AUDIOLOGY JAPAN
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41 巻, 6 号
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  • 三島 丈和, 芳川 洋, 西嶋 隆, 太田 智幸, 安藤 一郎
    1998 年 41 巻 6 号 p. 707-716
    発行日: 1998/12/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    耳音響放射 (以下OAE) における年齢の影響をILO88, 92を用いて検討した。これまでの年齢とOAEに関する報告は, 高音域を中心に聴力レベルが低下している対象を含めて検討したものが多い。そこで, 標準純音聴力レベルが全周波数で20dB以内にある者を対象にして検討した。自発耳音響放射 (SOAE) は女性220耳を, 誘発耳音響放射 (EOAE), 歪成分耳音響放射 (DPOAE) は男女80耳を検討対象とした。SOAEの出現率は, 各年代で差がなかった。EOAEは年齢の増加に伴い4-kHz FEP出現率, TEP値が低下した。DPOAEのDPレベルも, 年齢の増加に伴い高音域で著明に低下し, 中音域で有意差が出た周波数もあった。これより, EOAE, DPOAEは純音聴力検査で検出できない年齢による聴覚系の変化を反映する事が示唆された。また, 中音域でのDPレベルの有意差は, 中耳動特性の年齢による変化と関連があると推論した。
  • 新居 康彦, 疋田 和彦, 米本 清, 田内 光
    1998 年 41 巻 6 号 p. 717-724
    発行日: 1998/12/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    疑似騒音環境下および実使用環境下でFMワイヤレス補聴システムの有効性を検討した。ステレオ録音した電車内の走行騒音と病院ロビーの騒音を騒音源として, 無響室内に疑似騒音環境をつくり, 平均聴力レベル (4分法) 40-70dBの軽中等度高齢難聴者11人を対象に, 駅名 (S/N=0dBで提示) および人名 (S/N=10dB) による単語了解度を測定した。マイク入力のみの場合に対してFM入力 (マイク同時作動) の場合, 15-70% (駅名), または5-55% (人名) 単語了解度が向上した。また, 日常生活での装用評価から, テレビ音声や会議での会話が通常使用している補聴器よりも明瞭に聞き取れ本システムが有効であると考えられた。さらに, 本システムで患者呼び出しシステムを構成し, 実使用環境 (仮運用) で被験者26人 (平均聴力レベル23-100dB) を対象に呼び出し音声の聞き取り評価を行った。高度難聴を含む被験者81%が「良く聞こえた」または「普通」と回答し, 呼び出しシステムは高度難聴者にも有効であると考えられた。
  • 加藤 朗夫, 河野 淳, 博久 詠司, 鈴木 衞
    1998 年 41 巻 6 号 p. 725-730
    発行日: 1998/12/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    人工内耳の適応の一つとして平均聴力レベル90dB以上, かつ補聴器による聴覚補償が不可能なことがある。今回, 補聴器装用閾値別にみた聴取能の比較を行い, 手術適応評価について検討を行った。WSPおよびMSP使用者は聴覚のみで補聴器装用閾値55-70dBの聴取成績に, SPEAKでは55dB以下の群に匹敵した。補聴器装用閾値測定の人工内耳手術適応評価項目としての有用性が示唆された。
  • 玉井 ふみ, 加我 君孝, 児玉 真理子
    1998 年 41 巻 6 号 p. 731-739
    発行日: 1998/12/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    臨床的に古典型Pelizaeus-Merzbacher病と考えられる男児9症例の聴覚認知および言語発達の評価・指導を行った。乳児期に発症した先天性眼振, 頭部・体幹・上肢の振戦, 下肢の痙性麻痺の進行が認められた。MRIを実施した7例全例のT2強調画像で白質全体に高信号を認め, ABRでII波またはIII波以降の消失が認められたことから, 大脳・脳幹白質の髄鞘形成不全が示唆された。聴力検査では正常または軽度閾値上昇が7例, 中~高度閾値上昇を示したものが2例であった。2例とも経時的に聴覚閾値の改善が認められた。言語理解は, 9例とも日常会話の理解は良好で, 実用的な聴覚認知には問題がないと考えられた。言語表出は, 8例に重度の運動障害性構音障害, 1例に失調性構音障害が認められた。聴覚理解が比較的良好であるのに比べ, 表出に著しい障害がみられ, 音声言語以外のコミュニケーション手段の獲得が重要と考えられた。
  • 小池 卓二, 和田 仁, 小林 俊光, 高坂 知節
    1998 年 41 巻 6 号 p. 740-745
    発行日: 1998/12/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    滲出性中耳炎の治療には多くのタイプの中耳換気チューブが使われている。 これらのチューブは, 主に長期留置を目的としてデザインされており, チューブのタイプが中耳伝音特性に及ぼす影響に関する報告は少ない。 本研究では, 独自に開発した有限要素法のプログラムを適用し, ヒトの中耳モデルを構築した。 そして, 中耳換気チューブの材質および留置位置が, 中耳伝音特性に及ぼす影響を解析した。 その結果, 以下の知見が得られた。 (1) チューブの材質として, シリコンなどの軽いものが適している。 (2) 軽量なチューブを用いた場合は, 留置位置の違いによる影響は小さい。 比較的重いチューブを使用する場合は, 鼓膜前下象限に留置すると良い伝音特性が得られる。
  • 井上 仁郎, 津村 尚志
    1998 年 41 巻 6 号 p. 746-754
    発行日: 1998/12/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    適応法による周波数弁別閾測定 (1000Hz) における訓練の学習測度として正答率と共に反応時間を用い, 測定に未経験の高齢被験者 (61-69歳男性10名) の訓練および周波数弁別閾測定過程を検討した。また, 測定中に素早い応答を要求する教示を行った「教示群」と, 教示を行わない「非教示群」の2群に分けて教示の影響も検討した。その結果, 1) 音刺激の有無を検知するだけの単純反応時間測定課題では, 両群ともに50試行程度で反応時間が安定し, 訓練が完了した。2) 教示群では, 約160試行で訓練中の反応時間がプラトーに達し, 反応時間を応答操作の訓練完了の一つの基準として利用可能な事が示唆された。3) 測定を続けると, 徐々に周波数弁別閾が低下していく傾向が見られる。どの時点の閾値を採択するか基準が必要であるが, 教示群における訓練完了後の閾値を採択するという方法が, 一つの有望な基準だと考えられた。
  • 城間 将江, 菊地 義信, 河野 淳, 鈴木 衞, 加我 君孝
    1998 年 41 巻 6 号 p. 755-764
    発行日: 1998/12/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    人工内耳装用者における音楽的要素の知覚度を調べる目的で, (1) リズム弁別, (2) 音程の弁別, (3) 楽器音の音色識別, (4) 旋律の知覚, (5) アカペラ歌唱の知覚テストを作成し施行した。 対象は成人中途失聴者16名で, 14名がNucleus 22, 2名がClarion人工内耳システムの使用者であった。 各テストの平均正答率は, リズムが90%, 音程は51.8%, 音色は25.8%であった。 旋律は11.8%と低い正答率であったが, 同旋律のアカペラ歌唱では71.4%に改善した。 なお, 語音聴取率と旋律の知覚率との相関は低く, 人工内耳機器間による差も無かった。 本研究から, 現在の人工内耳システムは強度の時間情報伝達は良好でリズムや語音の知覚には適しているが, 微細なスペクトルエンベロープの弁別が必要な楽音の知覚には不十分であることが示唆された。
  • 保谷 則之, 小川 郁, 井上 泰宏, 斎藤 秀行, 原田 竜彦, 佐藤 美奈子, 神崎 仁
    1998 年 41 巻 6 号 p. 765-769
    発行日: 1998/12/31
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    初診時聾型を呈した突発性難聴と聾を呈した突発性難聴との聴力予後の比較を行い, さらに聾型において残聴を認めた周波数と認めない周波数における固定時聴力について検討した。聾型の予後は治癒のものから不変のものまで様々であったのに対し, 聾の症例は概ね予後不良であった。聾型の周波数別の検討では中音域に残聴を認めた症例の予後が比較的良好であった。一般に聾型突発性難聴の予後は不良とされるが, 中音域, 特に2kHzの残聴の有無が, 聾型突発性難聴の予後を予測する指標となる可能性が考えられた。
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