新生児聴覚スクリーニングNHSの有用性は確立されているが, refer例において精密検査で正常聴力であった率 (refer偽陽性率) は, ほぼ40%前後と高い. 先天性代謝疾患のマス・スクリーニング偽陽性率が0.01%以下の値であるのに対して, 4自治体によるNHS事業報告ではNHSのマス・スクリーニング偽陽性率は0.0842~0.1482%と8倍以上高かった。このNHSの高い偽陽性率を改善するため, 当院では, 入院中の確認NHS検査でもreferであった例に対しては, 1カ月検診時にAABRによるNHS再検査を施行するシステムを試行してきた。導入時から5年間の1849例のデータを用いてretrospectiveに検討した結果, 初回NHSのrefer偽陽性率は76% (19/25), 退院前の確認NHSの偽陽性率も40% (4/10) であったが, 1カ月時の検診時に行った最終NHS検査での偽陽性率は0% (0/6) にまで減じた。結論として, 入院中に確認NHSでもreferであった新生児に対して, 同一施設にての1カ月検診時に最終NHS検査を行い, その結果で耳鼻咽喉科の精密検査機関を受診させる方式はNHSのrefer偽陽性率を最小限にし, 両親と新生児が受ける負担, 不利益の多くを排除できると考える。検討課題とその対処法についても述べた。
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