多彩な中枢神経症状を呈し, 高度聴覚障害を伴ったミトコンドリア脳筋症の1例を報告した。 症例は21歳女性で, 17歳から頭痛, 嘔吐出現し, 翌年痙攣発作を認め, この頃難聴を自覚し, 両耳感音性難聴と診断された。 20歳で全身痙攣発作が再びあり, 急激な聴力悪化の印象を持ったが, 純音聴力検査で著しい聴力の低下は認められなかった。 純音聴力は両耳50dB, 最高語音明瞭度0%, 誘発耳音響放射無反応であったが, ABRの波間潜時延長は認められなかった。 音感覚は残存するが, 語音, 環境音の認知ができず, 聴覚失認の状態と思われた。 また, 自発言語・書字言語はある程度保たれた。 PET検査から脳血流と脳ブドウ糖代謝率が前頭葉と大脳深部核を除き, 高度に低下が認められ, また左聴覚野領域では著しい低下がみられるも, 右側頭回領域と前頭葉の運動性聴覚領域は若干保たれていた所見が認められた。 本症例の難聴は内耳と聴皮質障害により生じた高度聴覚障害と結論した。
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