AUDIOLOGY JAPAN
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52 巻, 3 号
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総説
  • 山下 裕司, 森田 訓子, 氏田 直子
    2009 年 52 巻 3 号 p. 139-151
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    1. 聴覚スクリーニングの体制
    海外および国内の新生児聴覚スクリーニングの変遷と現状を報告した。両側難聴の発生頻度は乳児1000人に対して0.7~1.5人であった。また, ローリスク児とハイリスク児の両側難聴の発生頻度は, それぞれ乳児1000人に対して0.4~0.5人, 4.8~22人であった。日本耳鼻咽喉科学会が推薦した全国の耳鼻咽喉科への調査によると, 精査受診した乳児の75%は生後3カ月までに聴覚的および医学的評価を受けていた。またこれらの乳児の15.6%が早期療育サービスを受けていた。一方, 新生児聴覚スクリーニングはパスしていたが耳鼻咽喉科を受診した乳児の14.3%に難聴がみられた。
    日本で法定化されている3歳児聴覚検診の変遷と現状についても報告した。2007年には848,218名の子どもが聴覚検診を受けていた。その内627名 (0.07%) に難聴を認めた。2007年の両側感音難聴児数は1997年の数と同じであった。
    両報告から, 新生児聴覚スクリーニングに引き続いて再スクリーニングを行う必要があることが明らかになった。
    2. 乳幼児難聴の聴覚的および医学的評価
    乳幼児の聴覚的および医学的評価は成人のそれとは大きく異なる。聴覚的評価については, 適切な方法を選択するためには発達評価も必要である。行動聴検 (聴性行動反応聴力検査, 条件詮索反応聴力検査, ピープショウテストおよび遊戯聴力検査) と聴性脳幹反応, 聴性定常反応, 耳音響放射について方法と要点について説明した。
    医学的評価は以下の如くである: 診察, 現病歴, 小児期からの難聴の家族歴, 早期あるいは遅発性の難聴を伴う症候群の確認および画像, 生化学的検査。
    小児の難聴の総合的, 包括的な評価を行うためには, 耳鼻咽喉科医に小児難聴の知識が要求される。
    3. 難聴児の療育
    難聴児の療育の現状は, 様々な問題もあるが, 以前に比べれば, 難聴児とその家族が療育施設や方法を検討できる可能性が広がってきた。さらに療育の目標も単に聞こえる人に近づくことを目指すのではなく, 聞こえにくさを抱えたまま, 難聴児として様々な可能性を持って生きていくことへと徐々に成熟してきている。
原著
  • 君付 隆, 松本 希, 高岩 一貴, 大橋 充, 小宗 徳孝, 野口 敦子, 堀切 一葉, 小宗 静男
    2009 年 52 巻 3 号 p. 152-156
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    聴力正常の聴覚過敏患者24名 (男性8名, 女性16名) に対してSISI検査, MCL・UCL検査, 自記オージオメトリー検査, Metz検査を行い, リクルートメント現象の陽性率を検討した。17名 (71%) が, 聴力が正常であるにもかかわらず何らかの内耳機能検査で陽性であった。それぞれの検査の陽性率はSISI検査で27%, MCL・UCL検査で38%, 自記オージオメトリー検査で38%, Metz検査で33%であった。片側のみの聴覚過敏は9名 (37.5%), 両側の聴覚過敏は15名 (62.5%) であった。片側聴覚過敏の場合, 症状と陽性を示した検査側は必ずしも一致しなかった。
  • 森 つくり, 川住 隆一, 熊井 正之
    2009 年 52 巻 3 号 p. 157-165
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    全国のろう学校幼稚部を対象に, 聴覚障害の他に何らかの障害を合併している幼児の在籍状況を調査するとともに, 明らかな障害とは診断されていないが注意欠陥・多動性障害 (以下ADHD), 広汎性発達障害 (以下PDD) 等の発達障害の傾向がみられる幼児の在籍状況を調査した結果, 聴覚障害の他に何らかの障害を合併している幼児の合計は約31%, 発達障害の合併とその傾向がみられる幼児は約19%であった。発達障害の傾向をADHD傾向, PDD傾向等に分類し, ADHDの合併およびその傾向がみられる幼児の発達的な特徴を調査した結果, 聴覚障害のみの幼児と比較すると, 聴取・言語能力, コミュニケーション手段 (音声言語, 口型, 文字) の使用において, 3歳台では差が有意ではなかったが, 4歳台, 5歳台では差が有意になった。また, ADHDの合併およびその傾向がみられる幼児の36%に手指の微細運動の遅れが, 10%にチック症状が確認された。
  • 加藤 哲則, 我妻 敏博, 藤原 満
    2009 年 52 巻 3 号 p. 166-171
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    小・中学校に在籍する難聴児の実態と学校健康診断実施後の養護教諭の対応について把握するために, 新潟県上越地域にある小・中学校119校の養護教諭を対象に質問紙調査を実施した。回答を得た102校の在籍児童生徒数は22954名であった。学校健康診断により難聴が指摘され難聴の確定診断を受けた児は178名で57.8%の学校に在籍し, そのうち補聴器・人工内耳装用児は16名で12.8%の学校に在籍していた。補聴器・人工内耳装用児は, 各学校等で何らかの支援や配慮を受けていたが, その内容の検証が必要であると思われた。また補聴器等を装用していない難聴児の在籍が認められ, それらへの適切な対応や支援が必要だと考えられた。学校健康診断の結果は各学校から家庭に通知されていた。しかし難聴発見時に耳鼻科学校医等へ相談や連絡をしないとする回答も認められ, 養護教諭に対する難聴への理解啓発が重要であると考えられた。
  • 中西 啓, 岩崎 聡, 橋本 泰幸, 水田 邦博, 峯田 周幸
    2009 年 52 巻 3 号 p. 172-176
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    高度難聴に加えて行動障害を合併する児童では, 人工内耳装用後の言語発達が悪いとの報告があり, 人工内耳埋込術前・術後における注意力欠損, 多動・衝動性についての行動面の経時的変化を, 米国精神医学会が定めたDSM-IV問診表を用いて調査・検討を行った。
    2000年から2007年までに人工内耳埋込術を施行した児童35人の中で, 注意力欠損, 多動・衝動性について評価できた14児を対象とした。多動・衝動性に関する項目の平均陽性数は, 人工内耳埋込術前から術後早期にかけて, 注意力欠損性に関する項目の平均陽性数より多かった。また, 注意力欠損, 多動・衝動性の平均陽性数は, ともに術前に比べ術後6ヶ月で減少し, 術後12ヶ月で一時的に増加した後, 再び減少していく傾向を示していた。
    人工内耳装用児は, 術後一時的に行動面で不安になる傾向があるため, 言語発達とともに, 行動面にも注意して観察していく必要があると思われる。
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