AUDIOLOGY JAPAN
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43 巻, 2 号
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  • 松本 州司, 澤田 正一, 柿木 章伸, 竹田 泰三
    2000 年 43 巻 2 号 p. 89-92
    発行日: 2000/04/28
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    当科において治療した突発性難聴70症例の予後因子について検討した。 年齢, 治療開始までの日数, めまいの有無, 初診時聴力レベル, 高低音差について改善率を用いて, t検定で解析した。 予後不良因子は, 1) 40歳以上のもの, 2) 初診日が発症後8日以上経過したもの, 3) 初診時聴力レベルが60dB未満, 或いは80dB以上のもの, 4) 高低音差が0以上のものであった。 めまいの有無と予後には相関を認めなかった。 予後不良因子が2因子以上ある患者群では聴力レベルとは関わらず予後が不良であった。
  • 原田 博文, 白石 君男, 山野 貴史, 力丸 文秀, 加藤 寿彦
    2000 年 43 巻 2 号 p. 93-97
    発行日: 2000/04/28
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    われわれは多重ロジスティック回帰分析を用いて, 突発性難聴の予後にどの因子が最も関係しているかを検討した。 研究対象は突発性難聴症例177名 (177耳) を用いた。 突発性難聴の予後は治癒が35名, 著明回復が54名, 回復が58名, 不変が30名であった。 今回検討した因子は年齢, 治療開始までの日数, 初診時平均聴力 (250Hzから4000Hzまでの5周波数), 性別, 患側, メマイの有無, 治療 (低分子デキストラン, 副腎皮質ホルモン, ビタミンB12, 星状神経節ブロック), 入院外来別, 喫煙の有無である。 最初の分析は不変群と回復群で行った。 予後と関連のあった因子は治療開始までの日数であった。 次の分析は不変群と著明回復群で行った。 治療開始までの日数, 年齢, 前庭症状, 初診時平均聴力が予後と有意な関連があった。 最後に不変群と治癒群で分析を行ったところ, 治療開始までの日数, 年齢, 前庭症状, 星状神経節ブロックの有無が予後と強い関連を認めた。 他の因子は突発性難聴の予後と有意な関連はなかった。
  • 中島 務, 植田 広海, 三澤 逸人, 伊藤 彰英, 冨永 光雄
    2000 年 43 巻 2 号 p. 98-103
    発行日: 2000/04/28
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    厚生省特定疾患急性高度難聴調査研究班は, 平成10年度に突発性難聴の重症度基準を作成した。 今回, 我々は, この重症度基準を用いて今まで行われた3回の突発性難聴の全国疫学調査結果の解析を行った。 この重症度基準を用いた分類は, 突発性難聴の治療経過の解析に有用な指標であると考えられた。
  • 金 永順, 兼谷 眞, 吉岡 克己, 伊藤 彰紀, 水野 正浩, 工藤 弘恵, 遠藤 まゆみ
    2000 年 43 巻 2 号 p. 104-111
    発行日: 2000/04/28
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    突発性難聴における音刺激による前庭誘発頸筋電位 (Vestibular Evoked Myogenic Potentials: VEMP) を測定し, 初診時聴力, 前庭所見, 聴力予後との関連を検討した。 症例は当科を受診し突発性難聴と診断され, VEMPを施行し得た49症例である。 対照は健康成人13名26耳とした。 VEMP測定方法としては刺激音はクリックで音圧は105dBnHL, 加算は200回と設定し施行した。 VEMPの測定結果は初診時の聴力型, 聴力レベル, 前庭所見および聴力予後と関連する傾向が示唆された。 聴力障害が高度の症例ほどVEMP異常例が多く認められ, 蝸牛に近い前庭系の障害も存在する率が高いのではないかと考えられ, 突発性難聴の病変の広がりを推定することが可能ではないかと思われた。 また, VEMP異常例では予後不良例が多く, VEMP正常例では予後良好例が多く認められ, この結果よりVEMPは突発性難聴の聴力予後の推定に有用である可能性が考えられた。
  • 田中 康夫, 井上 庸夫, 喜友名 朝盛, 三須 俊宏, 渡辺 建介
    2000 年 43 巻 2 号 p. 112-117
    発行日: 2000/04/28
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    突発性難聴および低音障害型急性感音難聴における内耳病態を機能的に追究するために, それらの患耳から測定した誘発耳音響放射の入出力曲線を検討した。 検出閾値の上昇と共に飽和レベルが低下した。 2型の低下パターン, すなわち截頭型と平行移動型が認められ, 前者は高・中音域障害の突発性難聴耳に多く, 後者は低音障害耳に多かった。 平行移動型に回復例が多かったが, 飽和パターンは予後の推測因子として十分とはいえなかった。 誘発耳音響放射の入出力曲線の飽和レベルは外有毛細胞に連係した能動的基底板振動を表現しており, 感音難聴耳で入出力曲線の変化の推移を観察することにより蝸牛内障害の細別診断が可能である。
  • 東野 哲也, 竹中 美香, 牛迫 泰明, 小宗 静男
    2000 年 43 巻 2 号 p. 118-123
    発行日: 2000/04/28
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    急性高度難聴により失聴に至った人工内耳症例の原因疾患と頻度及び, その人工内耳成績を検討した。 宮崎医科大学耳鼻咽喉科で人工内耳手術を施行した言語習得後失聴成人例74例75耳のうち, 発症前日まで難聴のない耳に突然または7日以内に聾に至った急性高度難聴例は13耳であった。 急性高度難聴の原因疾患としては, 突発性難聴4例, ムンプス2例, 髄膜炎2例, 自殺企図によるブロム酸中毒2例, 急性腎不全1例, 頭部外傷1例, 原因不明1例であった。 これら例の人工内耳成績は, 難聴発症時に腎不全を伴ったブロム酸中毒例と急性腎不全症例を除いて非急性発症の対照群に比べて良好で, なかでも突発性難聴の4耳は失聴期間に関わらず極めて良好であった。 この結果は, 急性高度難聴の原因疾患は多様であっても, 後迷路機能は比較的保たれることを示している。 広範なコルチ器の崩壊に続く神経細胞障害の程度は比較的軽いことが示唆された。
  • プロスタグランジンE1の使用経験
    白石 剛, 牧嶋 和見
    2000 年 43 巻 2 号 p. 124-128
    発行日: 2000/04/28
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    平成2年より平成11年8月までの当科における突発性難聴症例を対象とし, 高気圧酸素治療 (HBO) の際に, 星状神経節ブロック (SGB) を施行したSGB群119例と, SGB施行の代わりに, プロスタグランジンE1 (PGE1) の点滴静注を行ったPG群39例における治療成績を比較検討した。 その結果, PG群はSGB群に比べて全体的に聴力回復の著効率, 有効率が低い傾向にあり, また眼振のある症例や, 発症から治療開始までの日数が8日以上の症例などで両群を比較してみると, PG群ではSGB群に反して治癒症例が認められなかった。 しかし両群間に統計学的な有意差は認められなかった。
  • 荒木 進, 佐藤 恒正, 飯塚 尚久, 鈴木 衞, 北村 剛一, 山根 雅昭
    2000 年 43 巻 2 号 p. 129-135
    発行日: 2000/04/28
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    (目的) 突発性難聴に対する高気圧酸素療法の有効性は以前より多数の報告がある。 しかし, 高気圧酸素療法は特別な装置が必要である。 本論文は, 突発性難聴に対し, 低圧酸素を鼻カヌラを用いて吸入させる方法でも同様の効果が得られるか否かを検討した。
    (方法) 1998年7月から1999年6月までに入院し点滴加療と同時に経鼻的酸素吸入を施行した突発性難聴患者18例を対象とした。 その18例と, それ以前の酸素吸入療法を加えなかった入院症例とを比較検討した。
    (結果) 酸素吸入療法の有効率は72.2%であり, 従来の治療法の有効率 (42.3%) よりも良好な傾向であった。
  • 吉田 雅文
    2000 年 43 巻 2 号 p. 136-140
    発行日: 2000/04/28
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    北九州市における聴覚障害児の現状を把握する目的で, 義務教育年代の聴覚障害児の就学状況と, 市立総合療育センターを受診した聴覚障害児の初診時の年齢と難聴の程度を調査した。 聾学校, 難聴学級および難聴の通級指導を受けている小学生児童数から, 北九州市には1学年当たり約8名の高度聴覚障害児が存在すると考えられ, これは総児童数の0.08-0.09%に相当した。 また, これらの児童の半数以上が普通学級に在籍していた。 一方, 1988-97年の10年間に療育センターを受診した80dB以上の高度聴覚障害児は79名で, 1年平均約8名であった。 このうち1歳未満で難聴を疑われて受診したものは20%に過ぎず, 1歳代で発見されたものが48%と最も多く, 残りの32%では2歳の誕生日を過ぎてから難聴の診断が確定していた。 乳幼児健診に携わる小児科医や保健婦と連係を取り, より早期発見に努めることが重要と思われた。
  • 仙台市における30年間の検診結果
    沖津 卓二, 堀 富美子, 佐藤 直子, 清水 麻里
    2000 年 43 巻 2 号 p. 141-147
    発行日: 2000/04/28
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    小学生の難聴の推移を, 仙台市における昭和43年度から平成9年度までの30年間の検診データにもとづいて検討し, 考察を加えた。
    1) 対象人数は, 昭和56年度を境に減少に転じ, 少子化を反映して, その後も減少傾向が続いていた。
    2) 難聴者は昭和47年度の1.94%をピークに年々減少していた。 その主な原因は滲出性中耳炎, 慢性中耳炎などによる伝音難聴の恒常的な減少であった。 感音難聴にも減少傾向がみられたが, 平成1年度以降は0.22-0.26%で大きな変化は認められなかった。
    3) 難聴者は伝音難聴, 感音難聴ともに男子に多く, また片側性が多かった。
    4) 一側高度感音難聴は平成1年度以降は徐々に減少し0.04%前後であった。
    5) 滲出性中耳炎による難聴は減少しているが, 伝音難聴の50-60%を占め依然として伝音難聴の主要な原因疾患であった。
  • 南 詔子
    2000 年 43 巻 2 号 p. 148-156
    発行日: 2000/04/28
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    一側が聾である場合, 反対側聴力が変動, 進行するか否かは, 極めて重要な問題である。 一側が聾である難聴児の対側耳聴力の進行性について検討した。 一側が聾で, 対側耳に30dB以上の感音難聴を認める28例中, 進行例10例 (35.7%), 変動例1例 (3.6%), 変動進行例2例 (7.1%) であった。 一方, 対側耳の聴力が正常である372例中進行例6例 (1.6%), 2例 (0.5%) が変動進行例であり, この8例は対側型遅発性内リンパ水腫 (DEH) であった。 対側耳の聴力の変化率は5周波数平均聴力レベルで, 対側耳難聴例の進行例10例では2.0dB, 対側型DEH例5例では2.7dBであった。 また, 対側耳正常例中の対側型DEH例8例では1.3dBであった。 進行および変動の原因に内リンパ水腫によるものであると考えられる症例が存在した。
  • 吉田 耕, 日野 剛, 浅野 尚, 今野 昭義
    2000 年 43 巻 2 号 p. 157-163
    発行日: 2000/04/28
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    1985年より1994年までに千葉大学耳鼻咽喉科小児難聴外来を受診した, 健側が正常聴力である一側性難聴児のうち, 5年間以上経過観察できた117例を対象に検討を行った。 これらの中に, 経過観察中に耳鳴を訴えた例 (15例), めまいを訴えた例 (4例), 健側耳に機能性難聴が発症した例 (3例), 患側耳の聴力改善例 (2例), 患側耳の聴力変動例 (2例), 健側耳の聴力変動例 (3例), その他の蝸牛症状を訴えた例 (2例) が認められた (一部重複している例あり)。 今回の結果より117例中何らかの聴力変動もしくは前庭蝸牛症状が認められた症例は26例存在し, 学校生活や日常生活に不自由を感じていない健側が正常聴力の一側性難聴児に対して, 患者の訴えを重視しながら長期的な経過観察が必要であると考えられた。
  • 柿木 章伸, 竹田 泰三
    2000 年 43 巻 2 号 p. 164-168
    発行日: 2000/04/28
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    幼小児の先天性および後天性難聴において, 聴力の長期予後を知ることは聴覚管理や聴能訓練を行う際に重要である。 今回, 高知県難聴幼児通園センター (現高知県療育福祉センター) にて聴能訓練を行った難聴児のうち, 長期に聴力検査を行えた症例についてその経過を報告する。 幼児性難聴の多くはその経過中に聴力の悪化が認められ, 両耳が同時に悪化することが多いと推察された。 聴力悪化のパターンは, 幼児期に急速に悪化した後ゆっくりと悪化していくものと, 全過程を通じて緩徐に悪化していくものの二つに大別されるようである。 また今回の結果からは, 難聴の進行の原因として明らかなものは無く, 個々の症例における聴器の障害程度や受傷性の違いによるものと考えた。
  • 藤崎 俊之, 佐藤 斎, 和田 匡史, 土屋 乃里子, 高橋 姿
    2000 年 43 巻 2 号 p. 169-174
    発行日: 2000/04/28
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    3年以上聴力経過を観察しえた前庭水管拡大に伴う難聴14例28耳 (男性7例, 女性7例) における長期的な聴力域値の変化と, 難聴の急性増悪のエピソードについて検討した。
    聴力域値が3分法平均聴力で10dB以上悪化した進行耳を6耳 (21%), 難聴の急性増悪を4回以上反復した増悪反復耳を11耳 (39%) に認めた。 これら臨床的に経過不良の症例では, 誘因なく難聴の急性増悪を生じ, しばしばめまいを伴った。
    前庭水管拡大症例が誘因なくめまいを伴って難聴の急性増悪をきたしたときは, 治療や経過観察をより注意深く行う必要があると思われた。 前庭水管拡大には, 容易に内耳障害を生じる経過不良な群と, 経過が比較的安定した群が存在する可能性が示唆された。
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