2003年1月から2007年3月まで福岡大学耳鼻咽喉科にて治療を行い, 経過観察できた急性低音障害型感音難聴症例50例50耳を対象とし, ロジスティック回帰分析を用いて, 予後因子と予後の関連を検討した。その結果を以前報告した1990-2001年の結果と比較した。男性12名, 女性38名で, 年齢は15歳から68歳 (平均40歳) であった。症例数は1990-2001年例と比べて増加傾向が認められ, 特に女性の割合が増加していた。急性低音障害型感音難聴の予後は, 治癒36耳 (72%), 改善5耳 (10%), 不変・悪化9耳 (18%) であった。1990-2001年例と比較して治癒が減少傾向にあるが, 不変も減少し, 予後に有意な変化は認められなかった。予後不良群14耳と治癒群36耳でロジスティック回帰分析を行うと, 年齢, 治療開始までの日数, 初診時聴力レベル (125Hz, 250Hz, 500Hz, 1000Hz), 1000HzDPOAEレベルが有意に予後と関連があった。年齢が高いと予後不良となり, 初診時聴力レベルも悪いと予後不良の傾向を示した。1000HzDPOAEレベルが雑音レベル以上あると予後良好であった。性別, 急性低音障害型感音難聴の既往歴, メマイの有無, 治療法は予後と有意な関連は認められなかった。1990-2001年例の検討では女性の予後が良好であったが, 今回はその傾向はなくなっていた。
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