AUDIOLOGY JAPAN
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54 巻, 4 号
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総説
  • 福島 邦博
    2011 年 54 巻 4 号 p. 263-269
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/06
    ジャーナル フリー
    乳幼児期に存在する難聴に対して原因診断を行うことは, 児の将来の状況を予見し, 必要な対策を考える上で重要な情報をもたらす。その一方でしばしば難聴自体の臨床症状はそれぞれ類似しており, お互いを区別することは困難であることも少なくない。本稿では, 難聴の原因を, 1) 遺伝的因子を原因とする難聴と 2) 環境因子その他を原因とする難聴に大別し, こうした疾患群の特徴を概説, それらの原因診断の意義と問題点について解説した。とりわけこうした疾患をその臨床徴候から鑑別を進め, 根底にある原因を推測することは臨床的には重要な意義を持つと考える。
原著
  • 岡田 慎一, 小原 まどか, 小室 久美子, 新井 峻, 高橋 邦明, 阿瀬 雄治
    2011 年 54 巻 4 号 p. 270-276
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/06
    ジャーナル フリー
    新生児聴覚スクリーニングにより月齢2ヵ月以前に受診した208例を対象に, 初診時に実施した1kHz, 3kHzの聴力レベル50, 70dB刺激による聴性行動反応聴力検査 (BOA) の結果を確定診断との比較により検討した。両側または片側の聴力が正常でもBOAの反応がなかった例がある程度認められた。50dBに反応があったほぼ全例, 70dBに反応があったうちの約90%の例は両側または片側の聴力が正常であった。反応があった例では高度難聴は極めて稀であった。また, 初診時以降の難聴進行が疑われる例があった。被検児の睡眠に関する状態別の検討では入眠時が覚醒時, 睡眠時に比べて反応が得られやすかった。月齢2ヵ月以前のBOAでは, 反応が得られない場合に難聴の有無や程度を推測するのは不可能であるが, 反応が得られれば精密検査や診断の参考になり, また保護者指導の際の有用な情報になると考えられた。
  • 射場 恵, 熊谷 文愛, 熊川 孝三, 鈴木 久美子, 武田 英彦
    2011 年 54 巻 4 号 p. 277-284
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/06
    ジャーナル フリー
    語音聴取評価検査「CI-2004 (試案)」は, 人工内耳単独の聴取能を評価することを目的として日本人工内耳研究会によって開発された。当科で人工内耳埋め込み術を受けた人工内耳装用者50例を対象に音入れ後6ヶ月目にこの評価を行い, 臨床上の有用性について検討した。各検査における平均正答率は, 子音検査54%, 単音節検査51%, 単語検査63%, 雑音負荷時の単語検査43%, 日常会話文検査78%, 雑音負荷時の日常会話文検査56%であり, 諸外国で同様に録音素材の文を用いて報告された人工内耳装用者の聴取能とほぼ同等の成績であった。しかしながら聴取能には個人差が大きく, 人工内耳を日常生活で活用するためには個々に応じた聴覚リハビリテーションプログラムの作成が必要と考え, 各症例の聴取特徴を分類した。このパターン化により, 各症例に応じた聴能訓練および装用指導を行うための有用な情報が得られた。
  • 林 千江里, 齊藤 達矢, 藤巻 充寿, 小松 広明, 松本 文彦, 池田 勝久
    2011 年 54 巻 4 号 p. 285-288
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/06
    ジャーナル フリー
    MB11 with BERAphone® は新生児スクリーニング機器として時にNatus ALGO® と同様にして本邦では主に産科領域で使用されている機器であり, これまでのスクリーニング機器より手間やコストの削減が可能であるといわれている。今回MB11使用する機会を得たため, スクリーニング機器としての評価を行った。その結果, MB11の感度は92.0% (23耳/25耳), 特異度は100% (65耳/65耳) であった。検査時間の平均は2分12秒と非常に迅速な診断が可能であった。検査にかかるコストも導電ジェルの約20円のみと, コストパフォーマンスも良好であった。今後, 検討を重ねる必要はあるが更なる活用の場が期待される機器と考えられた。
  • 大原 卓哉, 泰地 秀信, 守本 倫子, 本村 朋子, 松永 達雄
    2011 年 54 巻 4 号 p. 289-294
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/10/06
    ジャーナル フリー
    Auditory neuropathy spectrum disorder (以下ANSDと略) は, 耳音響放射が正常であるにもかかわらずABRが無反応あるいは異常となる病態であり, 聴力に比し語音聴取力が低いことが特徴とされている。ANSDの遺伝的原因の解明が近年進んできており, 遺伝的原因としてOTOF遺伝子変異などの報告がある。ANSDに対する根本的治療は確立されておらず, 人工内耳の効果や適応などについてまだ意見の一致がみられていない点が多い。今回我々はOTOF遺伝子変異を認めるANSDの乳幼児3症例に対し人工内耳埋込術を施行し, その臨床経過, 装用効果について検討したので報告する。3症例ともDPOAE両側正常, ABR両側無反応であり遺伝子検査にてOTOF遺伝子変異を認めた。補聴器装用効果は不十分であったが, 人工内耳装用により良好な聴取能が得られており言語も発達してきている。
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