AUDIOLOGY JAPAN
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52 巻 , 4 号
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総説
  • 中島 務
    2009 年 52 巻 4 号 p. 179-187
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/18
    ジャーナル フリー
    3テスラ 3D-FLAIR MRIにより突発性難聴の約3分の2の症例で患側内耳に異常陰影を認めた。異常陰影を認めた内耳の約半数は, ガドリニウム造影陽性であった。血管内に入れたガドリニウムが内耳に漏れるということは, 内耳の血管透過性が亢進しており, 血液迷路関門の破綻を意味する。炎症では血管透過性が亢進するが, 突発性難聴において抗炎症作用を持つステロイドが有効な症例は, ガドリニウム造影陽性症例の中にあるという仮説を述べ, 血液迷路関門破綻の病態につき, 実験的, 臨床的データをもとに概説した。
原著
  • 坂崎 弘幸, 佐藤 公美, 三根生 茜, 瀧元 美和, 合田 侑以, 森実 加奈, 長嶋 比奈美, 宇高 二良, 武田 憲昭
    2009 年 52 巻 4 号 p. 188-194
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/18
    ジャーナル フリー
    乳幼児健康診査 (健診) における保護者による聴こえの自己検査の実施状況を調査すると, 正しく自己検査が行われていた者は3歳児健診 (受診者289児) で15%, 1歳6か月児健診 (受診者309児) で22%であった。言語聴覚士が健診受診児に乳幼児聴力検査を実施し, 要精密検査となった児の耳鼻咽喉科での診断結果を追跡調査すると, 乳幼児聴力検査で要精密検査となった15児中10児が耳鼻咽喉科医を受診し, 9児に異常がみられた。しかし, 異常がみられた9児のうち聴こえの自己検査においても合格基準を満たしていなかった者は2児のみであり, 従来の健診における聴力障害のスクリーニングでは偽陰性が多かったと考えられる。今後, 聴こえの自己検査の精度を向上するためには保護者が検査方法を正しく理解できる説明方法の検討が必要であるが, 聞こえの自己検査には限界もあるため聴力障害のスクリーニングに言語聴覚士や耳鼻咽喉科医の参画が望まれる。
  • 岡野 由実, 原島 恒夫, 堅田 明義
    2009 年 52 巻 4 号 p. 195-203
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/18
    ジャーナル フリー
    本研究では, 一側性難聴者の自己開示の実態, 日常生活において対人関係の中でどのような感情を抱いているのかを明らかにするために, ソーシャルネットワーキングサービスを利用した調査を実施し, 135名の一側性難聴者から回答を得た。自己開示の実態については, 自己開示の有用性について理解していても, 開示しにくい背景があるということが分かった。その理由として, ネガティブな感情や, 周囲の理解不足があると考えられる。聞こえに関する問題だけでなく, 対人関係の中から生じる心理的問題も抱えている現状が示唆された。また, 自由記述より, 一側性難聴者同士が悩みや不安を共有し合うピア・カウンセリングの有用性が示唆された。聞こえの問題から二次的に生じる問題, 特に対人関係の中から生じる心理的問題やその実態など, 一側性難聴への理解を深め, 支援を行っていく必要があると考えられる。
  • 土井 礼子, 徳光 裕子, 河野 淳
    2009 年 52 巻 4 号 p. 204-213
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/18
    ジャーナル フリー
    聴取能力の改善が困難であった就学後に人工内耳埋め込み術を行った人工内耳装用児一例に対し, 聴覚管理や親指導を含む聴能訓練を実施したところ, 聴取能力および人工内耳への満足度が向上した。本症例は7歳5ヶ月時に人工内耳埋め込み術を行ったが, 手術直後に環軸椎回旋性亜脱臼の治療を要し, マッピング時にも目の下の痙攣, 舌の痺れ, 耳の痛みなどの症状により, 適切なマップ作成が困難だった。術後1年時に3ヶ月間の聴能訓練を実施し, 聴取能力に多少の改善が見られたが, その後, マップの変動などもあり, 聞き返しが増え, 11歳5ヶ月時に母親の希望により聴能訓練を再開した。訓練では, マッピングを含めた聴覚管理, 親指導の徹底と本人との話し合いを含む総合的なアプローチを行い, 母子共に精神的な安定を心がけた。7ヶ月間の訓練後, 聴取能力が改善し, 人工内耳への満足度が高まった。
  • 武市 紀人, 柏村 正明, 中丸 裕爾, 津布久 崇, 福田 諭, 鈴木 美華, 宇佐美 真一
    2009 年 52 巻 4 号 p. 214-219
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/18
    ジャーナル フリー
    難聴遺伝子診断が有用であった1例を経験した。本例は成人両側感音難聴症例であるにもかかわらず, 現病歴, 家族歴が不明であり, 合併症である転換性障害による機能性難聴の可能性も否定できず, 診断と治療に苦慮した。難聴遺伝子診断によりGJB2遺伝子異常による遺伝性難聴の確定診断となり人工内耳埋め込み術を施行した。本例はGJB2遺伝子による難聴としては緩徐に進行した非典型例であったが, 人工内耳の装用効果は十分であり, 術前は困難であったテレビ視聴や単独での外出も可能となった。
    遺伝子診断は倫理的な課題も多く, 通常の検査と異なり専門医による十分な配慮, 準備が必要である。当院では遺伝子診療部が中心となり遺伝子に関する業務を行っており良好な検査の施行が行えた。難聴遺伝子診断は難聴患者の診断法として非常に有用と考えられるので今後のさらなる普及が望まれる。
  • 坂田 俊文, 上野 哲子, 一番ヶ瀬 崇, 白石 君男, 中川 尚志
    2009 年 52 巻 4 号 p. 220-226
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/18
    ジャーナル フリー
    無難聴性耳鳴症例に対し, 8kHzを越える高周波数 (以下, 高周波数) 領域の聴力像と耳鳴ピッチとを評価し, 耳鳴発現との関連性を検討した。20歳代の一側性無難聴性耳鳴15名15耳, 健聴者45名90耳を対象とし, 聴力異常の有無は健聴者のデータを基準に判定した。高周波数領域の聴力評価には, Audimax Audiometer 500を, 耳鳴ピッチの同定にはRION TH-10を用いた。この結果, 15耳中11耳に聴力異常を認め, 3耳では耳鳴の改善と共に, 聴力異常域が消失・縮小した。ピッチを同定できた7耳では, 聴力異常域の最低周波数から2kHzないし4kHz低い周波数にピッチを認めた。これらの所見から, 無難聴性耳鳴の中には高周波数域の聴力異常に起因するものが含まれると推測された。聴力異常のなかった4耳でも, 今回評価しなかった18kHz, 20kHzに異常が埋没し, 耳鳴の原因となっている可能性がある。
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