AUDIOLOGY JAPAN
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55 巻, 4 号
August
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総説
  • 白石 君男
    2012 年 55 巻 4 号 p. 207-217
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/09
    ジャーナル フリー
    学校の教室では, スピーチ・コミュニケーションを介して知識の伝達, 意見の交換, 経験の共有がおこなわれる。騒音や残響といった音響環境が劣悪な場合は, その情報伝達量は大きく低下し, 学習による知識構築や読み書き能力の発達を阻害する可能性がある。ここでは, 教室の音響環境を表す物理的指標の残響, 騒音, Speech Transmission Indexについて概説し, それらの測定事例や, 最近の教室における音響性能のガイドラインを紹介する。残響と騒音は, 難聴者の音声知覚を健聴者のそれよりより大きく劣化させる。最後に教室の音響環境を改善するための音響設計や, 補聴器周辺機器, 拡声システム, 補聴器の機能などの聴覚補償についての方法について述べる。
原著
  • 伊藤 まり, 相馬 啓子, 三並 美香, 佐藤 永通子, 林 裕次郎
    2012 年 55 巻 4 号 p. 218-222
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/09
    ジャーナル フリー
    中~高度難聴症例におけるTRT (Tinnitus Retraininng Therapy) ではTCI治療器 (Tinnitus Control Instrument) を用いず, 補聴器を含めTCI以外の音響療法が適していると考えられている。補聴器によるTRTの原理は外界音の入力によって耳鳴に対する順応をおこすことである。雑音抑制や, 指向性機能のプログラムを外界音の入力によって切り替えて補聴器によるTRTを施行した1症例について検討したので報告する。症例は62歳女性, 右突発性難聴後の右耳鳴を主訴として受診した。患側に補聴器を装用とし, 補聴器の利得設定は背景音外界の音が入る程度の軽度の増幅とした。今回, 耳鳴や会話を必要とする状況に応じてプログラムを切り替えて装用するよう設定し, 各プログラムの装用時間を記録した。中等度~高度難聴症例では, 耳鳴が強い装用初期は雑音が入り易い雑音抑制をOFF, 指向性機能をOFFとしたプログラムOFFを選択し, 耳鳴に慣れてくると会話聴取の際に聴き取りやすい雑音抑制をON, 指向性機能をONとしたプログラムONを選択する傾向があると考察された。
  • 内山 唯史, 金澤 明香, 石坂 郁代, 松平 登志正
    2012 年 55 巻 4 号 p. 223-229
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/09
    ジャーナル フリー
    骨導聴力検査で一側ごとの閾値の測定が困難な場合に骨導雑音法による測定が可能であるが, 較正の煩雑さ等から臨床検査として普及していない。本法の改良と普及促進を目的に, 本法で気導閾値測定に用いるイヤホンの装着にオープン型耳せんを用いることにより外耳道閉鎖効果の抑制を試み, 骨導雑音の基準レベルの推定値をもとに骨導雑音の客観較正を行い, 通常の骨導検査法と骨導雑音法により正常耳の骨導閾値を求め比較した。その結果, オープン型耳せん付きイヤホンの装着による有意な外耳道閉鎖効果はみられないことが確認された。骨導雑音の基準レベルは (基準等価閾値の力のレベル+4dB) に等しいと推定した。これに基く較正を行い骨導雑音法で測定した骨導閾値は, 通常の方法で得られた骨導閾値と平均値が5dB以内で一致した。以上より, 今回推定した基準レベルで較正した骨導雑音法による骨導閾値は, 通常の骨導閾値と等価であることが示唆された。
  • 宇杉 竜一, 石坂 郁代, 松平 登志正
    2012 年 55 巻 4 号 p. 230-235
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/09
    ジャーナル フリー
    一側高度難聴を装った健聴者11名を対象に, Stenger法を, 検査音の良聴耳提示音圧の2条件 (10, 5dBSL) と詐聴耳に耳せん装着の有無の2条件で施行し, 250Hz, 1kHz, 4kHzの聴覚閾値推定の精度について検討した。その結果, 被験者全員が全ての検査条件でStenger陽性で, 詐聴の同定率は100%であった。聴覚閾値の推定値は真の閾値と平均でほぼ一致した。各周波数の聴覚閾値の推定誤差は2SDで15dB以内であり, 良聴耳提示音圧や詐聴耳の耳栓の有無の各条件間で有意差を認めなかった。Stenger法はABRやASSRなどの他覚的検査と比較し, 一側性詐聴に限って言えば, 検査法が簡単で推定誤差も少なく, 有効な検査法であると考えられた。
  • 竹内 万彦, 石永 一, 坂井田 寛, 宇佐美 真一
    2012 年 55 巻 4 号 p. 236-241
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/11/09
    ジャーナル フリー
    難聴遺伝子の保因者診断を行った一例を経験したので報告する。難聴を持つ35歳男性が難聴遺伝子の検索を希望し来院した。父親には軽度の難聴を認めたが, 母親, 親戚, 同胞には難聴者はいない。標準純音聴力検査では中等度の両側感音難聴を示した。難聴遺伝子検査では, GJB2遺伝子にG45E (ヘテロ) およびY136X (ヘテロ) を認めた。しばらくして, 発端者の妻 (35歳) が来院した。彼女は聴力正常で家族にも難聴者はいなかった。生まれてくる子が難聴になる可能性を知りたいという希望であった。オージオグラムはほぼ正常であったが, 遺伝子検査の結果, GJB2遺伝子の176-191del 16bpのヘテロ接合変異が検出された。子供が難聴となる再発率は, 25-50%と考えられた。保因者診断は, 臨床遺伝専門医と連携し, 遺伝学的検査・診断に関するガイドラインに従って進める必要がある。
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