AUDIOLOGY JAPAN
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最新号
April
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総説
  • 高野 賢一, 海﨑 文
    2021 年 64 巻 2 号 p. 149-154
    発行日: 2021/04/28
    公開日: 2021/05/19
    ジャーナル フリー

    要旨: 新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大する状況下で, 移動や受診に伴う患者の感染リスクおよび対面診療による医療者の感染リスクを軽減する観点からも, 遠隔医療の導入が急速に進みつつある。人工内耳装用者にとって, マッピングや言語訓練のために遠方から受診することが, 患者やその家族に負担となっていたことから, われわれは遠隔地の人工内耳装用者を対象とした遠隔マッピングを行ってきた。遠隔地の装用者には地元の病院や医院を受診し, ビデオチャット用とマッピング用のそれぞれの端末を, 大学病院サイトと遠隔サイトでインターネットを介して結び, 対面式と遜色ない遠隔マッピングを実施できている。これまでのマッピングソフトウェアでは, マップ書き込み数などいくつかの制限があったが, 新たにリリースされた Custom Sound Pro においては問題点が改善されており, さらなる対象拡大と満足度の向上が期待されている。

  • 内田 育恵
    2021 年 64 巻 2 号 p. 155-162
    発行日: 2021/04/28
    公開日: 2021/05/19
    ジャーナル フリー

    要旨: 脳内に病的な変化を有していても, 臨床的に認知症を発症せずに機能を保つ能力として, 認知予備能 (cognitive reserve), 脳予備能 (brain reserve), 脳の維持 (brain maintenance) などの概念がある。脳の衰えへの耐性を想定する予備能仮説で, 予備能の代理尺度として用いられる指標には, 比較的測定が容易な脳容積や頭囲, 脳重量という形態学的パラメーター, 教育 (教育年数や教育の質), 職業内容の複雑さ, IQ や識字率, 精神的活動, 社会的活動, 身体的活動などがある。難聴があると, 脳容積萎縮速度, より高度な学業達成率, 就労の継続, 社会交流などの側面で不利であることを示す多種の研究報告がある。認知症発症を遅らせる可能性のある予備能の強化にとって, 難聴や, 難聴が関与する事象が妨げとなるとすれば, 難聴対策はこれまで以上に重要になると考える。

第65回日本聴覚医学会主題演題特集号
「聴覚の可塑性-基礎研究から臨床所見まで」
「他覚的聴覚検査の応用と評価」
  • 栗岡 隆臣, 佐野 肇, 古木 省吾, 山下 拓
    2021 年 64 巻 2 号 p. 163-169
    発行日: 2021/04/28
    公開日: 2021/05/19
    ジャーナル フリー

    要旨: 内耳障害は, 耳毒性薬剤や音響外傷等によって直接引き起こされる一次性内耳障害と, 遅発性の二次性内耳障害に区別される。二次性内耳障害の詳細な機序は未だ明らかではないが, 蝸牛神経への電気刺激の減少が一因と報告されている。今回我々は, 伝音難聴による中耳から内耳への音響刺激の減少が蝸牛神経に及ぼす影響と神経可塑性について検討した。マウスの両耳に耳栓を充填し伝音難聴モデルを作成した。耳栓により有意な聴力閾値の上昇を認めたが, 耳栓解除後には聴力閾値は完全に回復した。組織学的には, 有毛細胞や蝸牛神経の消失は認めなかったが, 内有毛細胞と蝸牛神経の接合部シナプス数, 蝸牛神経軸索径および髄鞘化が有意に低値となった。これらの組織学的変化は伝音難聴の解消により回復を示した。以上のことから, 聴覚刺激に依存して蝸牛神経は可塑性を有すると考えられ, 伝音難聴においても蝸牛神経への電気刺激を維持することが重要と考える。

  • 李 信英, 小池 卓二
    2021 年 64 巻 2 号 p. 170-177
    発行日: 2021/04/28
    公開日: 2021/05/19
    ジャーナル フリー

    要旨: 外有毛細胞 (OHC) の機能障害は聴力低下に繋がると考えられている。OHC の機能障害を直接的に診断するすべはなく, OHC の機能は歪成分耳音響放射 (DPOAE) の計測により他覚的に推定しているが, その評価の対象となっている OHC の領域は不明確である。本研究では, 基底板表面に OHC の働きを加振力として加えた正常蝸牛モデルと, 部分的に OHC の働きを欠如させた障害型モデルを用いて, OHC の部分的機能低下と聴力の関係について検討を行った。OHC の働きは, モルモットの単離 OHC の報告や DPOAE の計測結果を基に定式化した。加振力欠如部を変化させながら, 純音を入力した際の正常蝸牛モデルに対する基底板振動の振幅変化量を聴力レベル変化とし, 複合音を入力した際のアブミ骨における歪成分レベルの変化量と比較した。その結果から, 入力周波数fの特徴周波数位置よりも基部側の高周波数域側の OHC の機能低下が, DPOAE レベルおよびの純音 f の聴力レベル低下に影響を与えるものと推測された。

原著
  • 外耳道レシーバ留置式耳かけ型 (RIC) 補聴器を用いた [EHIME] を利用して
    立入 哉, 今井 香奈
    2021 年 64 巻 2 号 p. 178-185
    発行日: 2021/04/28
    公開日: 2021/05/19
    ジャーナル フリー

    要旨: 一側性難聴者用に有線式 CROS 補聴器 (EHIME) を開発し, 実耳測定, 音場での語音明瞭度検査, 質問紙調査を行い, EHIME の有用性を検討した。この結果, 実耳測定では頭部陰影効果を補償するゲインを与える周波数特性決定法が好まれる傾向が見られた。語音明瞭度検査では, EHIME の装用による逆効果より効果が高くなることを観察できた。クロス補聴器のゲインと語音明瞭度に対する効果と逆効果には関連があることが予想され, ゲインの設定には実耳での評価と語音明瞭度の測定が有用と思われた。質問紙調査では, 雑音下聴取と明瞭度では向上が見られたものの方向感・遠近感は逆に低下した。しかし, 中には音の違いを元に方向感をつかめた者もおり, 追加の検討が望まれた。最終的に, わずらわしさより, 快適さ・生活の質の向上について向上したとの回答が得られた。

  • 増田 正次, 守田 雅弘, 松田 雄大, 尾川 昌孝, 中村 健大, 濵之上 泰裕, 小野 修平, 茂木 翼, 坂本 龍太郎, 深山 善子, ...
    2021 年 64 巻 2 号 p. 186-194
    発行日: 2021/04/28
    公開日: 2021/05/19
    ジャーナル フリー

    要旨: 突発性難聴に対する鼓室内ステロイド投与後の鼓膜穿孔残存率と耳管機能検査結果に関連があるか検討した。対象は鼓室内ステロイド投与前に耳管機能検査を行った突発性難聴の罹患耳75耳である。耳管機能検査として①音響耳管法, ②トインビー法, ③バルサルバ法, ④鼻深呼吸法, ⑤鼻すすり法を行った。検査ごとに耳管機能を正常型, 狭窄型, 開放型, 判定困難に分類した。複数の検査で狭窄型を呈した19耳のうち3耳 (15.8%) で鼓膜穿孔が残存し, その他の56耳では1耳 (1.8%) のみに鼓膜穿孔が残存した。この両群の鼓膜穿孔残存率には有意差があった (p=0.0478)。音響耳管法の音源提示音圧が検査装置の上限である 123dB を示した耳が2耳あり, 2耳とも鼓膜穿孔が残存した。耳管機能検査の結果が, 鼓室内ステロイド投与を積極的に行うか否か, 医師, 患者が方針を決める際の有益な情報となる可能性が示唆された。

  • 小池 毬子, 樫尾 明憲, 尾形 エリカ, 赤松 裕介, 小山 一, 浦中 司, 星 雄二郎, 岩﨑 真一, 山岨 達也
    2021 年 64 巻 2 号 p. 195-203
    発行日: 2021/04/28
    公開日: 2021/05/19
    ジャーナル フリー

    要旨: 当科で経験した人工内耳埋込術を行った蝸牛神経低形成または欠損を認めない小児内耳奇形例23例を Sennaroglu 分類による内耳奇形に分類し, 就学期の聴取能や語彙理解能力及び就学状況について報告した。内耳奇形の内訳は, incomplete partition type I (IP-I) が7例, IP-II が7例, IP-III が1例, cochlear hypoplasia III (CH-III) が1例, cochlear hypoplasia IV (CH-IV) が4例, common cavity (CC) が3例であった。IP-II 症例では聴取能, 語彙理解能力ともに良好な症例を多く認めた。IP-I, CC 症例では症例間での差はあるものの, 聴取能, 語彙理解能力ともに良好という症例も存在した。一方, CH-IV 症例では聴取能が良好であっても, 語彙理解能力はいずれも不良であった。就学時普通学級選択状況については他の内耳奇形を伴わない症例の報告と大きな違いはなかった。予後の不確実性はあるが, 内耳奇形の種類に関わらず良好な成績をおさめる症例は存在し, 人工内耳手術は選択肢の一つとして考慮されるべきと思われた。

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