要旨 : 欧米では, 通常の中耳手術により聴力改善が得られなかった症例 (真珠腫性中耳炎, 耳硬化症, 中耳奇形など), 中耳手術で良好な聴力改善が期待できない症例 (両側外耳道閉鎖症など), 気導補聴器・骨導補聴器の装用が困難な症例に対して人工聴覚器を用いた聴力改善手術が積極的に導入されている。 国内でも, 臨床治験を経て2013年1月より保険承認となった BAHA (Bone-Anchored Hearing Aid
® ; Cochlear 社) の手術が施行可能となり, 同様に臨床治験が終了して現在厚生労働省への薬事申請・保険承認申請中の VSB (Vibrant Soundbridge
® ; MedEl 社) についても, 早期の臨床導入が期待されている。
将来的には, さらに進化した人工聴覚器の開発および臨床導入が想定される。 残存する内耳機能 (聴覚・前庭機能) を可能な限り温存しながら, 人工聴覚器の機能が最大限発揮できるような手術手技の習熟に努め, さらに, 人工聴覚器医療の安全性と有効性を正しく評価していくことが, われわれ耳科手術を専門とする医師の責務である。
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