AUDIOLOGY JAPAN
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60 巻, 2 号
April
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総説
  • 「補聴器の歴史と変遷―最新補聴器の紹介―」
    神田 幸彦
    2017 年 60 巻 2 号 p. 121-128
    発行日: 2017/04/28
    公開日: 2017/09/07
    ジャーナル フリー

    要旨: 難聴者にとってこれまでの大きな問題だったのは, 何だったのか? それはどう解決されていったのか? 補聴器の歴史と変遷は正に難聴患者に寄り添いながら発展, 進歩を重ねてきた。最近では雑音抑制, 音声強調に加え音楽も聴きやすく, 10kHz~12kHz まで増幅可能な補聴器も出現してきた。補聴器の歴史と進歩, 問題点の解決, これまでの筆者の補聴器外来 2,468名で扱ってきた主要なメーカーの歴史的変遷, 補聴器外来の年代別外来統計ヒストグラムの変遷なども踏まえ, 補聴器の進歩により生ずる新たな問題についても考察を加えた。  

第61回日本聴覚医学会主題演題特集号
「人工内耳装用者の進学・就労をめぐる諸問題」
原著
  • 杉中 拓央, 齋藤 友介, 河野  淳, 白井 杏湖, 冨澤 文子, 野波 尚子, 塚原 清彰
    2017 年 60 巻 2 号 p. 129-135
    発行日: 2017/04/28
    公開日: 2017/09/07
    ジャーナル フリー

    要旨: 本研究は人工内耳装用の聴覚障害生徒を対象として, キャリア心理学者 Holland の職業選択理論を背景とする VRT 検査と, 半構造化面接を組みあわせた混合法を用いることで, 彼らの将来展望, 職業興味について表象を得ることを目的とした。人工内耳装用生徒の職業興味は, 聴者の標準化データと比較して, 慣習的領域に対して支持が高く, 企業的領域に対して支持が低かった。また, ろう学校での教育を経験した群においては, 人に接する職業よりも物を扱う職業に対する指向性が認められた。さらに, 日本語の読み書き能力と研究的領域, 社会的領域に対する興味の間に相関を認めた。加えて, 半構造化面接の結果から, 職業興味の選択過程において, 聴覚障害の影響が認められた。

  • 齋藤 友介, 白井 杏湖, 冨澤 文子, 野波 尚子, 河野  淳, 杉中 拓央, 塚原 清彰
    2017 年 60 巻 2 号 p. 136-142
    発行日: 2017/04/28
    公開日: 2017/09/07
    ジャーナル フリー

    要旨: 本研究の目的は人工内耳を装用する高校卒業者の大学進学の現況とその関連要因を解明することであった。対象は東京医科大学病院にて聴覚管理を行う, 2012年3月から2016年3月に高校 (ろう学校高等部を含む。) を卒業した者のうち, 人工内耳の装用経験が5年間以上あり, かつ卒業後の進路が確認された者 (追跡可能者), 計34人である (男性16人, 女性18人)。 調査時における対象者の年齢は19.6歳 (平均), 人工内耳の植え込み年齢は6.0歳, 装用期間は13.5年間であった。植え込み年齢と装用期間に加えて, 小学校就学時の装用閾値, 語音明瞭度ならびに理解語彙指数, 高校卒業時の装用閾値と語音明瞭度の成績を, 大学進学群と非進学群で比較した結果, 進学群では就学時の理解語彙指数が良好である傾向が効果量から示唆された。その他, 高校卒業後の進路が不明の者では, 就学時の理解語彙指数が有意に低く, 効果量からは高校卒業時の装用閾値が重篤であり, 両時点の語音明瞭度が低い傾向にあることが示された。

  • 佐藤 紀代子, 杉内 智子, 城本  修, 調所 廣之, 杉尾 雄一郎, 熊川 孝三
    2017 年 60 巻 2 号 p. 143-151
    発行日: 2017/04/28
    公開日: 2017/09/07
    ジャーナル フリー

    要旨: 定期的に経過を観察してきた18歳以上の人工内耳装用児3 例の学校生活の現状と課題を検討した。方法は, 語音聴取検査, 主観的なきこえの自己評価, 診療録や保護者の記録等から学校生活の状況や問題点を収集した。その結果, 静寂下では85~90% と高い聴取能を示したが, S/N10 の雑音下になると厳しい例もみられた。また, 自己評価では「数人の歓談」や「離れたところの会話」では聞こえにくさを訴えるものもいた。このような例には, 教師だけではなく, 友達の発言やグループ活動に補聴支援システムを積極的に使用することにより, コミュニケーションのきっかけや人への興味につながることが示唆された。そして, 人工内耳装用児が学校生活をとおして自己実現していくためには, 周囲の友達への教師の啓発が重要と考えられた。また発達段階には様々な過程があり, 個々の難聴原因, 家庭環境なども配慮したライフステージに応じた対応が必要と考えられた。

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