1. 聴覚スクリーニングの体制
海外および国内の新生児聴覚スクリーニングの変遷と現状を報告した。両側難聴の発生頻度は乳児1000人に対して0.7~1.5人であった。また, ローリスク児とハイリスク児の両側難聴の発生頻度は, それぞれ乳児1000人に対して0.4~0.5人, 4.8~22人であった。日本耳鼻咽喉科学会が推薦した全国の耳鼻咽喉科への調査によると, 精査受診した乳児の75%は生後3カ月までに聴覚的および医学的評価を受けていた。またこれらの乳児の15.6%が早期療育サービスを受けていた。一方, 新生児聴覚スクリーニングはパスしていたが耳鼻咽喉科を受診した乳児の14.3%に難聴がみられた。
日本で法定化されている3歳児聴覚検診の変遷と現状についても報告した。2007年には848,218名の子どもが聴覚検診を受けていた。その内627名 (0.07%) に難聴を認めた。2007年の両側感音難聴児数は1997年の数と同じであった。
両報告から, 新生児聴覚スクリーニングに引き続いて再スクリーニングを行う必要があることが明らかになった。
2. 乳幼児難聴の聴覚的および医学的評価
乳幼児の聴覚的および医学的評価は成人のそれとは大きく異なる。聴覚的評価については, 適切な方法を選択するためには発達評価も必要である。行動聴検 (聴性行動反応聴力検査, 条件詮索反応聴力検査, ピープショウテストおよび遊戯聴力検査) と聴性脳幹反応, 聴性定常反応, 耳音響放射について方法と要点について説明した。
医学的評価は以下の如くである: 診察, 現病歴, 小児期からの難聴の家族歴, 早期あるいは遅発性の難聴を伴う症候群の確認および画像, 生化学的検査。
小児の難聴の総合的, 包括的な評価を行うためには, 耳鼻咽喉科医に小児難聴の知識が要求される。
3. 難聴児の療育
難聴児の療育の現状は, 様々な問題もあるが, 以前に比べれば, 難聴児とその家族が療育施設や方法を検討できる可能性が広がってきた。さらに療育の目標も単に聞こえる人に近づくことを目指すのではなく, 聞こえにくさを抱えたまま, 難聴児として様々な可能性を持って生きていくことへと徐々に成熟してきている。
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