AUDIOLOGY JAPAN
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51 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 神崎 仁
    2008 年 51 巻 2 号 p. 99-105
    発行日: 2008/04/28
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    著者は tympanometry (TM) と acoustic reflex (AR) test を含む impedance audiometry の概要を述べ本検査法の今日における意義を示した。TMは鼓膜, 中耳の病的状態を評価するのに有用である。TMは新生児聴覚スクリーニングにABRと併用して日常的に用いられているが近年, 3ヵ月未満の乳幼児では probe 周波数として1000Hzを用いるTMが226Hzを用いるTMより信頼性があると報告されている。2種類のタイプのAR (同側及び反対側刺激) はABRやOAEが施行出来ない場合, 脳幹における第VII, 第VIII神経を含むAR経路の評価に用いられ, 有用である。
  • 最近の動向
    原田 博文, 市川 大輔, 今村 明秀, 江崎 嘉十, 中川 尚志, 加藤 寿彦
    2008 年 51 巻 2 号 p. 106-111
    発行日: 2008/04/28
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    2003年1月から2007年3月まで福岡大学耳鼻咽喉科にて治療を行い, 経過観察できた急性低音障害型感音難聴症例50例50耳を対象とし, ロジスティック回帰分析を用いて, 予後因子と予後の関連を検討した。その結果を以前報告した1990-2001年の結果と比較した。男性12名, 女性38名で, 年齢は15歳から68歳 (平均40歳) であった。症例数は1990-2001年例と比べて増加傾向が認められ, 特に女性の割合が増加していた。急性低音障害型感音難聴の予後は, 治癒36耳 (72%), 改善5耳 (10%), 不変・悪化9耳 (18%) であった。1990-2001年例と比較して治癒が減少傾向にあるが, 不変も減少し, 予後に有意な変化は認められなかった。予後不良群14耳と治癒群36耳でロジスティック回帰分析を行うと, 年齢, 治療開始までの日数, 初診時聴力レベル (125Hz, 250Hz, 500Hz, 1000Hz), 1000HzDPOAEレベルが有意に予後と関連があった。年齢が高いと予後不良となり, 初診時聴力レベルも悪いと予後不良の傾向を示した。1000HzDPOAEレベルが雑音レベル以上あると予後良好であった。性別, 急性低音障害型感音難聴の既往歴, メマイの有無, 治療法は予後と有意な関連は認められなかった。1990-2001年例の検討では女性の予後が良好であったが, 今回はその傾向はなくなっていた。
  • 18年間の臨床統計
    水川 敦裕, 水川 知子, 佐藤 宏昭
    2008 年 51 巻 2 号 p. 112-116
    発行日: 2008/04/28
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    急性低音障害型感音難聴の診断基準には低音域のみならず, 高音域においても基準が設けられている。そのため, 高音域の聴力レベルが低下していて急性低音障害型感音難聴と診断されない症例が多数存在する。これらの症例を準確実例とし, 過去18年間に当科を受診した確実例326例, 準確実例109例で検討を加えた。確実例は準確実例に比べ若年で, 予後が良好であった。高齢化とともに準確実例は増加すると予想されたが, 逆に減少傾向を認めた。
  • 佐藤 美奈子, 田副 真美, 片岡 ちなつ, 中井 貴美子, 大石 直樹, 神崎 晶, 斎藤 秀行, 井上 泰宏, 小川 郁
    2008 年 51 巻 2 号 p. 117-122
    発行日: 2008/04/28
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    急性低音障害型感音難聴 (acute low tone sensorineural hearing loss, 以下ALHLとする) は, その発症のみでなく, 聴力低下の反復や再発, 疾患がもたらす耳鳴や耳閉感, 難聴等の症状など, ストレスが悪循環の元凶ではないかと考えられる。本稿では, 初回ALHL発症より1か月以上経過した時点においても, 難聴・耳鳴・耳閉感などの症状が残存または反復している症例を難治例とし, ストレスからの悪循環を断ち切る目的で心理療法を試みた。心理療法の要否については, 医師自らが問診等で心理学的アプローチをおこない判断することが望ましい。心理療法としては自律訓練法, グループ療法が効果を上げたが, 症例ごとの心理療法の適応についても考慮する必要があり, 心理検査がスクリーニングとして有用である。心理検査で, 不安が非常に高い, うつ傾向が明らかとなった場合には, 心理療法のみでは十分な治療効果は期待されないと考えられた。
  • 西村 忠己, 吉田 悠加, 細井 裕司
    2008 年 51 巻 2 号 p. 123-129
    発行日: 2008/04/28
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    難聴者の聞こえについて自身が行う評価と周囲の評価とは必ずしも一致しない。今回, 補聴器装用希望者を対象に聞こえに関する自己評価と家族評価を行い両者の差について検討した。評価方法は, 日常生活の各場面についてはアンケートを, 総合的な聞こえについては Visual Analog Scale (VAS) を用いて評価した。結果を全体的にみると, アンケートとVASによる評価ともに自己評価の方が家族評価より良かった。特に静かな場所での一対一の会話の聞こえとVASによる評価で両者に有意差を認めた。しかしながら年齢別に見ると50歳代の群でVASによる評価が全体の傾向とは反対に本人評価のほうが悪かった。VASによる評価については, 今回の結果から家族のほうがより客観的に評価している可能性が高いと考えられた。一方, 電話についての聞き取りは自己評価のほうがより信頼性があると考えられた。
  • 森 尚彫, 森 壽子, 川崎 美香, 黒田 生子, 藤本 政明
    2008 年 51 巻 2 号 p. 130-141
    発行日: 2008/04/28
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    高齢者が補聴器を有効に活用していくために, 過去5年間に当院の補聴器外来を受診した高齢者97症例から, 高齢者の補聴器装用, 補聴器フィッティングシステムの問題点, 補聴器フィッティングにおける言語聴覚士の役割について検討, 考察した。
    1. 高齢難聴者では, 年代別や聴力別の補聴器装用率に顕著な差がなく, 同居家族がいる場合は補聴器へのニーズや補聴器装用率が若干高く, 6回以上フィッティングを行なったものは補聴器装用率100%であった。補聴器は耳穴型を片耳装用する率が高かった。
    2. 患者個々の要望をきちんと受けとめた丁寧なカウンセリングを実践し, 補聴器装用に対する満足度をあげることが, 高齢難聴者の補聴器高装用率につながっていた。
    3. 補聴器を活用するためには, 耳鼻咽喉科医の指導下で, 言語聴覚士が主体的に補聴器のフィッティングに介在し, 補聴器販売店等と連携をとるフィッティングシステムとネットワークの確立が必須であった。
  • 高齢者に望まれる補聴とそのための一工夫
    荒尾 はるみ, 立石 志保子, 福島 隆匡
    2008 年 51 巻 2 号 p. 142-148
    発行日: 2008/04/28
    公開日: 2010/08/05
    ジャーナル フリー
    60歳以上の補聴器装用者78名の調査を行った。良聴耳の聴力は60dB未満が大半で語音弁別能も8割が比較的良好であった。高齢者の難聴は疾患・障害というより生理的聴覚補償と考えるべきである。高齢者の意識にも疾患としての意識はなく, 補聴への動機付けと定着には持続してコミュニケーションする相手・場が不可欠であると考えられた。補聴器装用への抵抗感の背景には老いの宣告としての受容しがたい感覚と補聴器への暗いイメージが感じられた。超高齢者社会である本邦においてコミュニケーションが十分できる活動的でかつ精神的に安定した高齢者が必要とされるため, 補聴が必須となる。補聴器のイメージ転換を図るべく取替え可能な装身具付きの補聴器を発案した。高齢を迎える前の成人に難聴が精神的健康を害するということの啓発活動と補聴器が高齢者の積極的ライフスタイルのステイタスシンボルとして位置付けられるべく, 普及すべきと考える。
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