AUDIOLOGY JAPAN
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66 巻, 6 号
December
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
総説
  • 阪本 浩一
    原稿種別: 総説
    2023 年 66 巻 6 号 p. 511-522
    発行日: 2023/12/28
    公開日: 2024/01/17
    ジャーナル フリー

    要旨 : 純音聴力検査では異常を認めないにも関わらず, 騒音下や複数音声下の聞き取り困難を訴える当事者が増加している。このような状態は, 聴覚情報処理障害 (APD) と呼ばれる。聴覚閾値は正常であるが中枢性聴覚情報処理が困難である状態とされてきた。本邦では, APD の診断基準は無く, 医師にも当事者にも問題となっていた。われわれは, 2021年度 AMED 研究「当事者ニーズに基づいた聴覚情報処理障害診断と支援の手引きの開発」を受託し研究を行っている。その過程で, APD 当事者の多くが, 聴覚情報処理以外の注意, 認知の問題, 言語の問題など関連する症状を持っている可能性が明らかになり, APD をより広く捉えて, 聞き取り困難症 (Listening difficulties: LiD) と称する方が望ましいと考えた。また診断の目安として, 聞き取り困難の自覚症状, 純音聴力検査正常, 語音明瞭度正常, 聴覚情報処理検査1項目以上, 平均値-2SD 以下を提唱した。AMED 研究の中間報告と当院の成績からわれわれの考え方, 診断に至る過程を解説した。

  • 三瀬 和代, 白馬 伸洋
    原稿種別: 総説
    2023 年 66 巻 6 号 p. 523-529
    発行日: 2023/12/28
    公開日: 2024/01/17
    ジャーナル フリー

    要旨: 難聴は社会的孤立, 高齢期うつや活動量の低下, フレイル, 認知症など広範な影響を及ぼす。適切な難聴治療と聴覚リハビリテーションの提供が重要となっている。しかし, 語音明瞭度の低下や背景雑音下における言語聴取障害など, 単に聴力低下のみではない複雑な加齢性難聴の病態は, 高齢難聴者の補聴器活用を困難にすることが多い。補聴器フィッティング・装用指導に加えて文章追唱法による聴覚リハビリテーションを併用することで, 言語聴取能の改善のみならず, 言語聴取・理解や会話で重要となる注意・ワーキングメモリ機能の改善, コミュニケーションスキルの向上, ヘルスリテラシーの向上などへの波及効果も得られた。高齢難聴者に対する補聴器診療では, コミュニケーションを意識した聴覚リハビリテーションが有用であると考えられた。

  • 内田 育恵, 杉浦 彩子, 小川 高生
    原稿種別: 総説
    2023 年 66 巻 6 号 p. 530-535
    発行日: 2023/12/28
    公開日: 2024/01/17
    ジャーナル フリー

    要旨 : 超高齢社会における要介護高齢者の増加は, 医療介護上の重要課題である。要介護の前段階であるフレイル (frailty) への対策が, ますます重要視されている。フレイルは身体的脆弱性のみならず精神心理的および認知的, 社会的脆弱性などの問題を包含する概念で, 多面性や可逆性という特徴をもつ。フレイルの評価のために用いられる基準は複数あり, 国際的には Fried らが提唱した Cardiovascular Health Study (CHS) 基準が汎用されており, わが国では厚生労働省からの基本チェックリスト (Kihon Check List: KCL) が実用化されている。国立長寿医療研究センターで『老化に関する長期縦断疫学研究 (NILS-LSA)』と耳鼻咽喉科補聴器外来受診者を対象とした, 異なる指標によるフレイルの調査結果を報告し, 聴覚ケア担当者として介護予備群の早期発見に寄与できる可能性についても言及した。

原著
  • 須川 愛弓, 鶴岡 弘美, 臼井 智子, 増田 佐和子
    原稿種別: 原著
    2023 年 66 巻 6 号 p. 536-543
    発行日: 2023/12/28
    公開日: 2024/01/17
    ジャーナル フリー

    要旨 : 軟骨伝導補聴器の試聴を行った13例の伝音または混合性難聴児を検討した。両側難聴で骨導補聴器装用中の4例は全例, 気導補聴器装用中の4例は1例が軟骨伝導補聴器を購入した。軟骨伝導補聴器の装用利得は既存の補聴器とほぼ同等で, 購入群と非購入群で有意差を認めなかった。骨導補聴器群の主な購入理由は装用感の良さであった。気導補聴器装群の非購入の理由は使い勝手の煩雑さや価格の高さであった。補聴器装用経験のない一側伝音難聴児5例では2例が購入したが, 非購入の1例は試聴を機に手術治療を希望し1例は後に再試聴して購入した。両側伝音難聴で従来は骨導補聴器しか選択肢のなかった症例では, 積極的に軟骨伝導補聴器の情報提供を行うべきである。補聴器非装用の一側伝音難聴児では試聴によって難聴児自らが両耳聴効果を知ることの意義は大きい。乳幼児期だけでなく, 難聴とそれによる支障を自覚する学童期に再度情報提供することが必要である。

  • 岩城 忍, 柿木 章伸, 藤田 岳, 上原 奈津美, 横井 純, 丹生 健一
    原稿種別: 原著
    2023 年 66 巻 6 号 p. 544-551
    発行日: 2023/12/28
    公開日: 2024/01/17
    ジャーナル フリー

    要旨 : 当院で定めた成人例の両側人工内耳の選択基準の妥当性について後方視的に検討した。対象は当院の選択基準を満たし手術を施行した例のうち, 音入れ後3, 6, 12カ月のいずれか2ヵ所以上で語音聴力検査を施行し, 且つ装用1年以上経過した11例。今回はスピーカー法による文章了解度の改善, 自覚的評価, 社会参加の状況の改善を評価項目とした。その結果, 11例中10例で満足できる結果となり, 当院の選択基準は概ね妥当であると思われた。残りの1例は70歳代で非良聴耳の失聴期間が28年の例であった。70歳代で良好な結果であった例の失聴期間は最長で10年であった。従って, 今後は, 当院の選択基準に新たに付帯事項として「注) 70歳以上かつ失聴期間10年以上は慎重な検討を要す」をくわえてさらに検討を重ねていく。

  • 大黒 里味, 伊藤 萌, 小森 有希子, 岡﨑 鈴代
    原稿種別: 原著
    2023 年 66 巻 6 号 p. 552-558
    発行日: 2023/12/28
    公開日: 2024/01/17
    ジャーナル フリー

    要旨 : 2018年1月から2022年12月までに当科を初診した機能性難聴児241名に対し, 小児機能性難聴の推移, 諸特徴について, 新型コロナウイルス感染症流行前後で比較し, 後方視的に検索, 比較した。また, 環境変化の大きかった流行初期 (2020年) の心理的問題についても検討し, 流行下による影響を調査した。小児機能性難聴の診断件数は, 例年と大きな違いを認めなかったが, 男児の占める割合が高くなっていた。また, 随伴症状を有する例, 難聴の自覚がある例, 本人の訴えによる受診の割合が高くなっていた。心理的問題が疑われた症例のうち, 女児は学校生活に, 男児は家庭生活に起因する例が多くみられ, 流行下に関連する因子も含まれていた。登校や遊びの規制, 自宅滞在時間が増えたことによる家族間のストレスなどについて察することができる結果となった。

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