要旨: 就学期以降の聴覚障害児支援は, 学習, 心理, 社会参加など多岐にわたる個別ニーズへの対応が求められる。効果的な支援には医療,教育,福祉,労働の各分野による多職種連携が不可欠だが, 現状は各機関の支援計画が独立し, 連携が断絶する「タコツボ化」が課題となっている。
この状況において,各分野を統合するハブ機能を担うのが「相談支援事業所」である。同事業所は「障害児支援利用計画 (PUSCD)」の策定や担当者会議の開催を通じ, 各機関の目標を統一し, 家族に寄り添うインテグレーターの役割を果たす。しかし, 相談支援専門員の難聴に関する専門性不足や, 制度の認知度不足,関係機関の連携に対する制度的担保の欠如といった構造的問題が存在する。
今後, 聴覚障害児の円滑な社会移行を実現するためには, 相談支援専門員の育成や報酬体系の整備, ライフステージの節目における連携の義務化など, 相談支援制度を軸とした実効性のある連携体制の構築が急務である。
要旨: 早期の難聴対策は認知機能の改善や維持につながると期待されるが, 聴覚評価の対象設定に関する報告はほとんどなされていない。我々は, 岩木健康増進プロジェクト健診の参加者を対象として, 従来の7周波数に 3k, 6kHz の2周波数を加えた純音聴力検査を施行し,年代別の難聴者の割合ならびに難聴の自覚のない難聴者の頻度について性別や年齢の観点から検討を行った。
その結果, 3kHz以上の高周波数域において, 男性では50代以上, 女性では60代以上で各年代の聴力レベルの上昇幅が大きくなっていた。また, 難聴の自覚がないと答えた対象者は全体の約80%を占めており, 良聴耳でも18.0%が高音3周波数平均で, 平均25dB以上の閾値上昇を呈し,「自覚のない難聴者」が少なくないことが示唆された。従って, 難聴自覚の有無にかかわらず, 男性では50代から女性では60代から定期的な聴力評価を受けることが重要と考えられた。
要旨: 他覚的聴力検査の一つである聴性定常反応 (Auditory steady-state response: ASSR) は新生児聴覚スクリーニング後の精密聴力検査や機能性難聴の診断などに臨床応用されている。
近年, chirp 音を用いた ASSR (chirp-ASSR) が可能となり, その有用性に関する報告が散見される。今回我々は34例 (聴力正常13例, 難聴21例) を対象に ASSR 測定機器 SENTIERO を用いて聴力評価を行い, ASSR の反応閾値 (ASSR 閾値) と純音聴力検査 (Pure tone audiometry: PTA) の閾値 (PTA閾値) の差 (Difference score: DS) や相関関係, および検査時間について検討した。測定した6周波数すべてにおいて正の相関を認め, DS の平均値は10dB以内であり, 検査時間は平均28分であった。SENTIERO による聴力評価は PTA 閾値をよく反映しており, 検査時間も30分以内であることから臨床上有用であると考えられた。
要旨: 一側性高度・重度難聴に対する人工内耳植え込み術は2017年に臨床研究が開始され, 2021年に当院で実施した先進医療にて, その有効性が認められた。
一側性難聴者の人工内耳の場合,良聴耳での聴取が可能であるため, 両側難聴者とは異なるリハビリテーション方法が必要になるが, 本邦ではまだ確立されていない。そこで今回, 先進医療対象者に人工内耳へのダイレクトインプットによる聴覚リハビリテーションを実施したところ, その有効性が示唆された。
今後は, 装用のモチベーションを維持するための工夫, 個々に合わせたリハビリテーション内容の設定, ダイレクトインプットは機器の接続・操作の煩雑さが生じるため, 家族やキーパーソンも含めた支援が必要になると考えられる。