AUDIOLOGY JAPAN
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58 巻, 2 号
April
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
総説
  • 「蝸牛の生理機能と聴覚障害」
    中川 尚志
    2015 年 58 巻 2 号 p. 123-135
    発行日: 2015/04/28
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    要旨:蝸牛生理機能は Davisのbattery theory に代表される電気生理と Békésy の travelling wave を起点とする蝸牛内の力学的特性の二つの側面からの解析が共同し, 進歩してきた。音響機器としてみると 100dB を超える広い dynamic range と 100kHz という極めて高い周波数まで受容する特性を有する。蝸牛は①音情報の神経情報への機械電気変換機能, ②周波数分析装置, ③増幅器 (active process) の三つの働きを有している。音は振幅, 周波数, 位相の三成分からなる。蝸牛によって分析された音の三成分は, 振幅を神経の発火頻度, 周波数を蝸牛神経の部位, 位相は 2kHz 以下では蝸牛神経の活動電位の発火のタイミング, 中高音域では時間による変化である envelope 情報として, 中枢へ伝えられる。詳細な知見をまじえて, これらの機能を概観し, 内耳性難聴の病態を蝸牛生理機能より解説した。
第59回日本聴覚医学会主題演題特集号
「新生児聴覚スクリーニング後の療育体制の問題点」
  • 高梨 芳崇, 川瀬 哲明, 沖津 卓二, 八幡 湖, 奥村 有理, 佐々木 志保, 宮崎 浩充, 香取 幸夫
    2015 年 58 巻 2 号 p. 136-142
    発行日: 2015/04/28
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    要旨:小児期における聴覚障害は言語発達, 学習, 心理面に大きな影響を与えるため, 早期発見と支援, 療育が重要とされている。難聴の早期発見のためには新生児聴覚スクリーニングが有用とされており, 現在では全国的に普及している。難聴の早期発見ができるようになったことに伴い, 難聴児への早期支援体制の充実が必要であると考えられている。しかし, 難聴児に対する早期支援体制に対しては地域格差があり, フォローアップに不十分な点がみられることもある。今回, われわれは宮城県の小児難聴の医療, 療育の現状と問題点について報告した。本県の新生児聴覚スクリーニングの施行率には地域差があり, 特に仙台市以外の地域では満足できるレベルに達してはおらず, 難聴児の発見の遅れに伴う, 療育開始の遅れが問題となる症例が散見された。また, 新生児聴覚スクリーニング後の家族への心理的サポートについても改善の必要性があるように思われた。これらの問題を解決するためには医療, 療育, 行政の連携が大切であり, 耳鼻咽喉科医師の主導のもと, 緊密に連携をとるよう努力していくのが望ましいと考えられた。
  • 橋本 かほる, 能登谷 晶子, 原田 浩美, 伊藤 真人, 吉崎 智一
    2015 年 58 巻 2 号 p. 143-150
    発行日: 2015/04/28
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    要旨:新生児聴覚スクリーニング後, 養育者側に従来の支援に加え, 今後の新スク体制のあり方を考える必要があった事例を経験し, それらの療育支援について, 言語発達経過をとおしてまとめた。その結果, 新スク後のみならず, スクリーニング前から継続した支援が必要な事例があることがわかった。養育者側の要因, ならびに出生時の子どもの要因による養育者の不安によって, 前言語期訓練への影響が示唆された。母親だけでなく父親も含めた前言語期段階からの指導は, 子どもの言語発達促進につながり, 父親の療育参加を継続的にした。養育者が, 安定した状態で子どもと向き合い, 早期に療育に取り組み, さらにはわが子の将来に見通しをもって療育を継続できるように, 療育を担当する側は, 本来の耳鼻咽喉科的管理や言語指導に加えて, 患者会との連携ならびに行政へのフードバックなど, コーディネター的役割を担い, 新スク後の療育体制の充実を図る必要があると考えた。
  • 中津 愛子, 橋本 誠, 菅原 一真, 下郡 博明, 池田 卓生, 山下 裕司
    2015 年 58 巻 2 号 p. 151-158
    発行日: 2015/04/28
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    要旨:0歳で発見された難聴児の療育状況を調査し, 山口県における難聴乳幼児の療育が早期から充実して行われるための課題について検討した。対象は1998年6月から2012年12月までに, 山口大学医学部附属病院耳鼻咽喉科を聴力精査, または療育目的に初回受診し, 難聴発見年齢が0歳で, 療育歴を把握することができた25例を対象とした。0歳から3歳までの療育状況を調査した結果, 重複障害のない児では12名, 重複障害のある児では2名が, 2歳または3歳までに医療機関と特別支援学校教育相談の2か所で指導を受けていた。しかし, 他の11例は特別支援学校教育相談に通っていなかった。また, 重複障害児は当科受診の回数が少なく, 児が通っている障害児施設との連携も行われていなかった。今後, 山口県の難聴乳幼児の療育には身近な地域で難聴児を受け入れる体制の充実, 家庭訪問による指導, 重複障害児の通う障害児施設との連携が必要と考えられる。
  • ―東京都23区内にある旧難聴幼児通園施設での現状―
    内山 勉, 徳光 裕子
    2015 年 58 巻 2 号 p. 159-166
    発行日: 2015/04/28
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    要旨:当施設の在籍難聴児について, 新生児聴覚スクリーニング (NHS) の療育開始年齢および療育効果への影響について調査した。その結果, 1980~1999年度に生まれた難聴児220人の中では, 療育開始が0歳の難聴児 (0歳児) は24名 (10.9%) であったが, NHSを受診した難聴児はいなかった。一方, 2000~2013年度に生まれた難聴児172人の中では0歳児は91名 (52.9%) と増えており,うち78名 (85.7%) がNHS受診児であった。0歳から療育した難聴児のうち, 6歳時点の WPPSI 知能検査動作性知能が健常児平均レベル以上の難聴児13名の言語性知能は健常児平均レベル以上を示しており, 小学校通常学級に就学していた。以上のことより, NHS が開始されたことにより当施設では0歳の難聴児数は2000年度以降増え続けており, 今後ともこの傾向が続くと予想される。また, 0歳で療育を開始することで, 難聴児は6歳時点で健常児平均レベル以上の言語性知能を示して小学校通常学級に就学できることが示された。
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