AYAがんの医療と支援
Online ISSN : 2435-9246
2 巻, 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
原著
  • 畑中 めぐみ, 清水 千佳子, 堀部 敬三
    2022 年 2 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/02/25
    ジャーナル フリー

    【目的】地方自治体(自治体)における、「AYA」の使用度、がんに関する情報提供、および、AYA世代のがん患者が利用可能な費用助成制度の実態を明らかにする。

    【方法】全都道府県及び、全政令指定都市のホームページ(HP)上でキーワード「AYA」の使用の有無、がん患者向けのページの有無、がん患者のためのサポートガイドブックの有無、5つの費用助成制度の実施状況について調査した。費用助成制度については、市区町村のHP、および、必要に応じて電話もしくはメールにて担当部署に確認を行った。

    【結果】HPでキーワード「AYA」の使用が確認できた自治体は、都道府県では25(53.2%)、政令指定都市では6(30.0%)であった。費用助成制度のある市区町村数は、医療用補正具購入に係る費用助成:ウィッグ購入費用406(23.3%)、乳房補正具購入費用:361(20.7%)、在宅療養支援費用助成:福祉用具レンタル・購入費用221(12.7%)、訪問介護費用176(10.1%)、予防接種再接種に係る費用助成414(23.8%)であった。

    【結論】自治体のHPにおける「AYA」の使用は少なく、がん患者への費用助成制度は不十分であり、制度があってもHP上に記載がない自治体がある。それゆえに、AYA世代がんに対する認識の向上と当事者目線での情報アクセスの改善、さらに、全国すべての自治体での各種費用助成制度の整備が望まれる。

  • 永井 史織, 富岡 晶子
    2022 年 2 巻 1 号 p. 8-15
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/02/25
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、思春期発症がん患者の入院治療終了後の社会生活復帰における情報ニーズと情報ニーズ充足行動を明らかにすることである。15歳から17歳でがんの診断、入院治療を受けた成人4名を対象に半構造化面接を行い、質的帰納的に分析した。

     その結果、情報ニーズとして、【病気になる前の社会に戻り生きていくための情報】【今後の病状の見通しに関する情報】【前向きな目標をもって未来を生き抜くための情報】の3カテゴリ―が抽出された。情報ニーズ充足行動として、【得ようとする情報に合う手段を選び自ら行動して知りたい情報を獲得する】【周囲との繋がりを維持し情報提供が途絶えないようにする】【今の自分の気持ちを優先し必要な時が来るまで知ることを先延ばしにする】【今ある情報の範囲で自分なりに解釈する】【情報がないままやり過ごす】の5カテゴリ―が抽出された。患者自身が情報ニーズ充足行動を発揮できるよう、病気になる前の生活との繋がりを保つための支援や情報獲得の手がかりを提供する必要性が示唆された。また、患者に脅威を与える情報に対し、対処するための情報と将来への希望を失わないための情報を共有し、将来の見通しを共にイメージする支援の必要性が示唆された。

総説
  • 向井 幹夫
    2022 年 2 巻 1 号 p. 16-21
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/02/25
    ジャーナル フリー

     がん治療の進歩によりがん症例の予後が改善する一方で、がんサバイバーが急増している。しかしながら、がんサバイバーに対してがん治療終了後のケアは決して十分とは言えず、数年から10年以上経過して出現する晩期合併症に対するケアには多くの課題を有している。なかでも晩期心毒性は発症すると重篤な臨床経過をたどる事が多くがんサバイバーの予後に大きく影響すると考えられているが、晩期心毒性に対する長期間のモニタリングなど対応が困難な点が少なくない。近年、米国において晩期心毒性に対する診療ガイドラインがエビデンスに基づき作成された。そこでは、がん治療開始前より晩期合併症の発症予防に関する積極的な対応が開始された。そして、本邦では小児・AYA世代がんサバイバーを中心とした長期フォローアップ体制の確立、晩期心毒性の病態解明、そしてフォローアップに必要ながんサバイバードックの構築などの新しいリソースも含めた検討が始まっている。

  • 西 明博, 菅家 智史
    2022 年 2 巻 1 号 p. 22-26
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/02/25
    ジャーナル フリー

     プライマリ・ケアとは、患者の近くにあって年齢や疾患に関わらずありとあらゆる健康問題に対処する医療である。がんの罹患数の増加や生存率の向上に伴い、プライマリ・ケアにおいてもがんとの関わりは当たり前のことになりつつある。初期治療を終えたがんサバイバーは、治療の合併症による身体的・精神的影響に加え、就労・金銭・家族関係の問題といった社会的影響に直面するため、プライマリ・ケア医も含めた多職種による包括的な関わりが理想とされる。AYAがん患者に対しても、プライマリ・ケアは、ライフステージ毎に生じる様々な課題に対して、気軽に相談できる窓口として、生涯にわたってケアを提供できる可能性がある。しかし、プライマリ・ケア側の受け入れ体制が整っていないことや、AYAがん患者はかかりつけ医を持たない傾向があるといった課題があり、AYAがん診療に十分に関われていないのが現状である。解決するためには、プライマリ・ケア向けの診療ガイドラインや学習コンテンツの作成、がん専門医・専門病院との連携体制の構築、プライマリ・ケアの役割や有用性に関する啓発が必要である。プライマリ・ケアもAYAサポートチームの一員として、AYAがん患者を地域で支える社会の実現に向けて一緒に取り組んでいきたい。

  • 多田羅 竜平
    2022 年 2 巻 1 号 p. 27-33
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/02/25
    ジャーナル フリー

     国際的にアドバンス・ケア・プランニング (ACP) が普及する中、わが国のがん医療の現場においてもACPの導入が進められており、AYA世代がん患者のACPにも関心が高まり始めている。

     AYA世代がん患者において患者中心の医療を実現するためにインフォームド・コンセントやアドバンス・ケア・プランニングが取り組まれているが、両者の法的位置づけ、患者・医療者・家族の立場、配慮すべきことなどは異なることに注意が必要である。

     アドバンス・ケア・プランニングの実践において、将来を正確に予測すること、自分の死について考えること、もしもの時に行ってほしい (ほしくない) 医療を自己決定することは必ずしも容易ではない。

     そのため、意思決定能力を失った後の医療については事前の意思表示のみにとらわれるのではなく、医療者や家族が「この患者であればこの選択肢を選ぶだろう」と自信をもって患者の意思を推定することができ、そして患者が自分のことをよく分かってくれている人たちに安心して医療・ケアをゆだねられるように、以心伝心の精度を高めるプロセスが大切である。

     以心伝心の精度を高めるための当院の取り組みとしては、電子カルテ上の「アドバンス・ケア・プランニング・シート」の医療者間での共有、ACPを意識したカンファレンスの開催、ACPファシリテーターの配置、患者本人が記入できる「私の治療日誌」、医療専用SNSの活用などがある。

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