AUDIOLOGY JAPAN
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August
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総説
  • 中川 尚志
    2026 年69 巻4 号 p. 125-128
    発行日: 2026/08/30
    公開日: 2026/09/05
    ジャーナル フリー

    要旨: 福岡県における小児難聴支援は, 1970年の視聴覚研究所設立を起点に, 医療と療育・教育の多職種連携として発展してきた。人工内耳医療の導入期には, 医療と療育・教育の情報共有や意見交換が進み, 病院と特別支援学校・療育施設が役割分担を確立した。その後, 人工内耳を巡る指導方針の相違から混乱も生じたが,「福岡こどものきこえを支援する会」の設立により, 専門家間の共通理解と地域連携が強化された。成熟期には新生児聴覚検査体制の整備や乳幼児聴覚支援センターの設置により, 公的支援体制が確立し, 多様な難聴児への切れ目ない支援が可能となった。現在は, 発達障害児の増加によるリソース分散, 専門性継承の停滞, 働き方改革による連携機会の減少が課題であり, 時代に応じた新たな協力モデルの構築が求められている。

原著
  • 白鳥 優, 小渕 千絵, 山本 弥生, 門脇 誠一, 岡本 秀彦
    2026 年69 巻4 号 p. 129-135
    発行日: 2026/08/30
    公開日: 2026/09/05
    ジャーナル フリー

    要旨: 本研究は, 健聴高齢者における周波数選択性と聴覚的注意の効果が加齢によりどのような影響を受けるかを, 事象関連電位 (ERP) の N100 成分を用いて検討した。65歳以上の健聴高齢者12名および若年者11名を対象に, 周波数除去幅の違う3種類の Band-Eliminated Noise (BEN) を純音と同時提示し, 注意条件および非注意条件下で N100 反応を測定した。その結果, 注意条件における N100 振幅は, 高齢者と若年者の間で有意差を認めなかった。一方, 非注意条件では, 狭帯域 BEN 条件において, 高齢者で N100 振幅の有意な低下が認められた。この結果は, 健聴高齢者は音刺激に注意を向けることによって若年者と同様に周波数特異性を向上させることができるが, 注意が向かない条件では加齢の影響により周波数特異性が低下し, 複雑な聴取環境での音声情報処理に支障が生じる可能性が示唆された。

  • 中川 辰雄
    2026 年69 巻4 号 p. 136-144
    発行日: 2026/08/30
    公開日: 2026/09/05
    ジャーナル フリー

    要旨:聴力に障害があると静寂時に比較して騒音下の音声知覚が困難になることがある。本研究は音響環境が厳しい通常学級に在籍する聴覚障害児の聞こえの意識を, 聴力正常児との比較から明らかにすることを目的とした。日常生活の聞こえを反映した質問紙を用いて, 聞こえと聴覚的理解それに気持ちの3領域からなる聞こえの意識を評価した。対象は小中学校に在籍する補聴器装用児40名と人工内耳装用児25名, それに小学校4~6年に在籍する聴力正常児254名であった。3領域の平均回答率とパーセンタイルプロフィールを比較すると, 聴覚障害児は聴力正常児に比べて聞こえと聴覚的理解が低下していた。気持ちについては, 人工内耳装用児は聴力正常児に比べて低下していたが, 補聴器装用児と聴力正常児には差が見られなかった。聞こえの意識について媒介分析を行うと, 聴力正常児に見られた聞こえと聴覚的理解が気持ちを媒介する過程が, 補聴器装用児と人工内耳装用児で異なっていた。

  • ―高齢者と若年者の比較および術後経時的変化―
    品川 潤, 吉村 豪兼, 權田 綾子, 工 穣
    2026 年69 巻4 号 p. 145-152
    発行日: 2026/08/30
    公開日: 2026/09/05
    ジャーナル フリー

    要旨:目的: 成人人工内耳装用者における子音聴取の異聴傾向について, 高齢者と若年者の年齢差および術後経時的変化を明らかにすることを目的とした。

    方法: 遅発性発症の高度・重度難聴に対して人工内耳植込み術を施行した19例22耳を対象とし, 高齢者群と若年者群に分けた。術後3カ月時および12カ月時に CI-2004 を用いて単音節語音聴取能を評価し, 子音別正答率および異聴傾向を解析した。

    結果: 術後3カ月時における単音節認識の全体成績には群間差を認めなかったが, 子音別の検討では一部の子音において群間差が認められた。/s/, /j/, /k/ は両群で高率に正答された一方, 有声破裂音である /b/, /g/ は高齢者群で正答率が低かった。若年者群では /b/, /m/ で経時的改善を認めたが, 高齢者群では有意な改善はみられなかった。

    結論: 人工内耳装用者の子音聴取における異聴傾向には年齢による違いがみられ, 若年者では術後の聴覚学習効果が比較的得られやすい可能性が示唆された。

  • 泉 修司, 甲斐 竜太, 八木 千裕, 山岸 達矢, 大島 伸介, 堀井 新
    2026 年69 巻4 号 p. 153-159
    発行日: 2026/08/30
    公開日: 2026/09/05
    ジャーナル フリー

    要旨:新潟県の難聴通級指導教室と難聴特別支援学級における難聴児の支援実態について, アンケート調査を行った。小・中学校の難聴通級指導教室16教室, 難聴特別支援学級11教室, 聴覚特別支援学校2校に回答を依頼し, 2024年度に支援を行った実人数を調査した。難聴通級指導教室で指導した児は157例, 教育相談を受けた児は119例, 難聴特別支援学級に在籍していた児は16例, 教育相談を受けた児は6例, 聴覚特別支援学校に在籍した児は43例であり, 新潟県では難聴通級指導教室で指導を受ける児が多いこと, 多くの児に教育相談を行っていることが示された。補聴器・人工内耳を装用していない児, 片耳難聴児, 機能性難聴や聞き取り困難症/聴覚情報処理障害の児, 就学前・卒業後の児に対する支援も多く, 幅広い対象に教育相談としての支援が求められていると考えられた。本結果を多職種で共有し課題解決への取り組みを行うことが重要である。

  • ―兄弟例および既報例を用いた難聴進行の推定―
    藤田 陸登, 小田 尊志, 石野 岳志, 竹野 幸夫, 西尾 信哉, 宇佐美 真一
    2026 年69 巻4 号 p. 160-167
    発行日: 2026/08/30
    公開日: 2026/09/05
    ジャーナル フリー

    要旨: 常染色体顕性遺伝形式をとる TMC1 遺伝子 p.Asp572Asn バリアントによる進行性難聴の兄弟例を経験した。兄弟はいずれも小児期に難聴を発症し, 10代に顕著な聴力悪化を認め, 高度から重度難聴へと進行した。人工内耳植込術後の語音聴取成績は良好であった。さらに既報文献から同一バリアント症例の聴力図を収集し解析した結果, 本バリアントによる難聴は小児期に発症し, 10代で急速に進行する特徴的な経過を示した。また, 本バリアントは複数の非関連家系から報告されており, ホットスポット変異である可能性が高い。遺伝学的診断に基づく早期からの慎重な経過観察は, 補聴器装用や人工内耳導入時期の検討に有用であると考えられた。

  • 中市 健志, 武田 葵, 横山 栄, 小林 知尋
    2026 年69 巻4 号 p. 168-175
    発行日: 2026/08/30
    公開日: 2026/09/05
    ジャーナル フリー

    要旨: 騒音職場において, 耳栓は一般的な騒音対策であるが, 装着状態により遮音効果は大きく変動するため, 個人ごとの遮音効果を評価する必要がある。本研究では, 労働衛生の現場で使用されるオージオメータを用いた耳栓遮音効果測定法を提案し, その妥当性を JIS T 8161-1 に準拠した測定法 (基準法) との比較により検討した。健聴者16名にフォーム型耳栓および成形型耳栓の2種類をそれぞれ装着させ, 6周波数の遮音値を測定し, 基準法との差分を解析した。等価性検定 (TOST, ±6dB) の結果, 周波数別では 250Hz において等価性は確認されなかったが, 500Hz 以上では等価性が確認された。また, 全周波数における差分の平均については等価性が確認された。以上より, 本提案法は平均的な遮音効果の評価において基準法と同等の結果が得られ, 現場における耳栓の遮音効果を実用的に評価できる可能性が示唆された。

  • 小倉 香山, 八本 咲紀, 山本 弥生, 岡本 秀彦, 小渕 千絵
    2026 年69 巻4 号 p. 176-182
    発行日: 2026/08/30
    公開日: 2026/09/05
    ジャーナル フリー

    要旨:本研究では, 視覚, 聴覚という異なる感覚情報の処理における LiD/APD 例の分配性注意について検討した。対象は日常生活上強い聞き取り困難を訴える例 (LiD/APD群) 11名と, 対照群38名であった。4モーラの有意味語, 無意味語からなる単語リストを作成し, PC 画面上に視覚提示される単語を書写する視覚課題と, スピーカーから聴覚提示される単語の復唱する聴覚課題で構成された視覚聴覚二重課題を実施し, 主観的な質問紙との関係についても検討した。その結果, LiD/APD 群は, 対照群に比して両課題ともに有意に正答率が低下し, 異なる2つの感覚を用いた課題への適切な注意分配が困難であった。また, 有意味語に比して無意味語条件の正答率は有意に低下し, 無意味語の処理には必要な注意資源の量が増大した。二重課題成績と主観的な質問紙とには関連がみられず, 日常生活上の困難度を統制された検査でどのように反映するかは更なる検討が必要と考えた。

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