AUDIOLOGY JAPAN
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58 巻, 3 号
June
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
総説
  • 「人工聴覚機器の最新情報―人工中耳」
    土井 勝美
    2015 年 58 巻 3 号 p. 173-181
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    要旨 : 欧米では, 通常の中耳手術により聴力改善が得られなかった症例 (真珠腫性中耳炎, 耳硬化症, 中耳奇形など), 中耳手術で良好な聴力改善が期待できない症例 (両側外耳道閉鎖症など), 気導補聴器・骨導補聴器の装用が困難な症例に対して人工聴覚器を用いた聴力改善手術が積極的に導入されている。 国内でも, 臨床治験を経て2013年1月より保険承認となった BAHA (Bone-Anchored Hearing Aid® ; Cochlear 社) の手術が施行可能となり, 同様に臨床治験が終了して現在厚生労働省への薬事申請・保険承認申請中の VSB (Vibrant Soundbridge® ; MedEl 社) についても, 早期の臨床導入が期待されている。
     将来的には, さらに進化した人工聴覚器の開発および臨床導入が想定される。 残存する内耳機能 (聴覚・前庭機能) を可能な限り温存しながら, 人工聴覚器の機能が最大限発揮できるような手術手技の習熟に努め, さらに, 人工聴覚器医療の安全性と有効性を正しく評価していくことが, われわれ耳科手術を専門とする医師の責務である。
原著
  • 白根 美帆, 牛迫 泰明, 山本 麻代, 近藤 香菜子, 倉澤 美智子, 松田 悠佑, 中島 崇博, 東野 哲也
    2015 年 58 巻 3 号 p. 182-188
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    要旨 : 新生児聴覚スクリーニング検査の普及に伴い, 先天性一側性難聴の疫学的検討が可能となった。我々は, 宮崎県の難聴児支援システムにより先天性一側性難聴児の発現率やその背景を明らかにした。2010年1月から2012年12月までの宮崎県の全出生児35,095人の内, 先天性両側性難聴は36人 (0.10%), 先天性一側性難聴は30人 (0.09%) であった。合併症のある例は, 両側性難聴は17人 (47%), 一側性難聴は17人 (57%)で, 両側性難聴は発達遅滞の合併が15人 (42%) であったが, 一側性難聴は頭頸部奇形の合併が11人 (37%) であった。感音性難聴に限定すると, 両側性難聴は31人 (0.09%) であったが, 一側性難聴は17人 (0.05%) と半減し, この内, 一側聾は11人 (0.03%) であった。先天性難聴においては, 両側性, 一側性ともに同頻度に発現するが, 感音性難聴だけでみると一側性難聴は両側性難聴の半数に留まるのではないかと考える。また, 近年ムンプス聾が増加傾向にあると言われているが, 今回の検討より, 乳幼児の一側聾は先天性要因が多数を占める可能性が高いと考える。
  • 澤田 光毅, 野口 佳裕, 高橋 正時, 山本 桂, 吉本 亮一, 喜多村 健
    2015 年 58 巻 3 号 p. 189-197
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    要旨 : 当科補聴器外来を受診した21例23耳を対象に, 「補聴器適合検査の指針 (2010) 」に準じ, 必須検査である (1) 語音明瞭度曲線と語音明瞭度の測定, (2) 環境騒音の許容を指標とした適合評価, 参考検査の (3) 質問紙による適合評価を施行した。適合判定率は, 語音明瞭度曲線が95.7% (22/23耳), 語音明瞭度が82.6% (19/23耳), 環境騒音が87.0% (20/23耳), 質問紙が66.7% (14/21例) であった。質問紙の評価で適合不十分であった7例では, 悪条件下の語音での改善が低い傾向が見られた。必須検査の全体評価では69.6% (16/23耳) が適合と判定されたが, 質問紙による参考検査項目を含めると47.8% (11/23耳) に低下した。今回の検討では, 各検査項目の判定結果が必ずしも一致せず, 今後適合検査を実施する上で, 参考項目の中でどの項目を選択するかが今後の課題と考えられた。
  • 佐々木 亮, 欠畑 誠治, 武田 育子, 木村 恵, 新川 秀一, 松原 篤
    2015 年 58 巻 3 号 p. 198-205
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    要旨 : 突発性難聴に対する副腎皮質ステロイド (以下, ステロイド) の鼓室内投与による治療の報告は約10~15年間で数多くみられるようになってきた。しかし, 治療や聴力改善の基準が統一されていないことや症例数が少ないことなどから, その効果は明らかなものではない。我々は突発性難聴に対する治療として短期間連日デキサメサゾン鼓室内注入療法 (IT-DEX) を第一選択として行っている。CO2 レーザーによる鼓膜開窓をステロイドの注入ルートとして用い, 原則として単独治療を行っている。本治療を行った96例における治癒率は39.6%であった。また, 厚生省研究班による突発性難聴に対する単剤投与の有効性の検証に症例の基準を合致させて IT-DEX 単独初期治療の効果を検討したところ, 対象症例27例中治癒は20例, 治癒率は74.1%となり, 厚生省研究班の単剤投与の成績と比較しても良好であった。症例数が少ないことが問題と思われ, 多施設での検討などが必要ではないかと考えられた。
  • -聾学校聴能担当者に寄せられた質問内容の検討-
    中瀬 浩一, 大沼 直紀
    2015 年 58 巻 3 号 p. 206-213
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2015/09/03
    ジャーナル フリー
    要旨 : 0~2歳児の保護者から聾学校聴能担当者に寄せられた質問を12のキーワードに分類して検討した。0歳児の保護者からの質問が最も多く, 年齢 (学年) の経過とともに減少していた。「補聴器」と「福祉」に関する質問数の減少が顕著だった。下位分類の変化から補聴器の装用についての質問と福祉手続きについての質問の変化が要因であることが判明した。今後は, 乳幼児の保護者からの質問への対応状況の検証を行うことにより, 保護者に対するきめ細やかな支援を行うための方策を検討することが必要と思われた。
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