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41 巻, 2 号
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  • 中島 務, 加地 美千子, 伊藤 彰英, 朝日 清光
    1998 年 41 巻 2 号 p. 89-93
    発行日: 1998/04/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    1976年から1979年に名古屋大学耳鼻咽喉科に突発性難聴にて来院し「固定時」まで聴力の経過がおえた79人に1996年にその後の聴力, 耳鳴につきアンケート調査を行った。30人がアンケートに答え, そのうち13人には再度名古屋大学にて純音聴力検査, 語音聴力検査を行った。アンケートの結果で一番多かったのは, 聴力, 耳鳴ともに「変化なし」であった。13人の再来院時の聴力検査は, 「固定時」と比べて患耳のみ悪化していたのが3人, 健耳のみ悪化していたのが2人, 両耳悪化していたのが5人であった。年齢, 聴力変化からみて健耳の悪化は加齢によるものであり, 患耳の悪化は, 加齢の要素はあるものの突発性難聴そのものの影響が考えられた。
  • 谷野 徹, 折原 廣巳, 堀越 秀典, 小田 恂
    1998 年 41 巻 2 号 p. 94-97
    発行日: 1998/04/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    突発性難聴の初診時聴力とその臨床像を明確にするため, 初診時のオージオグラムで125Hz-8kHzの7周波数の閾値が60dB-69dBの間に含まれている症例を除外し, 7周波数全てが60dB未満の群, 全てが70dB以上の群, さらに聾の群に分け, この3群間に臨床像の違いが存在するか否かを検討した。
    初診時の聴力の低下している群ほどめまいの随伴例, 温度眼振反応低下例 (以下CP例と略す) の割合が多く, 治癒率も低かった。しかし難聴の軽度な例でも予後が不良なもの, 高度な例でも予後が良好なものも認められ, 初診時の聴力レベルのみでは予後を予測することは困難で, 他の予後に影響する因子を考慮に入れながら, 注意深く聴力経過を観察する必要があると思われた。また聾の例でも, 多少なりとも聴力の改善が認められるものが少なくないので, 病初期の治療は十分に行うべきであると考えた。
  • 千葉 洋丈, 佐藤 恒正, 野原 忍, 飯塚 尚久, 山根 雅昭
    1998 年 41 巻 2 号 p. 98-106
    発行日: 1998/04/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    突発性難聴新鮮例120例につき, 語音弁別能を主として予後推測の可能性と現行の純音による判定基準を検討した。方法は純音および語音弁別能を頻回に継時的に測定し, その経過曲線を予め設定した平均聴力レベルに対する語音弁別能の棄却下限限界線 (R線) と対比した。その結果, 経過により4群に分類された。初診時にR線より上方に位置する場合は全例が70%以上の語音弁別能となった。R線より下方に位置する場合は, その経過により3群に分類された。R線と交差し語音弁別能が70%以上に達する群は, 達しない群より早期にR線と交差し, 初診時のオージオグラム型に有意差を示した。終始R線以下にあった群は後迷路障害を有する可能性がある。現行の判定基準と対比すると概ね一致していたが, 著明回復群に語音弁別能低下例が混在し, 語音聴力検査の重要性が示唆された。
  • 馬場 俊吉, 渡邊 健一, 神尾 友信, 八木 聰明
    1998 年 41 巻 2 号 p. 107-111
    発行日: 1998/04/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    聴力予後から突発性難聴を観察した。症例は212例で全例プロスタグランディンE1, 低分子デキストラン, 副腎皮質ホルモンで治療を行った。聴力予後は治癒71例, 著明回復55例, 回復54例, 不変32例であった。治癒, 著明回復の予後良好群では発症5日目までに治療が開始されていた。一方, 回復, 不変の予後不良群では発症8日目以降に治療が開始され両群間に差を認めた。予後良好群の年齢は49歳以下であった。初診時聴力を対側耳聴力で補正すると高齢者ほど聴力損失は軽度で, 聴力改善度も小さかった。また, 初診時聴力と予後との間には有意な関係は認められなかった。しかし, 対側耳聴力には予後良好群と不良群の間に有意差を認めた。めまいの自覚や自発眼振を認めたものは予後不良群に多くみられた。
  • 大迫 廣人, 東野 哲也, 山崎 正幸, 牛迫 泰明, 小宗 静男, 森満 保
    1998 年 41 巻 2 号 p. 112-117
    発行日: 1998/04/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    ウログラフィン治療に対する反応性を見る目的で, 本剤単独療法で治療後一週間以内に治癒ないし著明回復に至った突発性難聴症例を, 早期反応群として臨床的特徴を検討した。発症から治療開始までの期間や年齢には他の群と有意差なかったが, 早期反応群にはめまいの随伴例が1例もなく, 女性より男性に多い傾向が認められた。早期反応群の治療前の聴力像は4000Hzと8000Hzの閾値が比較的保たれる傾向がある一方, 反応不良群との間に有意差を認めた。早期反応群の聴力改善は250Hz, 500Hz, 1000Hzに顕著に見られ, 治療後一週間でほぼ固定時聴力まで達していた。これらの特徴は, 性差を除けば予後良好の突発性難聴一般に共通したものであり, ウログラフィンに反応する内耳病態が特殊なものではないことが示唆された。
  • 泰地 秀信, 小川 茂雄, 岡本 健
    1998 年 41 巻 2 号 p. 118-123
    発行日: 1998/04/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    突発性難聴の治療については, 信頼できる無作為化比較試験の報告は少なく, 評価できる報告のうち有効性が認められたのはステロイドの投与のみである。今後突発性難聴について臨床試験を行うとき, 聴力回復の評価をどのように行うべきか検討した。現行の厚生省研究班の基準は検出力 (対立仮説が真のときにそれを正しく検出する確率) が小さく, また初診時聴力の基準を考慮していないなどの問題がある。そのため, 今回は聴力の改善度, 改善率, および固定時聴力について判定基準としての有用性を検討した。改善率が数量であることと, 初診時聴力の程度を反映し, 逆に初診時聴力との相関が少ないことから最も優れているものと考えられた。
  • 佐野 肇, 岡本 牧人, 平山 方俊, 新田 光邦, 小野 雄一
    1998 年 41 巻 2 号 p. 124-129
    発行日: 1998/04/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    突発性難聴の聴力改善を評価する方法について, 質的判定法として治癒率, 準治癒率を提唱し, 量的判定法である聴力改善度, 聴力改善率と比較検討した。突発性難聴症例を初診時聴力により3つの群に分けて各判定法を検討した結果, 治癒率, 準治癒率の値は各症例群の最終固定時の聴力の分布をよりよく反映し, 量的判定法に比較してより妥当性が高かった。さらに聴力改善良好と不良の境界線として, 固定時の5周波数平均聴力が30dB以内に入った症例を準治癒と定義してその割合を求め指標とすることを推奨した。
  • 佐藤 美奈子, 神崎 仁
    1998 年 41 巻 2 号 p. 130-134
    発行日: 1998/04/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    突発性難聴の予後を左右する因子に関しては, 多くの検討がなされ初診時の聴力レベル, めまいの有無, 治療開始までの日数, 聴力型などの影響が知られている。そこで突発性難聴も悪性腫瘍等と同じく, いくつかの因子を組み合わせ, 治療開始前より予後の予測ができるのではないかと考えた。今回はめまいの有無, 初診時の聴力レベルの2つの因子を組み合わせ, 治癒に至る確率, 聴力改善や予後判定の予想など詳細に予後を予測するためのグレーディングを試みた。また, 予測される予後に比べ, 治療の効果が良好または不良であった症例を集め, 若干の検討を加えた。
  • 井上 庸夫, 田中 康夫, 石田 和男, 渡辺 建介
    1998 年 41 巻 2 号 p. 135-141
    発行日: 1998/04/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    内耳障害に起因すると考えられる急性感音難聴耳の誘発耳音響放射 (EOAE) 記録において, 遅成分と速成分の検出閾値差は予後の推測に役立つことが示唆されてきた。純音聴力レベル4分法平均値55dB以下の低音障害型急性感音難聴と突発性難聴のEOAEを比較検討すると両者の遅成分検出閾値は共に聴力レベルと有意な相関を示した。聴力レベル30dB以下の両疾患非回復群のEOAE検出閾値では遅成分から速成分を差し引いた値が負を呈することは極めて稀であった。EOAE検出閾値の遅成分-速成分の値の正負は予後判断に有用な指標であるといえる。
  • 低音障害型との比較
    十二町 真樹子, 麻生 伸, 木村 寛, 山本 森広, 大井 秀哉, 渡辺 行雄
    1998 年 41 巻 2 号 p. 142-146
    発行日: 1998/04/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    新鮮例で経過観察し得た突発性難聴79例と急性低音障害型感音難聴 (ALHL) 23例の蝸電図成績を分析した。ALHLは聴力が変動する反復型と変動しない単発型に分類した。反復型は単発型よりもSP/AP比が高値を示し, 内リンパ水腫の存在が示唆された。一方, 突発性難聴の各聴力型間にはSP/AP比の平均値に有意差はみられず, 低音障害型のSP/AP比も高くなかった。すなわちALHL単発型は寧ろ突発性難聴の低音障害型に近い結果を示した。突発性難聴の著明回復群は不変群よりもSP/AP比が高値を示したが, 治癒群は不変群と有意差がなかった。著明回復群には高度難聴を示した症例が多いが, 治癒群には軽度, 中等度難聴が多く改善幅が少ないことが相違点としてあげられた。突発性難聴の予後良好例はSP/AP比が高いとは言えないが, 著明回復群における高いSP/AP比は, 内耳病態の可逆性を表している可能性はあると考えられた。
  • 吉田 晋也, 野村 泰之, 池田 稔
    1998 年 41 巻 2 号 p. 147-151
    発行日: 1998/04/30
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    小脳背側に発生した巨大な髄膜腫によって急性感音性難聴で発症した症例を経験した。症例は29歳, 女性で突発性の難聴で発症するまでは無症状であった。初診時高音急墜型感音性難聴を認めたが, 他の神経症状なく, 突発性難聴と診断しステロイド療法を開始した。2週後に聴力はやや改善したが自記オージオグラムJerger III型, 語音聴力の低下, ABRでのII波以降の消失を示した。そのため小脳橋角部腫瘍を疑いMRI施行したところ, 小脳背側に巨大な腫瘤陰影を認めた。脳神経外科にて腫瘍摘出術を施行し, 術後純音聴力, 語音聴力, ABRのいずれも正常に回復した。本症例での難聴の原因は蝸牛神経の圧迫により伝導障害を生じたものと考えられた。
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