要旨: 3歳8ヵ月時に片側耳, 8歳8ヵ月時に対側耳にCI埋め込み手術を受け, 聴取成績は改善したが, 構音の誤りが残存した症例に対し, 9歳台というやや遅い年齢から構音指導を行った。その結果, 本例の構音の主な誤りである軟口蓋破裂音/k//g/, 破擦音/dz//ts/, 摩擦音/s/, 弾音/r/は指導開始6ヵ月で改善し, 構音明瞭度は100%近くになった。構音の誤りの原因として, 構音動作が視覚的に把握しにくく, CI 片側装用時に誤学習した構音が習慣化していたこと, 誤り音と正しい音の聴取弁別が困難だったことが推察されるが, CI 両耳装用下では聴取弁別が容易になったことに加え, 指導で発話速度や声の大きさの調整, 自己音声フィードバックを意識化させたこと, 音声とともに視覚, 触知覚, 運動感覚を活用したこと, 構音動作の細かい動きに関する指導者のことばでの説明を理解する言語力を本例が十分獲得していたことが短期間での構音改善の要因であると考えられた。
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