AUDIOLOGY JAPAN
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61 巻 , 1 号
February
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会告
第62回 日本聴覚医学会総括報告
総説
  • 小川 郁
    2018 年 61 巻 1 号 p. 50-56
    発行日: 2018/02/28
    公開日: 2018/04/20
    ジャーナル フリー

    要旨: 耳鳴の発生機序がまったく推測の域を出ていないことや耳鳴の他覚的検査法が確立されていないことなどから, 耳鳴診療に関してはいまだ大きな課題が残されている。 本稿では最近普及してきた耳鳴に対する新しい治療戦略である補聴器による音響療法について概説した。 近年, サウンド・ジェネレータを用いた tinnitus retraining therapy (TRT) に比べて補聴器による音響療法で耳鳴による苦痛度がより軽減するとされている。 しかし, 補聴器による音響療法の有効性についてのエビデンスはまだ多くはない。 国内外での補聴器による音響療法についての報告をまとめ, 今後の展望について述べた。

原著
  • 伊藤 恵里奈, 杉浦 彩子, 内田 育恵, 吉原 杏奈, 清水 笑子, 近藤 和泉, 中島 務
    2018 年 61 巻 1 号 p. 57-64
    発行日: 2018/02/28
    公開日: 2018/04/20
    ジャーナル フリー

    要旨: 国立長寿医療研究センター耳鼻咽喉科, 補聴器外来を受診した中等度難聴患者54名において認知症合併の有無 (もの忘れ群と非もの忘れ群) で難聴ハンディキャップ (Hearing Handicap Inventory for Elderly: HHIE) を比較した。 もの忘れ群では家族が評価した患者のハンディキャップ (Nursing Home Hearing Handicap Index: NHHHI) も評価した。

     2群間に良聴耳平均聴力レベルの差はないが, HHIE による No Handicap の割合は非もの忘れ群16.7%に対してもの忘れ群で54.2%と有意に高かった。 もの忘れ群では, 自覚的ハンディキャップが難聴の重症度や家族の評価と乖離していた。 しかしながら4割が補聴器継続を選択しており, 認知症のある難聴者の補聴のニーズをくみ上げるには家族やケア担当者による評価も含めて総合的に判断するべきと考えられた。

  • 大平 芳則, 苅安 誠, 泉 修司, 窪田 和, 堀井 新
    2018 年 61 巻 1 号 p. 65-72
    発行日: 2018/02/28
    公開日: 2018/04/20
    ジャーナル フリー

    要旨: CI2004 の子音検査を用いて, 人工内耳装用者の子音聴取の明瞭度と異聴傾向を調べた。 対象は成人人工内耳装用者 CI 群22名 (26~86歳), および健聴の対照 N 群10名 (50~69歳) とした。 聞きとりを異聴マトリックスで示し明瞭度と誤りを分析した。 CI 群の明瞭度は, 最小7%から最大88% (平均63%) と, 症例によって違いがあった。 N 群の明瞭度は96~100%であった。 CI 群の子音別の明瞭度は, / j / 98%, / k / 92%, / dz / 83%, / w / 82%, / s / 77%, / b /と/ h / 68%, / d / 64%, / g / 53%, / n / 51%, / p / 48%, / ɾ / 47%, / m / 43%, / t / 3%,であった。 多くみられた異聴傾向は, / p /→/ t // k /, / t /→/ k /, / g /→/ d /, / m /→/ n /, / n /→/ m /, / ɾ /→/ n /, / s /→/ dz /, / h /→/ s /, であった。 特に, / t /を [k] と聞き取る誤りは90%と極めて高く, ごく短時間での高周波数成分が手がかりとなる/ t /での人工内耳装用者の知覚困難があると推測された。

  • 神崎 仁, 泰地 秀信, 原田 竜彦
    2018 年 61 巻 1 号 p. 73-81
    発行日: 2018/02/28
    公開日: 2018/04/20
    ジャーナル フリー

    要旨: 202例の耳鳴患者のうち抑うつ状態を伴う29例 (14.4%) を検討した。 3ヵ月以上経過を追跡できたのは17例であった。 抑うつ状態の診断は問診, Hospital Anxiety & Depression Scale (HADS), MINI-International Neuropsychiatric Interview (MINI) を用いた。 耳鳴に関する質問紙は Tinnitus Handicap Inventory (THI) を, 自覚的評価 (大きさ, わずらわしさ, 生活への影響, ひどさについて) は点数法を用い評価した。 耳鳴の自覚的改善度は5段階評価でおこなった。 TRT 治療により THI スコア, 耳鳴の自己評価項目は改善したが HADS の D スコアは改善しない例がみられた。 耳鳴治療前のうつ病の治療歴の有無と初診時 THI スコア, 重症度, THI の20以上の改善の割合, 初診時自覚的評価のスコア, 治療後のスコアの差には有意差がなかった。 耳鳴の罹病期間は治療歴のあった例で有意に長かった。

     抑うつ状態を伴う耳鳴症例を伴わない耳鳴症例の自験例と比較すると, 前者では初診時 THI, および THI の治療前後の差が有意に大きかった。 また, 前者で耳鳴の自己評価のうち, わずらわしさ, 生活への影響のスコアが有意に大きかった。 しかし, 両者の耳鳴の改善度3以上の割合については有意差はなかった。

     抑うつ状態を伴う耳鳴症29例中13例にはうつ病治療歴があった。 このことはうつ病治療によっても改善しない耳鳴がかなりあることを示している。 これらに対しては抑うつ状態を伴わない耳鳴に対するのと同様, 音響療法が有効であった。 今後は耳鼻科医と精神科医, 心療内科医との連携が必要である。

  • 野波 尚子, 河野 淳, 冨澤 文子, 西山 信宏, 河口 幸江, 太田 陽子, 白井 杏湖, 塚原 清彰
    2018 年 61 巻 1 号 p. 82-89
    発行日: 2018/02/28
    公開日: 2018/04/20
    ジャーナル フリー

    要旨: 2010年4月1日以降5年間に当センターに受診した15歳以下の小児557名のうち, 新生児聴覚スクリーニング (以下, NHS) 要再検査以外の理由で当センターを受診した266名について主訴, 難聴の有無などを調査した。 3歳台の受診が最も多く, 従来通りこの時期まで難聴が気付かれにくいことが推察された。「ことばの遅れ」「音への反応不良」の主訴が多く, 発達障害などの鑑別診断が依然多かった。「3歳児健康診査の再検査」は一側難聴や軽度難聴発見の貴重な機会となっていた。 年度別では, 全体の受診数が減少する一方, 0歳児受診数の割合は増し, NHS 普及と早期介入の重要性が認知されつつある傾向と思われた。 しかし, まだ全体としては早期からフォローすべき対象が網羅できていないため, 養育関係者への啓発を含め, 難聴の早期発見, その後の介入を充実させるためのシステムの構築が今後の課題であると考えられた。

  • 鈴木 恵子, 井上 理絵, 梅原 幸恵, 秦 若菜, 清水 宗平, 佐野 肇, 岡本 牧人, 山下 拓
    2018 年 61 巻 1 号 p. 90-96
    発行日: 2018/02/28
    公開日: 2018/04/20
    ジャーナル フリー

    要旨: 要介護難聴高齢者の補聴器装用効果の解明を目的とした。 介護老人保健施設入所中の高齢難聴者48例を, 良聴耳聴力 (50dB 以上と 49dB 以下) と MMSE 得点 (20以上と19以下) を層別項目としてランダム化し, 試聴群24例 (年齢84±7.5歳, 聴力47±13dB, MMSE 16±7.5点) と対照群24例とした。 試聴群に対し4か月の補聴器試聴を行い, 試聴開始3か月後に再度MMSE検査を行った。 試聴結果は安定装用5例, 延長5例, 変動3例, 低迷3例, 中断3例, 装用拒否5例に分類された。 装用後の聞こえの変化を24例中18例が自覚し, また18例の対音反応の変化を ST が認識した。 装用後の行動変化を介護職員が認識したのは5例に限られた。 MMSE 得点は, 試聴群, 対照群とも試聴前後で差がなく, また試聴後の群間比較でも差がなく, 試聴の認知機能に対する効果は明らかでなかった。 この結果には生活環境の制限が関与していると推察され, より活動性の高い在宅の要介護高齢者に関する調査の必要性が示唆された。

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