AUDIOLOGY JAPAN
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最新号
April
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総説
  • ―第69回日本聴覚医学会学術講演会 主題関連教育講演1から―
    伊藤 健
    2025 年 68 巻 2 号 p. 149-169
    発行日: 2025/04/28
    公開日: 2025/05/13
    ジャーナル フリー

    要旨: 研究というと今日ではがむしゃらに実験をしたり, 症例データを集めて論文を書くといったハードワークのイメージがあります。これはいわゆる「成果主義」に基づくもので, 社会全体において一般的となっています。一方で古くは研究と言えば暇な学者が興味本位で楽しみながら急がず行っていたようです。研究 • データ収集を始めた研究者が “自らの手で果実を収穫する” ことを絶対条件とせず, コツコツ続け場合によっては後継者に引き継ぐという考え方の, “気の長い” 研究を行う姿勢も重要と考えます。
     本稿は2024年の第69回学会において,後者の手法について筆者が口演した教育講演「“気長に続ける” 研究の特色と倫理・利益相反等について」の内容を要約したものです。

第69回日本聴覚医学会主題演題特集号
「“気長に続ける” 聴覚研究」
  • 日高 浩史, 伊藤 まり, 神﨑 晶, 高橋 真理子, 仲野 敦子, 原田 竜彦, 廣田 栄子, 松延 毅, 和佐野 浩一郎, 田渕 経司
    2025 年 68 巻 2 号 p. 170-180
    発行日: 2025/04/28
    公開日: 2025/05/13
    ジャーナル フリー

    要旨: 最近16年間の Audiology Japan (以下, 本誌) の総説と主題演題特集号, 原著論文の推移を検討した。4年単位の推移でみると総説は20編前後であり, 臨床と基礎に関して比較的偏りないテーマが選択されていた。また, 認知症との関連や難聴の社会的支援などの複合領域にまたがるテーマも散見された。主題演題特集号は学術講演会で企画されたテーマに基づく。学会での発表演題数に対して論文として掲載される率は2019年度まで23~31%であったが, 2020~23年では8% (6/73) と減少していた。一方, 通常の投稿経路に基づく原著は, 4年単位で80編程度と安定しており, 聴覚障害児療育と聴覚リハビリテーション領域が増加傾向にあった。

原著
  • 鈴木 海斗, 蒲谷 嘉代子, 高橋 真理子, 岩﨑 真一
    原稿種別: 原著
    2025 年 68 巻 2 号 p. 181-188
    発行日: 2025/04/28
    公開日: 2025/05/13
    ジャーナル フリー

    要旨: 耳鳴患者において, 聞こえにくいという訴えは少なくない。今回, 正常聴力の耳鳴患者を対象とし, 聞こえに対するハンディキャップがない症例とハンディキャップがある症例に分類し, 聞こえにくさに影響する因子について検討した。
     正常聴力の耳鳴患者188例のうち, 聞こえにハンディキャップのある症例を46例 (24.5%) 認めた。ハンディキャップがある症例は, ない症例と比較し, 平均聴力の左右差が 5dB 以上ある症例や, 片側耳鳴症例が有意に多く, 患側の 4000Hz の聴力閾値が高く, さらに, 耳鳴の重症度が高く, うつ・不安の傾向や耳鳴に対する否定的な認知の傾向が強かった。
     正常聴力の耳鳴患者における聞こえにくさに影響する因子には, 聴力, 耳鳴の左右非対称性, 患側の高音部閾値の上昇, 耳鳴の重症度およびうつ不安傾向があることが示唆された。

  • 佐藤 綾華, 小渕 千絵, 城間 将江
    2025 年 68 巻 2 号 p. 189-195
    発行日: 2025/04/28
    公開日: 2025/05/13
    ジャーナル フリー

    要旨: Listening Difficulties (LiD) を示す成人例の症状は, 従来の検査法では症状の検出が困難な場合もあり, 新たな評価方法の確立が必要である。本研究では, 非 LiD 例26名と LiD 例8名を対象に音像空間を利用した複数音声下での文聴取検査の有用性と LiD 例への適用について検討した。ヘッドホンを使用した複数音声下文聴取検査において, 音源及び話者手がかりの有無により条件間の結果および4条件下での各群間の聴取能を比較した。その結果, 非 LiD 群の結果では手がかりの有無により条件間の有意差が見られた。非 LiD 群と LiD 群の結果の比較では, 音源と話者手がかりのある条件と音源手がかりのある条件, 手がかりなしの条件で対象群間に有意差がみられ, 本検査により両群の鑑別の可能性が考えられた。聴覚検査の特徴を考慮した課題条件の調整など今後の更なる検討が必要と考えられる。

  • ―ストレス及び個別属性との関連性の検討―
    喜屋武 睦
    原稿種別: 原著
    2025 年 68 巻 2 号 p. 196-204
    発行日: 2025/04/28
    公開日: 2025/05/13
    ジャーナル フリー

    要旨: 本研究では九州・沖縄地方の聴覚特別支援学校幼稚部 (7校) に在籍する聴覚障害幼児の保護者60名に対し, 保護者が抱える育児上のストレス及び求める支援に関する質問紙調査を実施した。保護者のストレスに関して,「社会的孤立」においては子どもの年齢が上がるにつれストレスが軽減される傾向にあり, 聴覚特別支援学校や発達支援センターが提供するサポート機能の役割が大きいことが考えられた。  聴覚障害幼児の保護者が求める支援は多岐に渡るが, 子どもや保護者に関わる条件 (子どもの重複障害の有無などの個別属性) は提供する支援を検討する際の指標となりうる可能性が示された。さらに, 育児上のストレスと求める支援には一定の関連が認められ, 保護者の抱えるストレスを定量化したうえで支援の在り方を検討することは意義があるものと考えられた。

  • ―発話速度を設定した両耳分離聴検査を用いて―
    坂本 圭, 小渕 千絵, 川瀬 哲明, 山本 弥生, 笹目 友香, 高山 渥也, 松田 帆, 池園 哲郎
    原稿種別: 原著
    2025 年 68 巻 2 号 p. 205-210
    発行日: 2025/04/28
    公開日: 2025/05/13
    ジャーナル フリー

    要旨: 本研究では, 成人期以降の LiD 症状を検査結果にて明らかにするため, 従来の検査方法を基に難度を変化させた検査課題を設定し, 新たな評価方法の確立が可能か検討した。対象は, LiD 群, 健聴者群, 各16名である。対象者に対して, 発話速度が通常と早口の2条件からなる両耳分離聴課題を作成し実施した。その結果, 両群共に発話速度が早くなると聴取能は有意に低下した。しかし, 各発話条件における対象群間の結果を比較したところ, LiD 群は健常群に比し, 各条件で正答率は低下するものの, 有意な差は認めなかった。本研究では, 発話速度を早くすることで検査の難易度を上げることはできたが, LiD 群と健聴群において聴取能に差はなく, LiD 群の症状を明らかにする評価方法の確立には至らなかった。今後は, 検査手法の更なる検討や, 質問紙評価や他覚的評価の併用などの工夫を行い, LiDの本質的な生起メカニズムについての更なる検討を行うことが必要と考えられた。

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