AUDIOLOGY JAPAN
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54 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
総説
  • 宇佐美 真一
    2011 年 54 巻 1 号 p. 44-55
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/16
    ジャーナル フリー
    2008年7月に「先天性難聴の遺伝子診断」が先進医療として承認され臨床診療として実施できることになった。先天性難聴の少なくとも50%は遺伝子の関与によるものと推測されており, 現在までに数十の原因遺伝子が同定されてきている。原因遺伝子によって発症時期, 進行性, 前庭症状, 随伴症状が異なることから, 遺伝子診断は難聴の正確な診断, 治療法の選択, 予後の推測, 合併症の予測, さらには予防や遺伝カウンセリングといったものに関して重要な情報を提供してくれるようになってきた。今後数年のうちに難聴の分類は原因遺伝子ごとに再分類されていき, 難聴患者に対する個別化医療が進んでいくと思われる。それに伴い近い将来難聴の医療にとって遺伝子診断は欠かせないものになることが予想される。
原著
  • 八木 昌人, 尾関 英徳, 井上 亜希, 中西 重夫, 室伏 利久
    2011 年 54 巻 1 号 p. 56-62
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/16
    ジャーナル フリー
    250Hzから4000Hzまでの5周波数聴力閾値の平均が40dB未満 (grade1) の突発性難聴症例について検討した。高度の感音難聴ではないことから, 突発性難聴以外にオージオグラムの型により急性低音障害型感音難聴, 急性感音難聴といった診断がなされており, 担当医の違いにより診断が影響されていた。予後については, 治癒率は66%であったが, 著明回復は1例も見られなかった。これは, 著明回復が30dB以上の改善と定義されているためで, grade1ではこれは治癒と重なってしまうためと考えられた。突発性難聴にgrade1症例を含めるかどうかの是非を含め, 難聴の程度に応じた診断基準, 聴力回復の判定基準の作成が望まれた。
  • 岡崎 宏, 新田 清一, 鈴木 大介, 上野 恵, 坂本 耕二, 山田 浩之, 佐藤 陽一郎, 鈴木 法臣
    2011 年 54 巻 1 号 p. 63-69
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/16
    ジャーナル フリー
    福祉による補聴器の交付は, 身体障害者手帳の対象とならない中等度難聴児においては行われないのが現状である。当科では, 補聴器の自費購入が保護者にとっては大きな経済的負担となっているケースを多く経験してきた。そのため当科では, 平成19年に市や県の担当課に対し, 中等度難聴児への補聴器交付についての要望を行ってきた。その後平成21年5月までに中等度難聴児14例について申請を行ったが, その結果13例について障害者自立支援法に準じた交付を受けることができた。しかしながら栃木県においては事業としての制度が確立された訳ではなく, あくまでも予算の範囲内での支援であり, 安定した施策であるとは言えない。今後は実績を重ねながら自治体と密な連携を取り, 中等度難聴児への補聴器交付事業の制度化を図りたい。
  • 南場 淳司, 阿部 尚央, 井上 卓, 武田 育子, 新川 秀一
    2011 年 54 巻 1 号 p. 70-77
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/16
    ジャーナル フリー
    労災認定において詐聴, とくに誇大難聴が存在することは広く知られているところである。今回我々は2006年1月から2009年12月までの4年間に当科を受診し騒音性難聴の労災認定を希望した14症例を対象として, 従来施行してきた検査に加えて聴性定常反応検査 (ASSR) を行った。詐聴の診断はASSR閾値と純音聴力閾値を比較し, 純音聴力閾値がASSR閾値よりも高い場合を詐聴とした。結果は14症例中7例 (50%) を詐聴と診断し, その7例いずれも難聴の存在自体は明らかであり誇大難聴と考えられた。詐聴と診断した7例中6例は, 従来行ってきた検査からも詐聴と診断可能であり, ASSR検査結果と一致した。
    これまで騒音性難聴の意見書作成の際に, 詐聴の判断に苦慮するケースを少なからず経験してきたが, ASSR検査を行うことによりこれまでよりも正確に詐聴の診断ができる可能性が考えられた。
  • 原田 浩美, 能登谷 晶子, 橋本 かほる, 伊藤 真人, 吉崎 智一
    2011 年 54 巻 1 号 p. 78-85
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/16
    ジャーナル フリー
    金沢方式による言語聴覚療法を受け, 1歳から5歳代に人工内耳の装用を開始した11例を対象に, 理解語彙の聴覚読話移行に影響を及ぼす要因を検討した。手話理解・文字理解の視覚系言語から音声言語理解への6歳までの移行には, 文字先行移行パターン, 聴覚先行移行パターン, 手話先行未移行パターン, 文字先行未移行パターンの4つがあり, 移行パターンにかかわらず, 聴覚読話移行可能となるまでの期間は, 平均12ヵ月であった。6歳までに11例中7例が手話から聴覚読話へ移行した。聴覚読話への移行を可能にする要因を装用開始年齢と手話や文字による理解語彙数からみると, 人工内耳装用開始が2歳前後の場合は理解語彙が350語, 3歳前後の場合は700語, 3歳6ヵ月前後の場合は1000語程度獲得していた例で聴覚読話へ移行していたことがわかった。
  • 赤松 裕介, 尾形 エリカ, 廣田 栄子, 加我 君孝, 山岨 達也
    2011 年 54 巻 1 号 p. 86-94
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/16
    ジャーナル フリー
    成人中途失聴者における人工内耳 (CI) の有効性について, QOLについての自己評価と語音聴取評価を用いて検討し, 関連する要因について解析した。
    対象はCI装用後1年以上経過した中途失聴成人32例である。QOL評価は, オランダで作成されたthe Nijmegen cochlear implant questionnaire (NCIQ) を用いて, 術前と術後の状態を比較した。同時に術後はCIへの満足度も評価した。聴取能評価は, 67-S式単音節検査と福田版単音節検査を用いた。
    QOL評価では音の検知領域の改善が大きく, 音の認識・社会的相互作用・活動・自尊心領域と続いた。総合得点は聴取能と強い相関を認めた。また, QOLへの個人属性の関与は少なかった。
    CIの満足度には, 聴取能のほか, 社会的相互作用・活動領域のQOLが関与していた。CIの効果評価には, 聴取能等の客観評価とQOLの自己評価とを併せた総合的な検討が有効といえる。今回使用したNCIQ質問紙はCI装用者におけるQOLの主観的評価に有用であった。
  • 河口 幸江, 萩原 晃, 西山 信宏, 小林 賀子, 鈴木 衞
    2011 年 54 巻 1 号 p. 95-101
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/04/16
    ジャーナル フリー
    2002年4月から2009年3月の7年間に当科に入院した突発性難聴で, 初診時Grade3以上の症例168例168耳を検討した。年齢は8歳から86歳 (平均52.7歳) で, 重症度はGrade3が95例, Grade4が73例であった。
    治療法は次の3群に分けた。プレドニゾロン60mg (PSL60群), プレドニゾロン120mg (PSL120mg群), 又はベタメタゾン8~12mg (BT群) のいずれかの漸減投与 (約1週間) を行った。いずれの群もプロスタグランジンE1製剤を併用した。
    全体の成績は治癒19.4%, 著明回復47.9%で, 重症度別の成績ではGrade3はGrade4に比べてよかった (p<0.05)。ステロイド薬別治療成績ではPSL120群の治癒率は26.1%で, PSL60群の8.7%に比べて高かったが, 多重ロジスティック回帰分析ではステロイド投与量の違いでは有意差はなかった。
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